日記 2020/08/07
今日はちょっとだけソワソワしている。
その理由は二つ。
① 私の誕生日である
②ばあちゃん(おばあちゃんのこと)の命日である
しかし特別、何かをやりたい、何処かに行きたいという気持ちもなく案の定ダラダラと一人で映画を観ていた。(観た映画:『新感染』『キャビン』)
私にはばあちゃんとの記憶があまりない。それは関わりがなかったとかではなくて自分がまだ幼かったせいだからだと思う。顔も声もどんな人柄だったのかも、あまり思い出せない。たくさん遊んでもらっただろうにとことん淡白な奴だ。
ぼんやりと断片的に覚えていることと言えば、ばあちゃんがお小遣いをくれたときのことくらい。そして私はばあちゃんに生意気な態度を取ってしまったのか(曖昧)母に外に引きずり出され説教をくらう、という酷いものだった。
もう一つは、いとこの「ばあちゃん」のイントネーションにずっと違和感を感じていたことだ。
記憶ってやつはいつでもそんなもんなのだろう。
思い出す要素が少ないせいか忘れてしまいそうなばあちゃんのこと、ばあちゃんとさよならした日が自分の誕生日と重なっていることはとても嬉しい。ばあちゃんと私だけの秘密みたい。
夜は近所の居酒屋さんに行った。
熱々でホクホクのナゲット、ボリューミーな豚のお好み焼き、マヨネーズとの相性抜群長めのもろきゅう。中でも一際目を引いたのはトマトだった。薄く輪切りにされたトマトが前ならえして立っている。しかも贅沢に二個使用しているらしくずっしりとしていて、まるでパティシエが技術を競う大会で作ったケーキのような繊細さがあった。私はそれを崩してしまうのが惜しくてあまり手をつけられなかった。
もろきゅうの味噌とマヨネーズは一生食える。
帰り際にはお店の方がドライフルーツとお菓子をくれて、ちょっとだけ特別な日になった。
また近いうちに来ようと思う。
呑み足りない私たちは、少々火照った身体にはちょうどよいくらいの夜風を浴びながら二軒目を探した。
選ばれたのはバーでした。
駅前に構えているものの隠れ家的な雰囲気のそのバーには、どことなく落ち着く感じがあって気に入っている。しかし金曜日ということもありたくさんの人で賑わっていた。私たちは出入り口付近の席に着席した。
ここに来ると無性にワインが飲みたくなる。薄暗い店内の雰囲気がそうさせるのか、既にアルコールが体内にいるという状況がそうさせるのか。
私は後者だと思っている。
カルチェロ、というスペインの赤ワインを頼んだ。
チャーリーとチョコレート工場みたいなパッケージにワクワクして思わず写真を撮っていた。情報量多めの日本のパッケージをぶった切ってる感じが最高。だって''カルチェロ''って書かないんだぜ...Cだけなんだぜ...いかしてる。人間関係もこれくらいシンプルでいいのになと思った。
呑気に飲んでいたら新品の服にワインを零してしまった。落とすのが難しいシミランキングで上位にランクインしていそうな赤ワインのシミを、お手本のように作っていた。白ワインで拭くといいと言われ拭いてみたけど落ちなかった。
諦めて、帰ったら落とそう、と少しの間放置してしまったあとトイレに席を立ったついでに水洗いしてみた。しかしこれもダメだった。
ふと蛇口の横に目をやるとハンドソープの''キレイキレイ''があった。本来の用途に違反する申し訳なさを感じつつも、今出来る最後の手段としてそれをつけて洗ってみた。
なんと、赤いシミが青くなってみるみるうちに薄くなっていくではないか。
その瞬間から、''キレイキレイ''しか信用しないと私は強く決心したのだった。
楽しい時間はあっという間で、気付けば深夜零時をまわり一時になろうとしていた。
私たちは酔いも覚めぬまま別れを告げそれぞれの家路へと歩いた。貰ったお菓子とワインで埋められた幸せな左手は、その重さを感じないくらいに軽々としていた。
そうか、誕生日は誰かの想いやりで出来ていた。
(東京のおじいおばあちゃんが送ってくれた梨のグラビア)
これも想いやりだ。
毎年夏には東京のおじいおばあちゃんたちの家にお泊まりしに行くのが恒例行事。それだけを楽しみに夏を迎えるようなところがあったので、今年は会いに行けないということになりとても悲しい。
どうか元気でいてください。
お祝いの言葉をくれた方も、ありがとう。