Netflix『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』がめちゃめちゃアツかった ※黒さじレストランリストのおまけつき
こんにちは。長津です。
キングオブコント2024。今年もおもしろかったですね。個人的にはダンビラムーチョの「冨安四発太鼓保存会」が今年のハイライトでした。バカをこねくり回しすぎない潔さがカッコよかったと思います。あのおじさんのあの感じ、最高。
賞レースはいつだってアツい気持ちになるものですが、この三連休、KOCの裏でぼくが勝手にアツがっていた賞レースをご紹介したいと思います。
Netflixの『白と黒のスプーン 〜料理階級戦争』という料理リアリティショーです。
番組を観た友人とのちのち語ることを目的に書いている記事ですので、人によってはネタバレと感じてしまう部分があるかもしれません。
「この後観るよ!」という方は、一旦Netflixで12話観た後で、アツい気持ちのままこの記事を探して戻ってきてください。
観終わってすでにホカホカの方と、ガイドがあった方がリアリティショーを楽しめるという方などは、よかったらこのまま記事をお読みください。
また、記事の最後におまけとして「韓国まで行ってこのシェフの料理を食べてみたい」と思って調べた黒さじシェフたちのレストランリストもまとめましたので、韓国に行く方はぜひお店に足を運んで感想を聞かせてください。
白と黒のスプーン 〜料理階級戦争〜
『白と黒のスプーン ~料理階級戦争~』は、韓国の著名なシェフたちと、まだ名が広く知られていない挑戦者たちが料理の腕前を競い合うサバイバル形式の料理バトル番組です。1話60分〜70分で全12話。
参加者は「白さじ」と「黒さじ」に分けられ、白さじにはミシュランの星を持つシェフや受賞歴のあるベテランが集結しています。一方で、黒さじにはソウルで評判のお店だけど名声はまだのシェフや、料理YouTuberが挑戦し、独創的な料理の味と技術で競います。
審査員は、韓国を代表する料理研究家で実業家のペク・ジョンウォンと、ミシュラン3つ星を獲得したアン・ソンジェが担当しています。
「THE BORN KOREA」という飲食フランチャイズ経営をしていて、韓国の食文化に詳しいペク先生は「味の本質」に焦点を当てて評価するスタイル。韓国唯一のミシュラン3つ星レストラン「MOSU」を経営するアンシェフは「料理のコンセプト」と「芸術性」にこだわった審査を行います。
多様な背景を持つ参加者たちの真剣勝負と、Netflixならではのスピーディーでドラマチックな演出がこの番組の魅力です。「料理の鉄人×バチェラー」といった感じで、やめられなくて睡眠時間を削って朝まで観てしまう系のアレだと考えていただくのがわかりやすいと思います。
総合力が試されるテーマとステージ
料理人たちは、めちゃめちゃたくさん厨房がある巨大なキッチンスタジオで、生き残りを賭けた料理対決を行います。参加者はステージごとにテーマを与えられ、それに合わせた料理で審査員を唸らせサバイブすることが目的です。
今まで観てきた料理番組のイメージで、個人戦がずっと繰り返されていく感じなのかな?と思っていたのですが、急に団体戦になったり、白黒を超えた選抜チームの仮想レストランどうしの争いになったりするところが最高に面白い演出だと思いました。料理人というだけのシェフ像だけでなく、経営者として、マーケターとして、厨房をまとめ上げるリーダーとしての料理の総合力を競うかたちになっています。
料理階級戦争というコンセプト
この番組はタイトルからして20人の著名なシェフと、無名の料理人80人が「階級戦争」をするという仕立てです。
せりあがりで華々しく登場して、名前と共に紹介される白さじシェフたちに対して、階級が低い黒さじシェフはファイナルステージに行くまで名乗ることも許されません。「料理する変人」「隠れた天才」「ナポリ・マフィア」「おまかせ1号」「漫画男」「トリプルスター」など、なんか変なあだ名で呼ばれながら、高いところの有名シェフたちを見上げるばかり。とても屈辱的なスタートです。
もしかしたら権威や名声に対する文化的な価値観の違いなのかもしれないのですが、初期状態であからさまな差がある状態をそれぞれがすんなり受け入れているような印象を受けます。「韓国の人ってそうなんだ…」日本と比べてずっと名声が重視される社会に生きているのかもしれないと最初に感じました。
話が進むにつれて、黒さじ料理人たちが名声とは無関係に確かな技術と料理への情熱を持っている姿が描かれます。一方で、料理の技術が高いのは当然の白さじシェフたちが、チャーミングで人間らしく料理に向き合っている姿が同時に描かれていきます。最初あった格差が割と序盤ではがされていきます。
