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恩送りと君


飛鳥:俺の嫁ですね〜!


俺の人生を変えてくれたあなたは今日乃木坂を卒業した




○○:はぁ…


高校2年生の夏休み、○○はひとつの紙を前にして悩み事をしていた


○○:進路…ねぇ


来年は3年生、大学進学するのか、はたまた就職をするのか、人生の大きなターニングポイントポイントである
簡単には答えが出せないのも事実
しかし、時間は止まってくれない


○○:やりたいことないんだよなぁ…
…部活行くか


~体育館~


○○:っちわーっす!


??:やっほー


○○:おぉ、奈央
来んの早くね?


奈央:今日進路相談だったからそのまま学校居たんだよね


午後練は13時から
奈央は12時30分に面談が終わる予定だったから部活の準備を持ってきてたらしい


○○:奈央はさ、何かやりたいことあるの?


○○は荷物を起き、靴紐を結びながら奈央に質問する


奈央:ん〜、私、保育園の先生になりたいんだよね


○○:ほぉ〜?
バドミントン続けるんじゃないの?
インターハイベスト4なんだもん
引く手あまたでしょ?


奈央:何?嫌味?
ベスト4取れたところでプロとして生きていけるかなんて分からないじゃん
それこそ逆にどうなんですか?
高校負け無しの○○くん??


そう、○○は親がバドミントンの経験者だったことがあり、物心ついた頃からバドミントンは生活の一部になっていた、
小学生低学年の頃はバドミントンは遊びのようなものだったから、成長するにつれ自分にはバドミントンの才能があると言われ、バドミントンに打ち込みつづけていた
中学の頃は成長痛に悩まされ大会などはあまり出ていなかったため高校は普通の高校だが高校に入ってからは今だ負け無し
バドミントン関係者は知らない人は居ない


○○:本当にやりたいことはなんなんだか分からなくなってるんだよね


奈央:??


○○:確かにバドミントンは楽しいし、試合で優勝するのは嬉しい
けど、これで生きていきたいのかって聞かれるとそうじゃないんだよ


奈央:ふーん
じゃあ、何になりたいの?


○○:わからん


奈央:はい?


○○:バドミントン以外でやりたいことある訳でもないんだよ


奈央:まぁ、まだ時間あるんだし、ゆっくり決めればいいんじゃない?


○○:あぁ


顧問:始めるぞぉ


○○、奈央:はい!


○○:(マジでどーしよう…)


奈央:そうだ、○○ってアイドルに興味無い?


○○:はい?


奈央:私乃木坂が好きなんだけどさ、今度握手会に行くんだけど、一人で行くと心細いから着いてきてくれない?


○○:えぇ、興味無い


奈央:お願いだよぉ
昼ごはん奢るから


○○:ん〜まぁ、それならいいよ
昼飯奢り忘れんなよ


奈央:OK!
じゃあ、明日の朝7時に東京駅ね!


○○:明日!?


奈央:うん


○○:…まぁ、いい
行くって言ったからには行く


奈央:ありがと!


~翌日~

○○:早く来すぎたな


奈央に言われた集合時間の30分前に着いた○○は暇を持て余していた


○○:乃木坂?だったっけ
少し調べておくか
…ん?
この人…


奈央:ごめーん!
待ったー?


○○:いや、俺が早く来すぎただけだから


奈央:じゃあ、行こっか


○○:握手会ってやつはどこでやるんだ?


奈央:幕張


○○:千葉か
遠いな


奈央:まぁまぁ
電車乗ってたらすぐだよ


○○:そうか?
まぁいいや、握手会って何時からなんだ?


奈央:たしか…9時?


○○:は?
今7時だぞ


奈央:仕方ないじゃん
人気あるメンバーは並ばないと行けないんだから


○○:そんなに並ぶものなのか


奈央:そうだね
長い時だと5時間とか並んだことあるよ


○○:5、5時間…


奈央:いっつもひとりだったからキツかったけど○○着いてきてくれるって言ってくれたからほんとに助かったんだよね


○○:…アハハ
良かった…


奈央:ところで○○も誰かのところ並ぶの?


○○:え?


