2023/01/05 友人の革靴を磨いて・・・
友人が遊びにきました。目的は僕が彼らの靴を磨くこと。最近履いていない靴を磨いてまた履きたいとか、晴れの場に備えて、足元を整えたいとか・・・各々目的は違いますが、目指す足元は同じ。
まずは1人目の靴。古着屋で買った茶色の靴。厳密にはバーガンディですね。個人的には非常に難しい色です。コーディネートで合わせるのもそうですが、バーガンディは、その色の中に、赤・青・茶色があると思っています。そのどこを際立たせるかで仕上がりが大きく変わります。
今回は赤を前に出したいとの依頼だったので、意識的に磨きました。とはいえ、クリームで赤を単純に塗ると変に浮いてしまうので、クリームは素直にバーガンディを。ワックスで依頼のニュアンスに近づけています。
この靴は古着屋で何年も前に一緒に選んだもので、それからほとんど履いていなかったので、型崩れも起こしており、革のコンディションも良くなかったので、状態回復を主眼におきました。固形のクリーナーで蝋分を落とし、栄養を含むクリーナーで栄養補給と水分のリムーブ、アニリンレザークリームで油分を、油性クリームでも追い込んでいます。結果的にガラスレザーが上品に光り、コードバンにも負けない艶が出ました。
次に2人目の靴。仕事でたくさん履いており、この1足を使っているようなので、革にクラックが。そのため、こちらは水分補給を1番大切にしています。デリケートクリームで潤いを与え、乳化性のクリームでさらにモチモチに仕上げました。こちらはシンプルな黒靴ですが、黒の中でもより黒くなるように、青みの強いクリーム補給と、ワックスも黒とネイビーを重ね塗りしています。
友人に仕上がりのイメージを尋ねた時、黒の優しくするか、より強く黒を出すかの2択を迫ったのですが、はじめはキョトンとされました。そうですよね。黒を細かく分解することは日頃あまり意識しないですよね。。
彼に関しては、サイズが少し合っていなかったのでアドバイスしています。足には骨全体の4分の1があるのでそれだけ健康にも大きく関わる話をしたら、大変驚いていました。健康にも関与できる靴磨きの奥深さは僕もまだまだ勉強中ですが、その一部を伝えることができたのはいい機会でした。今度、彼の革靴選びにもついていきたいなと勝手に画策しています。
結果的に大満足だったようで、帰り道、2人とも爪先を何度も見返して、嬉しそうにしていたのが印象的でした。僕もとても嬉しくなる瞬間です。
靴を磨くということは、とても手間で、服に例えるなら、アイロンがけ以上に面倒なことです。それでも、その手間をかけた先では、大きな感動と学びが待っています。人の認識や価値観を変えることはとても難しいですが、相手に大きな影響を与えることができるまたとない機会です。何より、僕自身が影響を受けているのだな。。。
物を大切にする。どんなに時間とお金をかけても、1つの物を長く使うことは、素敵なことです。色んなものが安く手に入る時代でも、1つの物を大切に使うことは大きなメリットがあります。それは、時間の経過でしか得られない心地よさです。
特に革靴は履くほどに自分の足に馴染みます。靴底や踵が擦り減ったらそこだけ交換できる靴も沢山あります。そうすると新品の真新しい靴では味わえない柔らかさと、いつまでも歩きたくなるような楽しさがあります。
万年筆にも同じことが言えますね。ある時、急に書くことのストレスが軽減され、とてもスルスルと手が、頭が動きます。これも書き続ける先で得られる気持ちよさです。
物を簡単に手離すと、この時間の経過でしか得られない気持ちよさを簡単に手離すことと同義だと考えています。そんなもったいないこと、僕にはとてもできません。
だから、長く使える上質なものを自分の財布に対して無理のないように選ぶことが必要で、それが骨の折れる作業なのですが、それも含めて楽しむ余裕は常に持ちたいですね。
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