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子どもを育てる時に知っておきたいことを思い出す:Part2 赤ちゃんが泣いた時こそにっこりと


どの親でも、子どもには最高の教育を施したいと思っているし、きっと素敵に成長してくれるのだろうと期待している。一方で、上手く育てられるのか、自分ではない誰かが上手に育てた方が子供のためかもしれないとも考える。子育ての指南書は読み切れないほどあるけれども、あなたの育児は最も正しい方法を選択しているとは誰も言ってくれない。この子は必ず素晴らしい人間になると保証してくれる人はいない。
子供への期待は親によって様々である。学力、人柄、カリスマ、将来性、運動能力、音楽の才能、芸術の才能、多種多様な秀でた能力、それとも、なんでもこなせる完璧超人か。

前回の記事では、「豊かな環境」で育てられたラットの方が、狭くて何もなく、仲間もおらず、社会的刺激もなく、感覚の経験もほとんどできないゲージに入れられた個体より脳が大きく、頭も良いことを記述した。これはなにも動物に限った事ではない。
子供が経験すること全てが脳を刺激し、脳のパターンを作り上げ、シナプスの結合を強くするという。シナプス間の適切な電気的刺激がなければ、使われない部分は生後1~2年で始まる“シナプスの刈り込み”によって衰えていく(もちろんこれは一部分のみで、脳は成熟し続けるが)。
幼少期に能力が決定する領域といえば、絶対音感や語学能力は分かりやすい例かもしれない。特に語学の部分では、赤ちゃんは大人よりも音を区別する力に優れており、多くの音を感知できるとされる。日本人はRとLの音を上手く区別できないといわれるが、赤ちゃんに限りそれができる。この例に限らず、他の言語圏の赤ちゃんもまた他の言語の音を区別できるそうだ。この外国語の音を区別できる能力は生後6ヶ月で衰え始め、生後10か月を過ぎると、日本の赤ちゃんもRとLの区別をすることが難しくなるという。つまり、母語である、子どもがよく聞いている言語の能力は伸び、感受性が上がっていくのに対し、母語にはない音を区別する力は徐々に消えていってしまうのだ。この能力の選別ともいえる経過は、必要な部分だけを残し、脳の機能をよりスマートにするために必要であるといえる。

極論では、赤ちゃんの脳はできるだけたくさんの異なる刺激を与える事で様々な部分を活性化させることができると考えられる。触覚、聴覚、味覚、視覚、嗅覚の5感に対し、幼少期からアプローチしておくことはその子の感覚を最大限に伸ばすために必要かもしれない。しかし、シナプスの刈り込みが脳をより効率よく働かせるために必要だとすると、すべてを鍛え上げようとするのは現実的ではないのかもしれない。

結局のところ、親が期待するように子供を育てることはできないが、やっておくべきだとはっきりと言えることは「触れ合い、見つめ合い、語りかけること」だ。これだけは断言できる。これは、能力だけでなく、愛着にも関係し、穏やかな相互交流を育む。「触れ合い、見つめ合い、語りかけること」は感覚刺激をともなった情緒的な交流であるが、この交流は、将来の精神的な安定や対人関係の基礎、人への基本的な信頼感を育む重要な要素にもなり得る。

親が緊張し不安を感じていると、赤ちゃんも不安になり泣く。つまり、赤ちゃんが泣いていることに親が緊張し、焦り、不安を感じていると、赤ちゃんもその不安を感じてさらに泣く。この悪循環が生まれると、五感に刺激を与えるどころか、「触れ合い、見つめ合い、語りかけること」すらも困難になるだろう。赤ちゃんを遠ざけておきたくなり、赤ちゃんの反応におびえ、できるだけ刺激を与えないようにするかもしれない。
この文章を書いていて最終的に思ったことは、赤ちゃんが泣いた時こそにっこり笑い、「触れ合い、見つめ合い、語りかけること」が役に立ちそうだということだろうか。親が安心すると子も安心する。五感に働きかけることで脳の活動を高めていることに加え、情緒的な交流としても素晴らしく、また赤ちゃんを泣き止ませる方法としても手軽で申し分ない。一石二(三?)鳥の良いことずくめだ。

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