関西におけるアホの意味
唐突で恐縮ですが、ひとまず以下の状況を想像してみてください。
渋谷で高校生5人組が遊んでいました。
そこに、大阪から来た高校生5人組がこう声を掛けます。
「自分らどこから来たん?」
如何でしょう、主に関西と縁のない方にお伺いしたいのですが会話は成立しそうですか?
普通に解釈すると「僕たち私たちはどこから来たのでしょうか?」となりますので、声を掛けられる立場なら、ちょっと怖いです。
ところが、関西では「あなたたちはどこから来たの?」という意味ですから問題なく会話が成立します。
ようするに、関西人が言う『自分』は、『I』ではなく『YOU』なのです。
1)我は汝、汝は我
「なにさらすねん、ワレ!」
映画やドラマで、その筋の方が言いそうな台詞ですよね。
これは大阪弁、正確に言うと大阪南部の河内弁ですが、標準語に置き換えると「何をするんだい、君!」でしょう。
そして、漢字に直すとこうなります。「何さらすねん、我!」
つまり、関西での『自分(YOU)』は『ワレ』に由来するのではなかろうか?
その筋の人が使う言葉として広まってしまったため『ワレ』は、品でいうなら残念な事に下の方に位置づけられてしまいました。
そこで、これはいかん、という事で『ワレ』を『自分』という言葉に置き換えたのではないかと予想します。
そうしますと関西人が使う『自分(YOU)』は丁寧語、つまり敬語・・・いえ、何でもありません。
敬語の専門家、遠入先生に「敬語を侮辱するな」と叱られそうなので自重します。
2)アホですか?
言葉の定義が違えば会話が噛み合いませんが、「自分」の場合だとイザコザに発展する可能性は低いため、まだ許容範囲です。
ですが、人間関係を構築するうえで、致命傷になりかねない言葉もあります。
実は関西と関東(もしかすると関西以外の全域)では、『アホ』の意味が違うのです。
関西圏では、小学生から高校生くらいまでの男子なら日常会話の中で普通に『アホ』を連発します。男子と比較すれば、比率は低くなりますが女子でも使うのです。
「アホやこいつ」「知らんわアホ」こんな感じですね。言うなれば、接頭語、接尾語だと考えて差し支えありません。
イメージしにくいですか?それでは、kojuro先輩にご登場願いましょう。
たかお氏(テレビの名前)の処遇を巡るkojuro家の攻防を綴った記事です。たかお氏に明日はあるのか?運命やいかに。
そして、当該記事のコメント欄にてこうおっしゃっています。
私には、たかおの「もう少しがんばれるねん。」の声が、聞こえたような気がしたのです。
いったい何を言い出すのでしょうか、この方は・・・。どう考えても幻聴です。ありがとうございました。
このコメントに対して、誤解を恐れず率直な感想を返信するならこうなります。
「アホや、ほんまもんのアホや(笑)」
kojuroファンの皆様、すみません。ですが他意はないのです。
関西風に意訳すれば「よくそんな面白いコメントを思いつきますね。素晴らしいです」となります。
つまり、ここでの「アホ」は賞賛の言葉なのですよ。いや、詭弁でも冗談でもなく本当に。
とはいえ、関西人はアホ扱いされると喜ぶという意味ではありません。
褒め言葉として成立するかどうかは、話の展開次第です。くれぐれも勘違いなさいませんように。
3)不幸なすれ違い
ところで、僕は高校生まで関西で暮らし、大学生の頃は名古屋で過ごしました。
関西と名古屋で『アホ』の解釈が違うことなど理解しておりませんでしたので、それまで通り会話の中で連呼します。なにせ接頭語、接尾語ですからね。
すると、GWが始まる頃には、すっかり「関西から来た怖い人」認定されていました。もちろんボッチです。
講義中は問題ありませんが、昼食時にひとりぽつねんとご飯を食べるのは、なかなかのものでしたよ。
その後、誤解は解けたのですが、どうやら第一印象は思いのほか強力なものらしく、卒業する頃は「ちょっと怖い人」扱いだったように記憶しています。
そういうわけで、「関西ではアホの意味が異なる」ことをお互いに理解していると、不幸なすれ違いを減らす事ができるのではないかと考えた次第です。
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