2021・上半期に観た映画の中で好きだった作品 (邦画編)
邦画編
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ポスターが一見洋画っぽくて、なんだこれ?と気になっちゃう不穏さがあってまずそこに惹かれた。
次に銭湯というシチュエーションに惹かれて、そしてそこで人を殺している『殺人 × 銭湯』という設定に最高!となる。
身近に潜むJホラーみたいな怖さや水場のジメジメと青々しい陰湿感がありつつも、和彦のモサっとしたキャラが深刻さを伴わずなんなら非日常をどこか楽しんでいて、重すぎずバランスがいいので見やすかった。
家族で食卓を囲むシーンなんかは、会話の掛け合いのシュールさに笑ってしまう。
高校の同級生・百合の可愛すぎない可愛さの彼女感がこれまたいい中和剤になっていて、陰キャである和彦の心理描写や人間味を上手いこと引き出していた。
特に好きなのは同僚の松本という殺し屋キャラで、バックボーンが見えない陰の感じに惚れちまう。とにかくいい奴。
その松本が華麗な殺人裁きを見せることでやっと、置かれてる状況の深刻さに説得力が生まれて急に怖くなるとこまで含めいいキャラしてる。
設定の出落ち感やテンポの割には、この先どうなっちゃうんだろう、何が起こるんだろうって気になって惹き込まれるサスペンス・コメディ。
大好きな『ミスミソウ』という映画で知った内藤瑛亮監督の新作。
センセーショナルなテーマであるいじめやネットリンチなどの現代に沿った社会風刺を通して、子供たちが犯してしまった罪をどう裁くべきなのか、周りがどうあるべきなのかを考えさせられる。その答えを特に提示するわけでもなく、これを観て自分たちで考えて話し合ってみろ、と地球に生きる人類においての壮大なグループワークを課せられた感じ。
基本加害者側、毒親や反省の色を見せない主人公きらくんの人生・心理にフォーカスしているため、善悪の部分で明確に納得できる理屈を与えてくれないし終始気分が悪い。とても胸糞。
だけどそういうグレーなところに安息を求めてしまっているのが加害者だけじゃないのも事実で、それが現代そのものの渦のような気がして納得せざるを得ない。知らないうちに加害者になり得てしまう恐ろしさに、一歩引いた視点でハッとさせられた。
『ミスミソウ』で惚れた内藤監督特有のエグいシーンや胸糞具合、血を連想させるロールキャベツ、潰れたトマト、赤いゴミ袋などの映し方もさすがでした。異様に殺傷能力の高い割り箸ボーガンも内藤監督節が効いていて面白かった。
主人公役の上村侑くんは『誰も知らない』の柳楽優弥みがあって、これからが凄く楽しみな俳優さんだった。
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この時代の官能映画はやっぱり現代では絶対に作れない艶かしさがあるし、映像が与えるエロすぎないエロティシズム然り大胆な撮り方に驚かされて、登場人物たちのキャラクターの愛くるしさに魅了される。
バブル期の都会、SM女王という日の当たらない場所で堂々とアグレッシブに生きる女性たちの逞しさやその裏に隠れた本音の掛け合いには、どこか羨ましい面倒臭さがある。哀愁さえある。そしてそれはいつかどこかで自分の味方になってくれるんだよね。
知らん男たちを捕まえ車を乗っ取って海に行ったり、居酒屋で焼き鳥を食べながら台本を覚えたり、明け方におやすみと言って渋谷で別れたり、劇団内で性病同盟が出来てしまったり、大量のコンドーム風船で騒いだり。
もう細かいことなんてどうでもよくね?なんかよく分からないけどいいじゃん!の馬鹿馬鹿しい精神に、どこか今の世の中にはない反骨感があってポジティブになれるような。
クドカン、阿部サダヲなど出ている脇役たちも豪華なので見応えあり。
まだまだ知らない新しい愛の形を見せられたし、自分の中の愛の行方を重たい腰据えて眺めている場合じゃないなと思い知らされたな。
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一見二人の女の子のサブカル青春ものかなと思いつつ観てみると、中盤で一変する雰囲気と展開に背筋が凍るまさかのサイコサスペンス。
ブサイクだとからかわれる美沙と可愛いことで妬まれるイズミ、混ぜたら危険だった。美沙は、自由奔放で可愛いイズミに惹かれつつも根本的な価値観の違いを少しずつ感じ、イズミの何気ない言葉や挙動に不信感を抱いていく。
その違和感の正体とは何か。
金魚やインコ、みかん、マニキュア、間接的に狂気へと繋がる小道具の使い方は秀逸。
低予算映画で知られる『カメラを止めるな!』の半分の製作費の150万で作られたという本作。それを感じさせない役者さんたちの演技の裏の演技が光る。
伏線回収もの、どんでん返しものが好きな人におすすめ。
これは前情報なしに観てほしいのでこれくらいにしておきます。
これは上半期で観た邦画の中でも一番よかったと言っても過言ではない作品。青春をここまで繊細且つ感傷的に描ける現代の日本映画界、捨てたもんじゃねえなと、震えた。
学生時代、クラスの中心でおちゃらけている奴って絶対いて、そういう奴って好かれる分だけ嫌われていたりする。傍観者として眺めていると、そいつの腹の底にぽっかりと空いた穴があるその滑稽さに気付いて痛々しくなってしまう瞬間があった。
でもそういう奴の存在は大人になると、そういえばあいつ、なんて嫌でもふと思い出したり、潜在的なとこで影響を受けていたりしちゃうんだね。
脚本と演者二役をこなす佐々木役の細川岳のキャラクター、内面にある孤独と影、それに対比する表向きな明るさと周囲を巻き込む存在感を共存させた両生類演技、特に表情や語り口調が、絶妙。
この映画を観た人の心の中に佐々木がスッと入って、佐々木とのありもしない思い出が勝手に溢れてくるような。佐々木に会ったことがあるような気がしてくる。
言葉にしないままでも大人になれてしまうそんな瞬間の羅列に、生き様とやらをどう上手く組み込んでいけばいいのか。それぞれのキャラクターを通して、特に佐々木の圧倒的な存在感をもってして考えさせられた。
最後の最後ユニークなラストシーンはやられた!
これからの未来、みんなの心の中にいる佐々木が希望となって生きていくんだなと、オレンジ色の空の下、帰り道、全力で自転車を漕ぎたくなる気持ちで胸がいっぱいになること間違いなし!
お見事でした。
以上、邦画編はこんな感じでした。
少しでも観てみたくなってくれたら嬉しいです。
折角これだけの映画を観ているので、映画に関する記事をどんどん書いていけたらいいなあと思います。
雨の日はこれ!沈みたいときはこれ!胸糞!ホラー!面白いけど別に観なくてもいいマニア向けB級・Z級映画!など、テーマを決めて紹介していくのも楽しそう。
2021・下半期verもお楽しみに。
Filmarksにて、随時観た映画を更新しているのでよければこちらもチェックしてみてください。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
( ◠‿◠ )