奈央:だって、乃木坂のこと調べてたんでしょ?
携帯ついてるよ


○○:あぁ、乃木坂のことあんまり知らなかったから、調べてたんだよね


奈央:気になる人いた?


○○:この齋藤飛鳥って人かな


奈央:おぉ、これまた人気メンバーですな


○○:そうなの?


奈央:うん
でも、確か卒業発表してたよ



○○:え?
卒業とかあるのか?



奈央:うん
グループを辞めソロで活動するみたいな感じだね


○○:なるほど


奈央:私も飛鳥さんのところに並ぶ予定だったし一緒に並ぼ


○○:あぁ


~3時間後~

○○:長い…


奈央:飛鳥さんは握手会最後だからね
いつもよりも長いよ
けど、もう少しだから、頑張って


○○:くっ…


~更に1時間後~

奈央:次だよ!


○○:ほんとに疲れた…


奈央:話す内容決めておきなよ?
じゃあ、先に行ってくるね


○○:え、握手会って握手するだけじゃないんだ


○○:(話すことか…何も知らなさすぎるんだよな)


スタッフ:次の方どうぞ


○○:あ、はーい


○○:こんにちは


飛鳥:よっ


○○:えっと…
あったことありましたっけ?


飛鳥:さぁ?
胸に手を当てて考えてみなよ


○○:はぁ…?


飛鳥:まぁ、いいよ
君は前の子の付き添いかな?


○○:はい
誘われたので暇だったし、


飛鳥:そうかそうか、
じゃあ、乃木坂のこともあんまり知らなさそうだな


○○:失礼ですがその通りでして…


飛鳥:まぁ、別にいいよ
これをきっかけに知ってくれたら嬉しいからね


○○:嬉しいって…
飛鳥さんはもうすぐ卒業するって聞いたんですけど


飛鳥:それは知ってるんだ笑
そうだよ
私は今年いっぱいで卒業するよ
卒業コンサートは5月頃かなぁ


○○:そんなコンサートもあるんですね


飛鳥:ところで、さっきの言葉には続きがあるような気もしたんだけど?


○○:あぁ、卒業して飛鳥さん自身は居なくなるのにどうして嬉しいのかなって


飛鳥:そりゃ私が大好きなグループだからねいくら私が居なくなったって、そんな大好きなグループを好きな人が増えてくれれば嬉しいもんだよ


○○:そんなものですか


飛鳥:そんなものだよ
それに色んな人に恩送りしておくのも悪くないかなって


○○:恩送り?


飛鳥:そ、まぁ、意味はまだ教えてあげない
答えを知りたければ私の卒コンにでもおいで



○○:ちゃっかり宣伝ですか


飛鳥:笑笑


スタッフ:お時間です


○○:それじゃあ、また


飛鳥:うん
またね○○


○○:え?


奈央:○○〜!


○○:おっと
どうした?


奈央:どうだった?
初めての握手会は


○○:楽しかったよ
奈央さ、飛鳥さんの卒業コンサート行くの?


奈央:うーん
行きたいけど抽選当たるかなぁ


○○:そっか
(どうやって卒コン来いってんだよ)


