【ネタバレあり】映画ゴールデンカムイロケ地巡りと雪まつり
カント オㇿワ ヤク サㇰ ノ アランケㇷ゚ シネㇷ゚ カ イサㇺ
【天から役目なしに降ろされたものはひとつもない】
映画の冒頭でも登場するこの言葉は、アイヌ民族出身で初めて国会議員を務めた萱野茂さんが愛用していた言葉なのだそうだ。ゴールデンカムイの作中でも、登場人物たちが自身の役目について言及するシーンが多くある。アイヌの世界観、ひいてはゴールデンカムイの世界観をもよく表した言葉だと思う。
クトゥラ シサㇺ オハウ オㇿ シ オマレ ワ エ
ちなみにこっちは「一緒にいた男は汁物にウンコを入れて食べる」の意だ。
映画ゴールデンカムイは、公開初日の1月19日に観た。仕事を定時ピタピタに切り上げ、映画館へと急いだ。職場の飲み会は断ってやった。結論から言うと、めちゃくちゃ実写版ゴールデンカムイだった。
杉元はちゃんと杉元していたし、シライシもちゃんとシライシしていた。アシㇼパちゃんなんてもうめちゃくちゃにアシㇼパちゃんしていた。登場人物みんなが、原作から抜け出してきたかのようなリアリティがあった。
わたしはこれまで遠路はるばる聖地まで赴き明治に生きた人々の姿を幻影に視るタイプのオタクだったので、わたしが視ていた幻影たちが実際に生きて動いて存在していてみんなにも同じものが見えているんだということに感動を覚えた。(ここまで息継ぎなし)
今回はそんな映画ゴールデンカムイの残り香を求めて、冬の北海道へロケ地を巡る旅。人生初のさっぽろ雪まつりの様子も併せてお届けします♪
【さっぽろ雪まつり】
まずはさっぽろ雪まつりにやってきました。こちらはウポポイとテレビアニメゴールデンカムイがコラボした大雪像です。制作にあたったのは、陸上自衛隊第11旅団 第11特科隊、第11高射特科隊、第11偵察隊の皆さん。圧倒的なスケール感と、それでいて細部に宿る表現力と、たったの8日間で取り壊されてしまう儚さに命の煌めきを感じました。
▼これはシライシみのある隊員さん
【小道具展示色々】
映画の公開を記念して、全国各地の映画館などで実際に映画の撮影で使用した小道具が展示されていました。道内でもパネル展や小道具展示がされていたので、滞在中に見に行ける限りの展示物たちを見てきました。
-ウポポイ
ゴトリのお衣装が見られると聞いて、映画ゴールデンカムイ展inウポポイを見にやってきました。
お分かりいただけただろうか…?
本当は園内でも小道具の展示があったようなのですが、聞いてなかったので見てきてません。何ならエントランス棟が入場ゲートの手前にあることも知らず、入場して3秒で再入場券をもらいました。どうも、情弱の権化です。でも大丈夫!映画ゴールデンカムイ展もきっといつか、全国巡回するはずだから。(希望的観測)そのときを楽しみに待っていようと思います♪
代わりと言ってはなんですが、舐めるように見てきたクチャでもご覧ください。
-札幌駅
札幌駅まで帰ってきました。供給があまりにも多すぎるため、四の五の言わずに撮ってきた写真たちを紹介していこうかと思います。
-SAPPORO STREAM HOTEL
こちらはすすきのにあるSAPPORO STREAM HOTELさん。2024年1月16日にオープンしたばかりのホテルです。わたしは展示会場へ行くのにロビーを通っただけなのですが、めちゃくちゃよさそうなホテルでした。おしゃれな館内においしそうな朝食、巻いてない尻尾、狭い胸幅に大浴場…!今度札幌に来たときは朝食付きのプレミアムプランでぜひともこのホテルに泊まりたいなと思いました。
映画の小道具ではなく、工芸家の方たちに本物の民具を作っていただいたと野田先生もインタビューで述べあそばれておられました。そんな貴重な工芸品の数々を間近に見る機会を作っていただき、誠にありがとうございます。関係者の皆様方には、この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。おまけに映画ゴールデンカムイ展の全国巡回だなんて…!(希望的観測)来たるべき日を楽しみに待っていようと思います。(2回目)
【映画ロケ地巡り】
-北海道開拓の村
