幼稚な現実
遠くに光る鉄塔の、点滅する信号を眺めて
隣に聳え立つビルの、上で仕事をする人のことを考える。
あれが何かのサインで
突如宇宙人が現れたなら?
自分たちのビルを破壊するための、
巨大隕石を呼ぶために点滅してるとしたら?
たらればで考えるには幼稚すぎる物語を
頭の中で完結へと導く。
その宇宙人、及び隕石を呼んだ目的は?
社員の一人が、出勤するのが嫌で会社ごとぶっ壊したくて計画を立てたのか。
はたまた社長が、自分は別の場所で避難しながら未曾有のテロを引き起こし、自分が社員を失った悲劇のヒロインになるために呼んだのか?
漫画にもならなそうな展開をフツフツと頭に浮かべて、私は鉄塔を眺める。
夕方5時の放送が聞こえ、私は座っていたベンチを立つ。
「ん~っっ」
私はゆっくりと伸びをして、鉄塔に背を向けた。
突如崩れ落ちる聳え立っていたビル。
巨大ではない、小さな隕石が、
ビルを瞬く間に破壊していく。
翌日ニュースでは、
隕石によって破壊されたビルとして注目されていた。
社長は泣き、
社員も泣いている。
しかしその奥の方で薄ら笑いを浮かべる社員。
よく分からないが
私の頭の中はどうやら幼稚ではなかったみたいだ。
ただそれが、社長が呼んだ隕石なのか
社員が呼んだ隕石なのか
はたまた、たまたまか
それはハッキリと分からなくて
ただひとつ言えるのは
もう二度と私は、
あの会社に行かなくて良くなったということだ。
私は家の天井を見上げて高らかに笑った。
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