雲の上の彼女は
その女の子はいつも雲の上にいた。
白いワンピースがよく似合う彼女はいつも笑顔だった。
彼女は雲の上で地上から呼ばれるのを待っているんだと言っていた。
子どもはみんな雲の上でお母さんに呼ばれるのを待っているんだって。
それまではこうやって雲の上で待っている。
一列に並んで。
そして、呼ばれた子は雲の上から落ちるように地上にいく。
お母さんのお腹の中に入るんだ。
*
今思えば、私は雲の上にいるときに彼女と仲が良かったのかもしれない。
雲の上にいたときの記憶はないけど、なぜか私は彼女とだけは話すことができた。
他の子どもたちは見えることはあっても、話すことはなかった。
*
私は彼女に毎日の出来事を話した。
両親のこと、幼稚園のこと、なんでも。
彼女は笑顔で聞いてくれていた。
*
今はもう彼女に会うことはない。
どんな話をしたのか詳しく思い出すこともできない。
でも、彼女は確実に私の中にいて、いろんな話をした、という記憶だけは残っている。
きっと彼女も地上に呼ばれたんだと思う。
そうであって欲しい。
彼女が地上でどんな姿をしているのか知ることはできないけれど、幸せになっていてくれたらと願う。
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