石井光太が語る「路地裏に立つ女性たち」1
歌舞伎町の変遷-“浄化後”に集まった女性たち
山浦:路地裏の女性の中には、風俗店では働かせてもらえないという人もいました。
石井:そこらへんの事情は今も昔も同じでしょう。風俗店は借金返済のために短期間だけ働くというような人もいる一方で、“最後のセーフティーネット”とも言われていて、障害のある女性、精神疾患に悩む女性、あるいはグレーゾーンの女性たちが少なからず働いています。
景気がそれなりに安定している時は、どちらの女性も風俗店で働くことができますが、コロナ禍のようなことが起これば、後者の弱い立場の人から先に切り捨てられていきます。具体的に言えば、リストカットで体が傷だらけだったり、精神疾患で出勤日の無断欠勤をくり返したり、情緒不安で同僚や客とトラブルを起こしたりする女性たちです。彼女たちはそもそも働き場所がないから風俗店にいたわけで、そこを解雇されれば路地裏に流れるしかなくなる。今、路地裏に立つ女性が急増している背景には、そうした事情もあります。
【石井光太】
作家。1977年生まれ。国内外の貧困、災害、事件の現場を取材。著書に『こどもホスピスの奇跡』『格差と分断の社会地図』など多数。
【聞き手/山浦彬仁】
NHK制作局ディレクター。1986年生まれ。クロ現+「外国人労働者の子どもたち」「虐待後を生きる」「コロナ禍の高校生」「ルポ少年院」「さらば!高校ドロップアウト」など制作。