乗り継ぎは人生の醍醐味
「おめでとう。これで一生安泰だね」
学生時代、大して勉強しなかったにも関わらず、バブルの余波にうまく乗っていわゆる優良企業への就職が決まった私に周りの大人がかけてくれた言葉です。
当時は終身雇用が当たり前で、事実、私も定年まで同じ会社で働く気でいました。いわば急行列車の指定席券をゲットした感覚です。
しかし、実際は根拠のない自惚れと身分不相応な好奇心に背中を押され、30代半ばを皮切りに4度の転職を経験しました。
ある時は特急に、ある時はローカル線に、そしてある時は乗り換えるべき電車がなかなか来ず、しょうがなしに次の駅まで自分で歩くしかなかったこともありました。
でも、結論として「勇気を出して最初の電車から降りてよかった」と心の底から思います。一定のペースで同じ景色を眺めるのではなく、いろんな風景を見ることができたからです。次の電車が来るまでの間、駅の構内を出て周辺を散策できたからです。
もはや手元に指定席券はありません。でも自分が見たい景色に出会った時、途中下車する勇気は手に入れることができました。立ち止まらないと知ることのなかった風景にも出会えました。
それはすごく贅沢なことだと感じています。