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2409 今月のチャレンジ 「Penny」

毎月、新しいことに挑戦する私的新企画「今チャレ」。9月のお題は、ミニクルーザー「Penny」だ。

第4次スケボーブームである。ジョギングとボルダリングに次ぐ、第3のアクティビティとして、久しぶりにスケボーが自分の中で盛り上がっている。

どのくらいの盛り上がりかというと、仕事終わりのクルージングが楽しすぎて、禁酒に成功してしまったくらいである。酔っ払ってあんなもの乗れない。乗る気にもなれない。ただいま午前10時10分だが、今すぐにでも滑りに行きたい。だが、勤労中年としての立場もある。そんな抑えきれない衝動(リビドー)を文字で昇華しようとHHKBを叩いている

横乗り系の第1次ブームは、今を去ること20年前、初任地の長野県で訪れた。長野県もだいぶ広いのだが、当時、私は松本市、塩尻市、木曽市、南木曽町、王滝村といった自治体を担当していた。日々、「木曽高速」と呼ばれる国道19号をかっ飛ばして、色々な所をまわっていた。

長野県と言えば、スキーである。白馬村や軽井沢、志賀高原あたりが有名だが、木曽地域も様々なスキー場と温泉がそろっていた。木曽高速をちょっと行けば、そうしたスキー場で滑り放題だったのである。

余談だが、王滝村は村営のスキー場の経営に乗り出したものの、バブル崩壊とともに大赤字になり、私が赴任した頃の村財政は息も絶え絶えになっていた。

「夕張の次は王滝」と言われるレベルであったが、何とかしのぎきったと記憶している。「財政力指数」とか、「財政再建団体」とか、使わない言葉を覚えたのも、初任地のことであった。

御嶽スキー場は、パウダースノーと晴れた日の絶景が売りだったが、今はどうなっているのだろうか。久しぶりに滑りに行きたい。

さて、そんな環境だったため、仕事そっちのけで滑りまくった。独学でスノーボードをマスターして以降は、車にボードを乗せて、仕事の合間に木曽山中のスキー場に行き、一滑りして温泉に浸かるのが日課となった。年間80日くらいは滑ったんじゃないかな? 今でもボードとシューズは、その日に備えてしっかりと保管してある。これが第1次横乗りブームである。

その後は東京勤務となり、のんびりサボる暇などなくなった。競争社会に放り込まれ、日々ドタバタと空回っていた。職場で若手を見ると、「昔は自分もあんなだったなぁ」と初老らしい感慨に浸ってしまう。当時は満男くんだったが、いつの間にか寅さんの立場になってしまった。「青年、行け!」(寅次郎の休日)

さて、第2次横乗りブームが訪れたのは、札幌勤務時だった。2年間という短期間ながら、シーズンになる度にこちらも滑りまくった。札幌にはばんけいスキー場という市街地からほど近いスキー場があり、まだ小さかった長男と長女を連れて、ばんばん滑ったものである。長女はソリだったな。懐かしい。(ちなみに、北海道では、幼児の冬季の移動手段はソリ。路面の凍結でベビーカーが使えないので、ソリに乗せて引っ張るのがデフォルト。本当です)

そんな楽しい札幌勤務も2年で終わり、またしても東京でのハードデイズナイトがやってきた。空き時間も休日もほとんど無くなり、ボードに触れることのないまま数年が過ぎた。何とかならないものかと考えて、思いついたのがスケートボード、通称スケボーであった。

スケボーならば、雪が無くても滑れるし、手軽に遊べる。公園なら子どもも楽しめる。トリックをやるわけではないし、どちらかと言えばクルージングを楽しみたい。そう考えて、Penny(22㌅)をポチッた。2018年4月10日。第3次ブームの到来である。

ちょっと説明すると、Pennyはクルージング中心のスケボーである。通常のスケボーよりもかなり小さく、素材はプラスチック。弁当に入っている魚型の醤油差しのような形である。おとと型。

