夕刻、雨宿り。【読み切りSS】
ㅤ今日何度目か分からないため息をついて、髪の毛の束をかじかむ指先で掬う。ぎゅっとそれを絞れば、ぽたぽたと毛先から水滴がこぼれ落ちる。
ㅤ睨みつけるように、バス停の屋根から除く空を見上げる。相変わらずの、まさにバケツをひっくり返したような雨。またしても私は見せつけるようにため息を零すが、それは誰にも拾われずにザーザーと五月蝿い泣き声に呑み込まれる。
「すごい雨ですね、今日は」
「そうですね。……え?」
ㅤふと誰かに話しかけられた気がして、左隣を見る。それは聞き間違いでは無か