昔、恋は情熱的なものだと思ってました。
昔書いたブログの記事を読んだ。
大学一年生の時に書いたやつだと思う。
それまで生粋の女子校生活を送ってきた。
女子校にいると、男役が出てくるのは自明の理なわけだけど、私はといえば、男役だった。
髪も短かったし、言葉遣いは雑だし、隣には美人の友人がじゃれついてきてたから当たり前みたいにエスコートしてたし。
男役は、業が深い。
女であることを認識しながら、女の正の感情を引き出していく。
男役は男になってはいけない。
役だから、素敵なエスコートを心がけるのが常だった。
さて、私は、大学は共学に行くことを決めていた。
心理士にはずっとなりたかったから、生身の男というのも知るべきだと思っていた。
当時は学校の先生か、塾の同級生くらいしか、男という存在はなかったもんだから、本当にウブだったと思う。
大学一年生。
期待に胸を膨らませ、私は大学デビューをするッと意気込んでいた。
まぁ、意気込みだけで終わった。
考えてみれば化粧など数えるほどしかやらなかったし、男役で居続けることがアイデンティティと疑わなかった私の衣装ダンスには、ズボンとシャツしか入っていなかった。
スカート?そんなものはない。
ブログには、こう、書いてあった。
「大学入ったらもっと女の子になろうと思ってたのだが」と言ったら
「それは…無理だと思う」と言われた。
そうだよねー。
ということで、情熱的な恋でもしないかぎり かんなづきは男前路線で行こうかと思ったのでした。
これを書いた半年後にツレピと付き合うわけなんだが、恋を経た現在の私は相変わらずマニッシュな格好が好みだし、言葉遣いだって雑の極みだ。
こないだ上司に
「そっすよね!うぃっす!」
って言ってたけど、お咎めはない。
情熱的な恋…………
じょうねつてきなこい…………???
なんやろ…………???
この時の私はきっと、恋は魔法だと思っていたのだろう。まぁ、お嬢ちゃんだこと。
なんでも変えてくれる、私のアイデンティティでさえも、ぐらぐらと崩れさせて、わたしはフェニックスのように生まれ変わってやるのよ、なんて思ってた、んだろう。覚えてないけど。
そもそも、私は男役である私が結構好きだった。故に、女の私は弱くて見せられるものではない、と思っていた。
私、女に囚われてたのね。
結局のところ、恋は、魔法ではなかった。
恋は、試行錯誤だった。
私は女であったし、ツレピは男であったわけだが、ぶっちゃけ男とか女とか関係なかった。
ツレピも男子校出身だったもんだから、本当に恋人という関係がわからなくって、毎日、どのような関係性でいるか話し合っていたと思う。
弱さはあって当然、という話をした。
価値観の齟齬は話し合いで妥協するところはしようと決めた。
付き合って3日目に、別れた後の約束をした。
「別れても、あなたは親友である」と、誓った。
言葉にすると、まぁ、情熱的ね。
でも、当時は至極冷静に話し合っていた。
「冷静と情熱の間」ってか???
ツレピに恋して、まぁ、良かったと思う。
化粧も下手なりに研究する余裕が出てきたし、スカートもノリノリで履ける。
私は私の弱さや強みを少しだけ認められるようになったと思う。
ツレピもそうだといいのだけれど、どう思ってるんだろうね。
この間、結婚記念に写真を撮ろうと話し合った。
ドレスを着る。今の私は刈り上げているからド派手なイヤリングをつけて、強い女のメイクをキメる。
ツレピはスーツを着込んで、ストーリー性高くポーズをキメる。
イカしたやつ、撮ってやんよ。