デッキは小さいが、ホイールは一般的なボードよりも大型で、タイヤ部分が柔らかい。そのため、走行中の音が抑えられている。オーリーなどのトリックもできないことはないようだが、そもそもの設計思想が異なるので、クルージング専用機と考える方が良いだろう。

動画を見る限り、みんないともたやすく操作している。だが、何事も見るのとやるのとでは大違いだ。スノボをやっているので何とかなるだろうと思ったら、重力を利用して斜面を滑るスノボと、慣性力を生かして平地を進むスケボーでは体の使い方が全く違った。

スノボーは、ある意味勝手に斜面を滑っていく。その分、止まるのが大変だが、最悪、尻餅をつけば前進は止まる。だが、スケボーは動き出すために足で地面を押さなければならない。スノボーが「立つ」→「滑る」の2段階だとすれば、スケボーは、「乗る」→「プッシュする」→「両足で乗る」→「滑る」の4段階である。

何より、スノボーと異なり、足が固定されていないため、バランスを崩すとデッキだけが前方、もしくは後方にかっ飛んでいく恐れがある。自分がこけてケガをするのは仕方無いが、いい年した大人がスケボーの操作をミスってよそ様をケガさせたら目も当てられない。

さらに、雪の上ならまだしも、コンクリートの上である。尻餅なんか付こうものなら大ケガ必至である。

そんなPennyの不安定性を補い、事故のリスクを軽減しようと購入したのが、HEXだ。

こちらもクルーズ専用で、安定性は抜群だ。後ろに進まないようにベアリングが取り付けられているため、つんのめってボードが後方の歩行者や自転車などを直撃する恐れもない。

極限までそぎ落とされたデッキもカッチョ良い。小さく軽いため持ち運びも苦にならない。設計思想を高いレベルで実現した製品だと思う。おとと型だのPennyに対して、こちらはカメムシ型。

ただ、安全性と爽快性、直進性と操作性というのはトレードオフの関係にある。安定性が高い分、左右への切り替えしなどの操作がいささか難しい。Pennyのピーキーな反応に慣れている分、HEXの安定性に戸惑う場面もあった。ここまでが、第3次ブームである。

その後、しばらくPennyもHEXも放置していたのだが、単身赴任を機にスケボー熱が再燃した。再燃どころか、第1次ブームに匹敵するくらいの燃え盛り方である。パリ五輪の日本人選手の活躍とか、某俳優のスケボー動画とか、ここ最近のスケボー界隈との盛り上がりとは全く関係なく、勝手にやってきたマイブーム(©みうらじゅん)である。

人通りの多い公道での走行は危険だし、混み合う道での走行は道交法76条で禁止されていることもあり(解釈は色々あるようだが)、仕事終わりに家の近所の小道をちょっと流すくらいにとどめている。これがめっぽう楽しい。

ジョギングとは違った体の使い方なので、普段使わない筋肉が刺激されているのを感じる。久しぶりの横乗り系に当初はおっかなびっくりだったが、すぐに慣れてスイスイと進めるようになった。自転車に乗れるようになったばかりは、きっとこんな感じだったのだろう。初老でもまだまだ楽しいことはあるのだ。できないことができるようになるというのは、人生の喜びの一つである。

思わぬ発見もあった。VANSの良さである。

これまでは、純粋にファッションアイテムとして愛用してきたが、「そう言えば、これは元々スケボー用だったな」と思い出し、試しにオーセンティックを履いて乗ってみたところ、ものすごいグリップ力に驚いた。正直、靴でここまで操作性が変わるとは思わなかった。底がゴム製でフラットなため、デッキにピタッと吸い付くのだ。カーブや段差への対応が格段に良くなり、クルージングが一層楽しくなった。

そうなると、欲が出てくるのが人間である。

Youtubeなどで動画を見ると、皆さんめっちゃ高速でアクロバティックな技を繰り出している。「そこまでやらんでも」と思う一方で、「いつかできるようになりたい」と思う自分もいる。

所有欲と同じで、成長したいという欲求もまた、人間を突き動かすのだ。

夜の公園とマイペニー。カエルのステッカーがお気に入り🐸









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