~数ヶ月後~

○○は握手会以降齋藤飛鳥のことを、そして、乃木坂のことを調べ今ではすごくハマっている


○○:飛鳥さんの卒コン当たらなかった…


奈央:そんな簡単に当たるもんじゃないよ


○○:まぁな…
はぁ…


奈央:それにしても、そんなにハマるなんて思ってなかったからびっくりしたよ


○○:まぁ、曲とか聞いてみるうちに好きになってたよね


奈央:きっかけは飛鳥さんだったけどね


○○:ああ、5ヶ月くらいしか推せないけど、最推しは飛鳥さんだからな


奈央:いいんじゃない?
じゃあ、私今日は予定あるから先に帰るね
じゃあね


○○:気をつけて帰れよ
…はぁ、当たってくれよ


~~~~~~~~~~~~~~~

○○:ただいまぁ


○○母:おかえり〜
そういえば飛鳥ちゃんから連絡来てたわよ


○○:飛鳥ちゃん?


○○母:そう、齋藤飛鳥ちゃん
乃木坂の


○○:は?


○○母:あら?覚えてない?
隣に住んでた齋藤さんの娘さん
今乃木坂にいるんだよ?
あんた、握手会行ったんだってね笑


○○:マジか…


○○母:なんか、○○に渡してって言われてもらったけど


そう言って○○母は封筒を渡す


○○:ん、わかった


○○母:絶対に来いってさ


○○:??



~○○の部屋~

○○:どこに来いって?


封筒を開けてみるとそこには卒業コンサートのチケットが2枚と手紙が入っていた


○○:マジかよ…
ん?


"○○へ
手紙もらったってことは思い出したかな?笑
握手会の時は私のこと覚えてなかったみたいだけど、私はすぐにわかったよ笑
チケット外れたみたいだからこのチケット持って当日来なよ
一緒に握手会きてた女の子も誘ってね

飛鳥より"


○○:…



~卒業コンサート2日目~

奈央:まさか飛鳥さんと知り合いだったなんてね


○○:覚えてなかったんだよ
幼稚園とか小さかった頃の話だったからさ


奈央:ふーん


○○:それにしても恩送りってなんだろ


奈央:恩送り?


○○:うん
飛鳥さんに握手会の時に言われたんだよね
色んな人に恩送りしておくのも悪くないかなって


奈央:恩送りかぁ
恩返しなら知ってるけどね


○○:そうなんだよなぁ


奈央:あ、始まる!


○○:…


~ライブ中~


奈央:キャー!
飛鳥さーん!


飛鳥:!!
ニコッ👋👋


○○:!?…


~10年前~


○○:じゃあね!
飛鳥ちゃん


飛鳥:ニコッ👋👋



~現在~

○○:飛鳥ちゃん…



~ライブ最後の挨拶~

飛鳥:恩返しっていう言葉があると思うんですけど、私はもっと好きな言葉がありまして
恩送りっていう言葉が
恩を返すだけでなくてどんどんどんどん送っていく
そうやって連鎖していくってすごい素敵だと思うしそれって私たちが歌っているなと思うのでその言葉を今はすごく大切にして生きています


○○:恩送り…


奈央:素敵な言葉だね


○○:あぁ…
昔1度だけ聞いたことがあるんだ


奈央:?
握手会の時じゃなくて?


○○:ちがう
もっと小さい頃だ


奈央:ふーん
それって飛鳥さんが言ってたの?


○○:ううん
俺だ


奈央:○○が?


○○:幼稚園の頃の俺は大人の言葉をすぐに真似したがっててさ
恩送りって言葉を大事にしろよって言われてそのまま同じことを飛鳥さんに言ったんだよ
まぁ、幼稚園の頃だから俺は意味は分からなかったけどな
けど、飛鳥さんは年上だったし、意味を調べたんだと思う


奈央:へぇ〜
飛鳥さんはそれ以来ずっと大切にしてる言葉なんだね


○○:あぁ…そういうことだな笑


飛鳥:それでは聞いてください
ジコチューで行こう


奈央:最後だね


○○:みたいだな




ジコチューでいーこーおー



飛鳥:今日で私は卒業ですが、明日から恋とかしてるかもですねー!
オレの嫁ですねー!


奈央:笑笑
飛鳥さんらしいや


○○:……


奈央:?○○?


○○:オレの嫁ですねー…か笑


スタッフ:○○さんですか?


○○:はい、そうです


スタッフ:飛鳥が会いたいという事なんですが、裏まで着ていただけますか?


○○:え?
えっと…


奈央:行ってきなよ
待ってるから


スタッフ:あ、お連れの方も一緒に


奈央:へ?


○○:あ、それなら行きます
ほら、行くよ


奈央:…急に緊張してきた



~ステージ裏~