少年漫画のように、黒さじが星付きのシェフたちをジャイアントキリングしていく痛快さをたのしむ番組なのかと思っていたのですが、白さじシェフたちはあっさり負けていきます。敗れた白さじは、なんとなく満足げというか、次の課題を見つけたようないきいきした顔をして去っていく人が多いことに気づきます。
ステージごとのテーマも、単に技術と味を競うようなものから、だんだんと料理人としての経験から出る発想だったり、人生を通して積み上げてきた技術を絞り出し合うような戦いになっていく構成になっていて、階級や名声の有無を超えた1人の人間として応援したくなっていきます。
おそらく「階級戦争」は意図的なミスリードで、評価を剥ぎ取った後の、料理人のむきだしの状態のぶつかり合いこそが、表現したかったことなのかもしれません。
料理人の生き方にアツくなれ
かくして、ぼくたちはたくさんの料理人の物語を通り過ぎることになります。
料理人としての出発点がちがう
各シェフは料理の道に入ったタイミングやその背景が異なります。裕福な家庭が崩壊して料理で家族を支える必要があったシェフ。料理への想いは人一倍強いのに、男性ばかりの厨房の世界に押しつぶされそうになったシェフ。海外に渡って自分のアイデンティティを認めてもらう機会を得たシェフなど、それぞれの出発点が料理に対する思い入れやアプローチの違いを生み出しています。
表現する料理や専門性が多様
シェフごとに料理で表現するテーマも様々です。地元の人に愛される韓国の伝統的な家庭料理をテーマにするひと、大統領の来賓を満足させる料理を作り続けてきたひと、季節感を反映させた日本食を追求するひと、海外にいる韓国人としてのアイデンティティからくる感情や記憶を料理で表現しようとするひとなど、各シェフが専門とする料理のテーマが多様です。
修行の質と量がちがう
シェフたちが積んできた修行の質や量も大きく異なります。審査員のアンシェフが経営するレストランで、野菜の切り方のサイズに至るまで厳格なトレーニングを受けてきたシェフもいれば、寝る間を惜しんで独学しながら技術を磨いてきたシェフもいます。こうした修行の経験は、彼らの料理スタイルを支えています。
自己表現のさじかげんがちがう
料理を通じてどこまで自己表現をするかのスタイルも人によって違います。あるシェフは習った料理を何世代にも渡って再解釈・再構築してアートのように表現し、他のシェフは基本に忠実に「素材そのものの味」を徹底的に引き出すことを重視します。自ら学んできた伝統的な技に、どこまで自分をのっけて創作するかの選択は無限の選択肢を持っています。
リーダーシップと役割への徹し方がちがう
特にチーム戦のステージでは、シェフたちのリーダーシップの取り方や役割への徹し方が哲学として顕著に現れます。あるシェフはチームのコンセプトを決めて、理想の実現のために他の方をリードする一方で、他のシェフはサポートに回り、自身が最も活きる領域での仕事に徹しチームのレベルを上げることに徹します。権威と実績のある白さじは、みんな我が強いためチームがまとまらない場面もあるのですが、制限時間の中で個の力で最終的に料理をまとめ上げるという姿も印象的です。
優勝者のコメントに痺れろ
優勝者が誰かという無粋な話はもちろんしませんが、優勝者のコメントはどうしても引用したいと思いました。
…アツすぎる。これに尽きる。この記事は、この優勝者の言葉が出てくるまでの道のりについて、誰かと語り合いたいと思って書きました。
ちなみに、このシーズン1でぼくがずっと推してたのは「トリプルスター」でした。白さじからも黒さじからも一目置かれるやわからいイケメンメガネで、料理の技術と繊細な表現が群を抜いていました。さて優勝したのはどっちさじの誰でしょう?ご自身の目でお確かめください。
シーズン2の制作が決まっているとかいないとか。この賞レースが定期的に開催されるとしたら、都市まるごとの食文化レベルが上がっていくんだろうなぁと妄想します。いつか東京版の『白と黒のスプーン』がいつか観られる日が来たらいいですね。
【おまけ】黒さじレストランリスト
ぼくはまだ韓国に行ったことがないのですが、実際にお店に訪問して食べてみたいと思いました。主に黒さじシェフのレストランを調べてリストしてみたのでシェアハピ!
料理する変人 Deepin(中区/ソウル)
トリプルスター trid(江南/ソウル)
ナポリマフィア VIA TOLEDO Pasta Bar(龍山区/ソウル)
セレブのシェフ LOGI(江南/ソウル)
隠れた天才 Pono Buono(江南/ソウル)