映画ゴールデンカムイもここ、北海道開拓の村で撮影が行われていました。原作でも村内の多くの建物が登場する、ゴールデンカムイの聖地オブ聖地です。
6:旧松橋家住宅
ちなみにこのシーンで食べていたおだんごは、原作では小樽新倉屋さんの花園だんごでしたが、映画ではぽたぽたいちごさんの串だんごなのだそうです。小樽やすすきのでお店を見かけましたが、インスタ映えしそうなおしゃれな商品がたくさんありました。
19:旧三〼河本そば屋
映画では限りなくこの本物の建物に近付けて制作されたセットで撮影が行われたそうです。
20:旧武井商店酒造部
撮影場所リストに載っていた「21:旧近藤医院」と「29:旧札幌拓殖倉庫」はどこのシーンかわかりませんでした。一刻も早い特定班の報告が待たれる。
39:旧田村家北誠館蚕種製造所
41:旧納内屯田兵屋
市街地群メインストリート
やはりせっかくロケ地巡りをするなら、映画と同じ雪の積もる季節に来たいと思うのがファン心理かと思います。寒さの厳しいこの時期に北海道開拓の村へ訪れる際の注意点としては、建物内の底冷えの凄まじさです。靴を脱いであがる建物がたくさんあるので、お母さんがまさしの参観日のときなどに持参する持ち歩き用のスリッパなんかがあるといいかもしれません。
▼これは最後に駆け足で見てきた勇作だけが俺を愛してくれたから winter ver.
-小樽
こちらは爆破された銀行のモデルとなった建物。映画では蕎麦屋同様に本物そっくりに作られたセットが登場しています。
せっかく小樽までやってきたので、物語序盤に度々描かれていたちょっと高いところからの小樽の景色を探しに水天宮へ行ってみることにしました。
▼Googleマップによると、この階段を登った先にあるようです。
小樽の街並みや建物だけではなく、二〇三高地やアシㇼパのコタンなども美術部の手により制作されているのだそうです。ロケ地に関しても北海道に生息しない木々が1本でも生えていようものなら、即撮影NGにしたのだとか。ちょっと何を言っているのかわからねえと思うが俺もわからねえ。詳しくはパンフレットや映画ゴールデンカムイ特集の雑誌などに書いてあるので、全人類読んでください。
映画ゴールデンカムイのロケ地を巡る旅はこれにていったんおしまいです。小道具に衣装、セットやロケ地にいたるまで、微に入り細を穿つ制作陣の皆様方の原作への惜しみない愛とリスペクトを感じる旅となりました。
物語の序盤は自然の中でのシーンも多く、軽率に巡礼できるロケ地はあまりありませんでした。これから物語が進むにつれて聖地も増え、新たな巡礼の旅に出られる日が来るのを楽しみにしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼これも念願だったパープルダリアさんの夜パフェ
▼札幌1泊目のホテル
▼札幌2-3泊目のホテル
札幌2日目の朝は、結構雪が降っていた。この日は午前中にウポポイへ行く予定で、札幌8:43発特急北斗の指定席券をえきねっとで購入済みだった。ホテルをチェックアウトし、次に泊まるホテルへ荷物を預けてから札幌駅へ向かうつもりだったのだが、外へ出てみると雪はまだ降り続いているし、結構積もってもいた。Googleマップによると徒歩7分ほどでたどり着く距離なのだが、5歩ぐらい歩いてこれは無理だと察して引き返してきた。仕方がないのでタクシーを呼ぼうとアプリを立ち上げるも、一向に空き車両が見つからない。
ホテルへ寄る時間もなさそうだから、タクシーが捕まったら直接札幌駅へ向かうべきだろうか。もしくはもうタクシーは諦めて、自力で札幌駅へ向かうべきだろうか。荷物は駅のロッカーに預けるほかないだろう。電車の時間があるのでいつまでも待ってはいられないし、決断の時が迫っていた。
すると1階のロビーフロアで朝ごはんを食べていたのであろう家族が外へ出てきた。吹雪にも近い降雪に興奮し、白く霞むテレビ塔を写真に撮ったりしていた。上着も着ずに出てきたものだから、一通り写真を撮り終えて満足したのかすぐにホテルへ戻っていった。
通りがまた静かになった。通行人は誰もいない。目の前には見渡す限りの雪原が広がっていた。ふと振り返ってみると、そこには寂れた山小屋があった。カーテンの閉まった窓からは微かに灯りが漏れている。中に人がいるに違いない。わたしは恥も外聞も捨てて戸を叩き、声をあげて助けを乞うた。
