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「週刊金曜日」2024年2月2日号にセルバ・アルマダ『吹きさらう風』(宇野和美訳、松籟社)の書評を書きました。
その着飾らなさ。その文学としての頑強さ。その芸術的な誠実さ。僕はそれを完璧な小説と呼ぶのにためらわない。
今回の書評の末尾です。
この作品は、技術的に何か派手なことを試みているわけでもないし、大事件が用意されているのでもない。わずか140ページほどの小説には、神父と娘の乗った車が故障し、老齢の整備工とその助手に修繕してもらう、その数時間の邂逅が、アルゼンチンの郊外の風景をバックにただ描かれているだけ。
しかし、人間の真実を見つめる作者の眼力が、上のように評することを許す、そんな作品です。小説の原初的な可能性を高純度で抽出したような、なんだかすごい小説を読んだ気になりました。