道標は月が綺麗な夜に?
美月:私は月に帰ります
2024年5月12日
僕がずっと推し続けてきた人は月に帰った
今までアイドルを好きになったことはなかった
ずっと部活一筋だったし、部活だけが生き甲斐なところがあった
実際自分でも満足だった
そんなある日のこと
あまりにも寝付けずにテレビを見ていた
○○:なにも面白いテレビやってないな…
適当にチャンネルを回しているとたまたまドラマをやっていた
○○:見るのないし、これでいいか…
ある漫画を原作に実写化したらしい
内容は女子高生が高校の部活でアニメを作る話らしい
眠くなるまで適当に見てるつもりで見ていたドラマだった
しかし、あの人を見た時、僕は衝撃が走った
○○:かわいっ!
それはお金持ちでアニメーションに熱を捧げる生徒の役をやっている人
気になって○○はスマホで名前を調べた
○○:山下美月って言うのか…
僕は山下美月について色々調べ始めた
乃木坂46の3期生であること
モデルをやっていること
けれど服装はセンスがないこと
運動が苦手なこと
気づいたら○○は山下美月の虜になっていた
テレビ番組で乃木坂が出ていれば必ず見るようにした
雑誌の表紙を飾っていれば必ず買った
女性誌をレジに持っていくのは少し抵抗があったけどね
大学に入ってからはバイトも初め、LIVEやリアルミーグリにも行くようになった
初めてリアミに行った時はガチガチすぎて美月さんに笑われてしまった
何度も行くうちに山下さんにも覚えて貰えるようになった
美月:あ、○○だぁ!
○○:こんにちは
今日はこの部で終わりなんですけどね
美月:じゃあ、沢山お話しないとね!
そういえば全国ツアーは来てくれるの?
○○:大学もあるので神宮だけにはなりますが行きますよ!
美月:ほんと?嬉しいなぁ
頑張って見つけるからね
○○:じゃあ、僕も頑張ってアピールしますね
スタッフ:お時間です
○○:じゃあ、また次のシングルの時に来ます!!
美月:待ってるよぉ👋🏻
暫くは順風満帆な推し活だった
しかし、大学3年生の冬のことだった
"山下美月乃木坂46卒業、芸能界も引退"
僕は凄く悲しかった
初めて出来た推しの卒業
しかも芸能界にも残らないというのだ
もし卒業しても芸能界には残るものだと思っていたため尚更ショックだった
卒業コンサートは5月11日と12日
東京ドームでおこなわれる
とんでもない倍率にはなるとは思っていたが推しの最後には絶対に立ち会いたかった
そして当落発表当日
○○:よっしゃあ!!!
2日目に当選したのだ
○○:一日目も行きたかったけど行けるだけ文句は言えないもんな
そして迎えた卒コン当日
三番目の風で始まった卒コン2日目
イントロの時点で涙が止まらなかった
美月さんが考えたセトリで進んで行った卒コンは本編を終え、アンコールの為もう一度ステージに光が集まった
○○:きれい…
真っ白なドレスをきた山下美月は今までで1番輝いていた
美月:私は今日乃木坂を去り、芸能界からも引退します
けれど、必ずどこかで皆さんにもう一度会えると私は思っています
その後アンコール最後に山下美月センター曲のチャンスは平等で締めくくられた
○○:あぁ…人生でいちばん泣いた気がする
~~〜~~~〜~~
○○:お疲れ様でしたぁ
それから時が経ち○○も社会人になり今では営業マンとして働いている
○○:あぁ、俺何やってんだろ…
高校の途中から持っていた夢を叶えるために入った大学だったのに、結局のところ全然なりたくもない営業マンになってしまっていた
○○:さっさと帰って風呂はいって飯だな…
ポツポツ…ザァー
○○:うわ!雨かよ、最悪
急な雨に襲われ○○は雨宿り出来そうなところを探しているとカフェにあかりが着いていた
○○:喫茶夏桜か…
美月さんがカフェとかやってたら意外とこんな名前にしてそう笑
○○がそんなこと言って看板を眺めていると
??:さすが私の事を推していただけあるねぇ〜
○○:え?
○○が振り返るとそこにはかつて推していた人物がいた
○○:え?美月さん?なんで?ここに?
美月:なんでって、私のお店だからだよ
○○:美月さんの?お店?は?い?
美月:てか、そんなに濡れてたら風邪ひくよ!
ほら!中入って!
○○は美月に引っ張られなかに入っていった
美月:はい、
これタオルとホットコーヒーね
○○:あ、ありがとうございます
いただきます
ズズッ
あー、温まる
美月:笑なら良かった
それにしても○○はなんでこんなところ歩いてたの?
○○:帰り道です
家がもう少し行ったところなので
美月:なるほどね
ところで、なにか悩みごと?
○○:え?
美月:アイドルって人に見られるし、人を見る仕事だからね
だから、なんとなくだけど相手のことを分かるようになったのよ
○○:なるほど…
美月:だから、私にはバレバレなのだ!
ってことでさっさと悩みを打ち明けなさい?
美月らしいなんとも言えないダサいポーズで迫ってきた
○○:笑
実は、僕LIVE運営とかをやりたかったんです
乃木坂のLIVEをDVDとか実際に生で見て自分は表立って他の人を元気づけるのは難しいけど、裏で元気づける人たちの手助けをできるようになりたいと思って
美月:おぉ〜!
いい夢持ってるね
○○:笑ありがとうございます
でも、結局僕はなれませんでした
それで今では営業マンを…
美月:それで?諦めたの?
○○:え?
美月:そんな簡単に夢諦めてよかったの?
○○:…
美月:そりゃあ、必ず夢はどこかのタイミングで諦めやなきゃいけないかもしれないけどさ○○くんはまだまだこれからなわけじゃん?
もう少し夢を追ってみるのも手だと思うよ?
○○:そうかもしれないですけど、
美月:なにかあったら私が道標になってあげるよ
○○:美月さん…
美月:まぁ、そんな偉そうなこと言ったって、私ができることは話聞いてあげることくらいしかないけどね
○○:ありがとうございます
僕もう少し頑張ってみようと思います
美月:うんうん
いい顔になったね…
あ、雨やんでる
○○:あ、ほんとだ
それじゃ、僕は帰りますね
コーヒー代は?
美月:いいよいいよ
私が無理やり入れたんだから
○○:でも…
美月:じゃあ、○○くんが夢を叶えたら払いに来てよ
それで私は十分だから
○○:美月さん…
わかりました
必ず夢を叶えて払いに来ます!
美月:フフフッ
~~~~~~~
ガチャッ
美月:ありがとうございました
またのお越しをお待ちしてます
○○:はい
また来ます
○○は夢をもう一度見ようと1歩を踏み出した
そんな○○を暖かく見守るように天からは綺麗な満月が○○のことを照らしていた
〜fin