「晦日蕎麦(みそかそば)」の風習
2020年12月第5週の食とココロの処方箋。
2020年もあとわずかとなりました。
寒波の予報が出ていますね。
暖かくしてお過ごしください。
《コーナー①》
最初のコーナーは、今週の暦です。
一年を24に分けた二十四節気と、さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。
冬至(とうじ)
二十四節気は、12月21日から、「冬至(とうじ)」。
昼の時間が一番短くなるこの日を境に、また少しずつ日が長くなってきています。
「冬至冬中冬始め(とうじ ふゆなか ふゆはじめ)」とも言うように、暦の上では冬の真ん中ですが、寒さということで言えば、まだまだ冬が始まったばかりのように感じますね。
鹿角解(さわしかのつの おつる)
七十二候は、12月26日から30日まで「鹿角解(さわしかのつの おつる)」、鹿の角が抜け落ちて、新しく生え変わる時期。
この鹿は、「鹿」の下に「米」と書いて「さわしか」と読みます。
大鹿やヘラジカと呼ばれる大型の鹿のこととされていて、日本には生息していない種類です。
もともと七十二候が作られた中国にもいないそうなので、なぜ七十二候に登場するのか不思議ですよね。
「四不像(しふぞう)」
昔中国にたくさんいたという「四不像(しふぞう)」という動物が、この「さわしか」ではないかと言われています。
シフゾウは、ひづめはウシ、頭はウマ、角はシカ、尻尾はロバに似ていて、4つの動物の特徴があるのに、どの動物でもないということから名づけられました。
中国での呼び方は「ミールー」といって、漢字では「さわしか」に「鹿」と書くのと、角が落ちる時期も重なるということで、どうやらこの動物が七十二候に出てくる鹿のようです。
日本で鹿といえば、奈良公園のニホンジカや、北海道のエゾシカが知られていますが、このシフゾウは、東京の多摩動物公園など、日本では4つの動物園で飼育されています。
動物園のホームページやツイッターなどで写真が公開されていますので、覗いてみてくださいね。
《コーナー②》
次のコーナーは、「四季折々の食事と健康」。
この番組では、「医食同源」をテーマに、日本の四季と旬の食べ物・その季節にお勧めの食べ物を紹介していきます。
いよいよ年の瀬も押し迫ってきて、年越し・お正月の準備に忙しくなる頃ですね。
年越しは、日本大歳時記に「年を越して新年に移るの意味で、大晦日から元旦までの時間と、その間に行われる風習を指す」とありました。
年越蕎麦
年越蕎麦はその一つ、もともとは年末に限らず、毎月の月末に蕎麦を食べる「晦日蕎麦(みそかそば)」の風習が、大晦日だけ残ったものだとか。
食べると運が良くなるという意味で、「運気蕎麦」とも呼ばれています。
年越蕎麦の風習は、江戸時代中期頃には庶民の間で定着していたといわれます。
蕎麦のように「細く長く」という、長寿を願う意味はよく知られていますね。
他にも、蕎麦は他の麺類より切れやすいことから、「今年の苦労や悪縁を切る」という意味や、金細工の職人が飛び散った金粉を集めるときに蕎麦粉で作った団子を使ったことから、「金を集める」縁起物という意味もあるのだとか。
「蕎麦を食べている人は脚気にならない」
蕎麦が健康に良いというのは、成分分析からもわかってきていますが、江戸時代には「蕎麦を食べている人は脚気にならない」という説が巷で広がり、蕎麦の人気を後押ししたそうです。
「脚気(かっけ)」は、ビタミンB1が不足することによって、神経障害や心臓の障害を起こす病気です。
神経の検査の1つ、膝の下をたたく検査はご存じの方も多いのではないでしょうか。
十分な栄養が摂れなかった頃の「昔の病気」というイメージがあるかもしれませんが、現代にも存在しているのです。
江戸時代に脚気が流行したのは、それまで玄米を食べていた当時の人々が白米を食べるようになり、自然に摂取できていたビタミンB1が不足してしまったことが原因とされます。
白米では取り除かれる糠や胚芽の部分にビタミンやミネラルが多く含まれているのです。
蕎麦にもビタミンB1が豊富に含まれていますので、脚気の予防になったのでしょう。
江戸時代、「蕎麦を食べている人は脚気にならない」と気がついた人はすごいですね。
白米が主食でも、現代はその他の食品からビタミンを摂取できますので、現代では脚気になることは少なくなりました。
それでも、食生活によってはかかるリスクはあり、糖質やアルコールの過剰摂取、インスタント食品に偏った食事は発症する原因となりますのでお気をつけください。
「韃靼蕎麦(だったんそば)」
蕎麦には、ポリフェノールの一種である「ルチン」が豊富に含まれています。
「ルチン」は、毛細血管に弾力を与えて丈夫にし、血液の流れをスムーズにする働きがあります。
寒い環境で育った蕎麦ほどルチンを多く含むそうで、標高の高いところで栽培される「韃靼蕎麦(だったんそば)」のルチン含有量は、他の種類のなんと100倍以上。
健康食として注目され、北海道や長野など、日本でも栽培が増えているそうです。
タンパク質、食物繊維が多いのも特徴です。
食物繊維は、糖分の吸収を緩やかにして血糖が急に上がるのを抑えてくれます。
腸内環境を整えて便通を良くしたり、過剰なコレステロールを排出したりする働きもありますので、年越しだけでなく普段の食事にも取り入れるとよさそうですね。
蕎麦を打つ時には、「つなぎ」として粘りを出す「グルテン」が含まれる小麦粉を入れることがあります。
蕎麦粉
近年健康を意識する人の間でグルテンフリーの食品が広がってきて、蕎麦粉も注目を集めていますね。
蕎麦粉自体はグルテンフリーですが、打つ段階で小麦粉が入ればもちろんグルテンが含まれることになります。
蕎麦粉100%であれば「十割蕎麦」や「生粉打ち(きこうち)」、「生蕎麦(きそば)」などと呼ばれます。
小麦粉と蕎麦粉の割合が2:8の「二八蕎麦」の方が喉越しが良いということで、生粉打ちよりも二八を選ぶ人もいますし、好みが分かれるところかもしれませんね。
蕎麦粉が3割以上入っていれば蕎麦と表示していいそうなので、健康を目的に食べるのであれば、蕎麦粉の割合に注目して選ぶのがお勧めです。
年越蕎麦にあれこれ言うと風情がなくなってしまいますので、種類や成分はちょっと横に置いて、行く年に思いを巡らせながらゆっくり食べるのがいいのではないでしょうか。
2020年1月に始まった「食とココロの処方箋」も、おかげ様でもうすぐ1年を迎えます。
1年間ありがとうございました。
2021年は暦も2周目に入りますので、お伝えしきれなかったこと、新しい発見など織り交ぜながらお届けしたいと思っています。
来年もぜひ聞いてくださいね。
皆さまどうぞよいお年をお迎えください。
産業医のさくらばちほがお届けする「食とココロの処方箋」は東京23区を中心としたレインボータウンFMで毎週火曜18:50-19:00オンエア中です。
産業医 櫻庭千穂
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