アナログレシピ
本棚を整理しようと思い立った。
このところほとんど手に取ることのない、無印良品のホルダーを上段から6冊引っ張り出した。
定期的に買っていた料理雑誌から、作りたいレシピが載ったページを切り取り、それを一枚一枚フィルムに入れたクリアホルダー。
結婚した当初なので、かれこれ20年以上も前に作ったもの。
見ないんだったら捨てよう。
せっかく作ったものだけど、残しておいたところで見ないのなら、作ることはまずない。
昔は箪笥の肥やしとよく言ったけれど、着ない服を捨てずに持っているのと同じことだから。
ただ、燃やせないゴミに分別するポリプロピレンのホルダー本体に燃えるゴミの紙が入っていては捨てるに捨てられない。
もうやるしかない。
ソフトフィルムに入れてある紙を一枚ずつ抜き出しはじめた。
抜き出しては次のフィルム。
また抜き出しては次のフィルム。
抜き出しながら、作っていた当時のことを思い出した。
よくこんな手間をかけていたもんだなって。
フィルム状の袋に、一枚一枚、チマチマと差し込む作業も相当なもの。
しかも6冊も。
1冊の半分も終わらないうちに嫌気がさしてきた。
乾燥して指先がカサカサな上、紙とフィルムが摩擦でくっついてなかなか取り出せない。
廊下でしゃがみ込んでしていたから足が痛くなってきて、リビングに移って作業を再開した。
ため息が出た…。
これはしんどいぞ。
スッと取り出せたとしてもホルダーには40ポケットもある。
見事なまでにみっちりと、全部のページにレシピの紙が入っている。
唯一1冊だけ、半分くらい紙の入っていないページがあったのがせめてもの救いだった。
ふだんから紙の取り扱いには人一倍神経質になるわたしは、ノートに書いた文字を消しゴムで消すときにグチャっとなるとすごくイヤなたちで。
だから作る際に、ものすごく神経をすり減らして紙を入れていたにちがいない。
だけどもう捨てるんだから、フィルムがグチャっとなってもかまわない。
いや、グチャっとさせないといつまで経っても終わらないから、手早く取り出すコツがないものかと必死になって進めていた。
投げ出したくなってきた頃、午後のおやつに食べようと決めていたものがあったことを思い出した。
それを励みにチマチマと取り出し続けた。
6冊分、なんとか終了…。
1時間半も時間をつぶしてしまった。
ホルダーはすぐにでも捨てられる。
でも取り出した紙の山はどうしようか。
その山をごっそりと持ってゴミ箱に捨ててしまうのが何よりラク、とは思った。
だけど一度は作りたいと思った自分だけのレシピ集でもある。
取り出しているとき懐かしい記憶もよみがえってきて、20年以上経った今でも作りたいと思うレシピはいくつもあって。
その山をゴミと化してしまうのは、取り出しに要した時間を考えたら気が引けた。
やっぱり気になるレシピはまだ残しておきたい。
一旦おやつ休憩を挟んだ。
満足して気持ちも落ち着いたところで、最後にもう一踏ん張り。
紙の山を上から一枚ずつ、残したいものだけよけながらザーッと精査していった。
今の時代、スマートフォンの中に無限のレシピがある。
その中から作りたいものを見つければそれでいい。
大量に買い込んだ料理本なんて保管場所も要るし、捨てようとすれば手間がかかる。
その点アプリだったら2秒もあれば削除できてしまう。
でもデータに100%を求めたくはない。
なんだかんだ、わたしには紙のレシピが必要で。
捨てる手間がどれだけかかろうが、老眼鏡をかけないと見えない文字があろうが、やっぱり紙には紙の良さがある。
料理本はもう買わないでおこうと決めても、書店に行くと必ず料理本コーナーに足を運んでしまう。
そうして今も少しずつ増え続けているのが現状。
料理本が好きすぎて記事まで書いてしまったこともあったな。笑