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私は憎まない

映画『私は憎まない』を今日観てきました。
東京ではなぜかアップリンク吉祥寺という映画館でしか上映していません。

想像以上に生々しく
重々しく、観ていて苦しくなりました。
小さいシアターということもありますが会場は満席で、あまりに重い内容でもあり途中から周りの人達も泣いている人が結構いたように思います。

ガザ紛争についてのドキュメンタリー映画なのですが、正直かなり打ちのめされました。

イゼルディン・アブラエーシュさんは、ガザの難民キャンプ出身で、パレスチナ人医師として初めてイスラエルの病院で産婦人科医として働いていたそうです。

しかしながら、特に理由もなく突然2009年にガザの自宅がイスラエル軍に砲撃され、娘3人や親戚を殺害されました。

ある日自宅の目の前に突如イスラエルの戦車が現れた時の緊迫した様子が映画の中で生々しく描かれています。

そして女の子達が部屋で集まっている時
イスラエルの戦車から砲撃を受けます。

ちょうどその時イスラエルのテレビに出演していた友人に、イゼルディン・アブラエーシュさんから電話がかかってきます。
殺害直後の生々しく悲痛な叫び声が生放送中のスタジオで流れている様子が、映画の中で描かれています。実際の映像なので娘を殺害された直後の父親の声のあまりの辛さにこちらも耳を覆いたくなるほどでした。イスラエルの一般人が生放送中のその様子を聞いたことで心を動かされたとも言われています。実際、そのことが契機ともなり2009年は一旦停戦となりました。

『私はイスラエル人患者を診ている。なのにこんな仕打ちを?これが和平か?』という言葉には心が揺さぶられました。
本当に、これ以上理不尽なことがあるでしょうか。イスラエル人の命を救う仕事をしているのに
そのイスラエル人に自分の娘を殺害されるなんて…

本当に理不尽極まりないです

それでもイゼルディン・アブラエーシュさんはイスラエルへの憎しみではなく、共存を訴えます。その決して復讐心や憎しみを持たない彼の赦しと和解の精神が世界中の人々に感動を与え、“中東のガンジーやマンデラ”とも呼ばれる存在となりノーベル平和賞にもノミネートされたとのことです。

ちょうど今日まで来日され、講演会を開いていましたが残念ながらすべて満席で行けませんでした。

何の罪もない愛娘を3人も殺害されたことに対して、アブラエーシュさんはイスラエルに謝罪を求めた裁判をその後数回起こしますが、イスラエルはいまだに一度たりともその時の過ちを認めることも謝罪することもありませんでした。

記者会見中に、生き残った娘の方が
『怒ってますか?』と聞かれ
(そんなこと聞くのはどうかしてると思いますが)
『被害者側が正義を求めて闘わなければならない事実に怒っています』
と応えており、その受け答えの賢さにも感銘を受けましたし、その通りだと思います。

私は常々思いますが
こうした世界の紛争問題から犯罪から
身近なことに至るまで
なんで多くの場合、被害者側ばかりが
傷を負い陰で泣いていたり人生を狂わされたり
闘わなければならないのだろう、と思います。

そうした理不尽、不条理を一言で表した言葉だと思います。


アブラエーシュさんはそれでも
イスラエルに対して憎しみを持つことなく
娘たちが殺された時、もし最後の犠牲者であるなら平和のために受け入れようとした、と
闘い続けてこられました。

しかし…

2023年10月7日からのガザ紛争での1年間の
被害者は41,909人といわれています。
そしてその内子どもの犠牲者数は13800人を超えている(4月時点)と言われています。
それもあくまで確認出来ている数なので
実際はもっと多いといわれています。

そして、アブラエーシュさん自身
妹さんを含む親族40人を亡くされたとのことです

私にはその苦しさは想像を絶しています
私だったら、発狂してしまうと思います
許すなんて考えられません…

それでもなお、憎しみに溺れることもなく
闘い続けているアブラエーシュさんは本当に
凄いという言葉では到底表せません。

それにしても、これ程の内容である映画を
東京でも1件のミニシアターでしか上映しないということが本当にもったいないと私は思います。
アブラエーシュさんは今回の来日時に報道ステーションにも出演されていますし、講演会もすべて満席になっているので日本でも関心がある方は多いと思います。
映画の集客という面も問題ないはずですから、もっと多くの場所で上映してほしいです。

ぜひ多くの方に観ていただきたい映画です🎬






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