スタッフ:飛鳥さん
お連れしましたよ


飛鳥:ありがとうございます

よっ!久しぶりだな
○○


○○:お久しぶりです
飛鳥さん…
いや、飛鳥ねぇって呼んだ方がいいか?


飛鳥:どっちでもいいよ笑
思い出したんだね



○○:手紙もらった時は正直半分くらいしか思い出せなかったんだけどさ、ライブの途中でね


飛鳥:そうかそうか笑
えっとそちらのお姉さんの名前は?


奈央:と、冨里奈央です
飛鳥さんの大ファンです


飛鳥:お、嬉しいなぁ


奈央:あの、握手して貰えませんか?


飛鳥:全然いいよ?
なんなら写真撮ろ?


奈央:いいんですか?


飛鳥:いいよいいよ
ほら○○写真撮って


○○:はいはい笑
はい、チーズ


奈央:ありがとうございます!


飛鳥:全然いいよ笑
○○?


○○:?なに?


飛鳥:少し話したいことあるんだけど、時間ある?


○○:?いいよ



~ステージ~

○○:俺がこんなところたっていいのかよ


飛鳥:特別だぞ


○○:緊張してきたわ


飛鳥:なんでよ笑


○○:それで?
話って何?


飛鳥:恩送りって言葉、思い出した?


○○:あぁ、俺が昔飛鳥ねぇに言ったんだったな


飛鳥:そうだよ
○○は意味もわからなかったんだろうけど、私は意味を知ってからその言葉がすごく好きになった


○○:…


飛鳥:でも、私は恩返ししたい人に返せてない


○○:?乃木坂のメンバー?


飛鳥:あの子たちは最初に私から恩を送ってるからいいの笑


○○:笑
じゃあ、誰?


飛鳥:○○にだよ


○○:おれ?


飛鳥:そう
○○はさ私が居なくなった時期覚えてる?


○○:うーん
あんまり詳しく覚えてないかも


飛鳥:だと思った笑


○○:じゃあ、聞かないでくれる?


飛鳥:笑
その言葉を言われてすぐの事だったんだよ?


○○:え?


飛鳥:あの時私は乃木坂のオーディションを受けるかどうか迷っててね
そんな時に○○がその言葉を私に言ったんだよ
その意味を知った時、そんな言葉もあるんだって思ったと同時に、私のやりがいは多分色んな人に恩を送って、その人が貰った恩を別の人に送ることができるような
そんな人になりたいって思ったんだよ


○○:…


飛鳥:だからね
私は○○に恩を送ってもらって
それを元に色んな人に恩を送れたんだよ


○○:飛鳥ねぇ…



飛鳥:ありがとうね
○○


○○:俺も、飛鳥ねぇにそう言って貰えただけで恩を返してもらったよ笑


飛鳥:…
ねぇ○○
最後に私が言ったこと覚えてる?


○○:ん?
あれのこと?
オレの嫁ですねーってやつ


飛鳥:それそれ
○○さ、明日からそのセリフ使っていいよ?
飛鳥ちゃんはオレの嫁だって


○○:え?


飛鳥:だから〜私と結婚しよ?


○○:え…



奈央:えぇー!


○○:うぉ、びっくりした


奈央:あ、ごめん
て、ごめんじゃないよ
飛鳥さんにプロポーズされてんだよ
そりゃ驚くでしょ!


○○:いやまぁ、そうかもだけどさ


奈央:で!?
どうするの?
結婚するの?


飛鳥:フフっ
そんなすぐに答えださなくていいよ?
○○はまだ高校生だし進路も悩んでるんでしょ?


○○:まぁ、そうだけど


飛鳥:だから、もし、私のプロポーズを受けてくれるなら大学の卒業なのか就職してるのか分からないけど、5年後に返事をください


○○:…
わかった


飛鳥:うんうん
じゃあ、私はみんなのところに戻るね
なおちゃんもまたね


奈央:はい!


○○:じゃあね




~翌日~
○○:俺の進路はこれかな


奈央:ん〜?
…え
本気?


○○:やっとやりたいことが見つかったからな


奈央:まぁ、○○なら似合いそうだもんね
いいと思うよ
受かるとは思ってないけど笑


○○:おいそんな事言うなよ!
もう1次審査は通ってんだから


奈央:嘘!?
まだ2年生だよ?



○○:それがさ、飛鳥ねぇが早い方がいいって言うから面談受けたらさ
その場で2次審査ねって言われて


奈央:えぇ
やだよ○○に負けるの


○○:知らねぇよ笑
ま、そういうことだから俺のやりたいことは決まったんだ


奈央:ぶぅ〜




~5年後


飛鳥:○○!
早くしないと仕事遅れるよ!




~end

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