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逆噴射プラクティス_2024_10_04

はじめに

・これは逆噴射小説大賞に向けて書く筋力を鍛えるための習作です。
・面白いかどうかは一旦置いて、事前に意図を設定して描写しています。
・本番である逆噴射小説大賞は制限文字800字ですが、プラクティスはだいたいそれくらいの文字数という緩い基準でやっています(削ってる間に次のプラクティスをやるので)
・もう一度言いますが、面白いかどうかは一旦置いています。
・あと文末に意図や動機なども書いておきます(自分が忘れるので)

という言い訳ですね。

旨い話には

 屋台の暖簾を割って、二人の男が顔を覗かせた。
「席あいてる?」
「おーうバリバリィー!」
 しゃがれたダミ声の店主に促され丸椅子に腰を下ろす。カウンターは油でつやつやと光り、メニューの紙は染みだらけだ。
 客の片割れが、チラリと隣を伺う。
「そんなコワ~イ顔しないでも。ありゃあ取材の一環で、そちらさんの新入社員に、ちょ~っとだけお話をね」
 甲高い声で飄々と語る男の顔には深い皺が刻まれ、不精に伸ばした髪は総白髪。初老の趣を纏いつつも、爛々と輝く白目の広い瞳だけが、奇妙に若々しかった。
「ねえ芳賀位(はがい)さん」
 芳賀位と呼ばれた坊主頭の男が渋顔を作り、丸太を繋いだような腕でお冷のグラスをつまむ。
「ものは言い様だな、ハッシン君」
 ギロ、とハッシンを睨む、その体格は縦も横も彼の倍はあろう。鎧のような肉体が、上等な黒の背広に押し込まれていた。
「その“お話”とやらに、わざわざ『嘘つきをゆるさない』を用いたと」
「そちらの専門は怪不動産でしょ? ブツ系は市役所の」
 破砕音。
 黒い毛で覆われた剛腕がハッシンのグラスを押し砕き、二の句を封じた。
 破片がざらりと床に散る。ハッシンが片眉を上げ横目を向けた。顔を突き合わせたゴリラは歯を剥き出して威嚇する。
「ゴリラ、出てますよ」
 視線を外し、戻す。芳賀位がそこに居て、なお収まらぬとばかり荒く鼻息をつき、席に戻った。
「注文ねー。バリバリラーメンふたつ」
「おいさーッ! バリバリ―ッ!」
「おい勝手に」
 大将が、抱えるような大きさのラーメン丼をふたつ、カウンターに置いた。いや置けるわけがあるか。芳賀位は丸椅子から立ち。
 できない。
 “その動作”は何と言ったか?
「これ食べ残しのバツは?」
 ハッシンが割り箸をパキンと割った。
「ハァー? 寿命十年だよバリバリィー!」
 大将はもはや大仏の如き身丈でこちらを見下ろしていた。
 芳賀位は天を仰ぐ。そして自らも割り箸を掴み取った。

ライナーノーツ(意図や動機)

・これはちゃんと本文800字(選択範囲の文字数カウントしてくれるnoteエディターの機能でチェック)
・ざっと書いた時点で1300字ちょっと。ある程度直したり増えたり減ったりして1200字程度、そこからがまあ逆噴射小説大賞の難関であり醍醐味である『これ以上削るとこないけど削るしかないのでむっっっちゃ考える』ターン。
・ネタは元から……というか『前段にあたる●●と〇〇と□□を書いたらこれを書く』という計画だけあって何年も頭の中に巣食ってたネタを書き出したもの。なので、この文章の前にも物語が存在する。その上で、読者の脳内にきちんとイメージを(最小文字数で)構築できるかのトレーニングとして取り掛かりました。
・というのは理由の半分。さすがにそろそろ書き出しておかないと脳容量がね…。
・余談となりますが、この物語のエピソード・ゼロ的なものがパルプアンソロジー『無数の銃弾』に掲載してもらった自作となります。 ……後編、本当はもうちょっと手を加えたい…けどなんかぜんぜん書けにゃい…というジレンマのもと捻り出したものなので、この後悔を胸にしっかりと抱いて、今後に生かしていきたいです。いや活かそう、絶対。うん。

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