部屋の中には4人の男女がいた。皆高校生ぐらいだろうか。男の子2人が工藤と服部、女の子2人は蘭と和葉と名乗った。彼らも突然の吹雪に遭い、偶然通りかかったこの山小屋に逃げ込んできたとのことだった。一見廃屋のようにも見えたこの建物であったが、中は広々としていて手入れが行き届いている。一際目を惹いたのは、部屋の一角に並べられた色とりどりの小さなガラス瓶だ。中身は顔料なのだそうだ。男子2人はとても博識だった。誰かのアトリエなのかと思ったが、絵を描くための絵筆やパレット、キャンバスなどは見当たらないらしい。
2人と話していると、奥の扉が開いて男性がもう1人出てきた。彼は蘭の父親で名を大五郎といった。彼らがここへ駆け込んだ時には中に家主はおらず、鍵もかかっていなかったそうだ。大五郎が現れた扉の奥には廊下が続いており、個室が3部屋ずつ廊下を挟んで並んでいた。今夜は吹雪もおさまりそうにないし、1つ空いていた個室に泊めてもらうことにした。
翌朝目覚めると、大五郎が殺されていた。発見したのは娘の蘭だった。朝になっても起きてこない大五郎の様子を見にいくと、部屋の中で仰向けに倒れ、既に息がなかったのだそうだ。死因はおそらく毒殺と思われた。大五郎の側にはあのガラス瓶が落ちて割れていた。床に飛び散った中身の顔料は、ヒ素由来の強い毒性を持つという鮮やかなエメラルドグリーンだった。
大五郎を除く全員がロビーへ集まった。ここにはテレビもラジオもなく、スマホの電波も入らない。だが天の声によると、この冬の嵐はあと数日続くだろうとのことだった。嵐に閉ざされた山小屋で起きた殺人事件。犯人は間違いなく我々6人の中にいるのだ。「俺は部屋に戻らせてもらうぞ」そう言ってまさしはロビーを出ていった。わたしもまさしのあとに続いてロビーを抜け出してきた。少し部屋で休ませて欲しいと言って出てきたのだが、向かったのは事件現場となった大五郎の部屋だった。
大五郎の部屋には大きな衣装だんすがあった。扉を開けてみると、中は毛皮の外套で埋め尽くされていた。年代物の外套で、とても上質なもののように見える。さらに奥にもまだ毛皮の外套が並んでいるようだ。衣装だんすに足を踏み入れ外套を掻き分けて進むと、次第に視界が明るくなってきた。出てきたのはホテル最寄りの地下鉄東豊線豊水すすきの駅地上入り口であった。
次の電車が何分発なのかは分からないが、とりあえずホームまで走って向かうことにした。地下道に響き渡るキャリーケースを引く音も、今は気にしていられない。ホームに着くとすぐに電車がやって来た。上がった息を整えつつ、東豊線さっぽろ駅からJR札幌駅までの道のりを頭の中で何度も反芻する。さすがに人の多い札幌駅でキャリーケースを引いて疾走するというのは憚られる。わたしも人を殺したくない。
幸い空いてるロッカーはすぐに見つかった。タイトなジーンズにキャリーケースとわたしという戦うボディをねじ込み、早足で切符売場へと急ぐ。3台しかない発券機はすべて埋まっていた。外国人観光客の方たちが、慣れない異国の券売機に手間取っている様子だった。
ホテルを出てからすったもんだしたものの、無事に発車時刻3分前には乗る予定だった特急北斗に滑り込むことができた。本州では新幹線でさえチケットレスで乗れるのにと悪態をつきたくもなるが、どう考えても余裕を持った行動をしなかったわたしが100%悪い。皆様方におかれましても、わたしに言われるまでもないとは思いますが、冬の北海道は不測の事態を十二分に考慮して、早め早めに行動するべしという教訓を共有しておきます。
▼これは白老へ向かう特急北斗から見えた札幌市内の景色
《参考文献》
・中川裕『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』集英社(2019)
・映画パンフレット『ゴールデンカムイ』(2024)
・『映画ゴールデンカムイビジュアルブック』集英社(2024)
・『月刊CUT No.464 Jan 2024』ロッキングオン
・『SWITCH VOL.42 NO.2 Feb 2024』スイッチ・パブリッシング