「それでも日本人は戦争を選んだ」 読了

 読後の感想文 あ、文庫になってる(2016)。2009年発刊
 日本が行った戦争、日清戦争、日露戦争 第一次大戦、第二次大戦、について新しく公開された秘密文書なども集めて、日本政府の外交、海外政府の対応などを高校生への講義と質疑としてまとめてある。読みやすい。
 結論から。外交って大切。それぞれの国が連絡をとりながら、牽制したり協力したり、飴と鞭を持ってバランスを取っていると解る。戦争以前が重要で、開戦してしまうと勝っても負けても実質おしまい。後は成り行き全て消耗するまで終わらない。戦争に勝者無しなのだ。
 次に外交は国益を守るために行われているが国益とは何か。つまりは領土と貿易らしい。領土を侵されないこと。それと経済基盤の獲得。外貨を稼がないと国民は食えない。日本は特に何もないからエネルギーから肥料まで輸入に頼る。当時の輸出産品は生糸だったらしい。他に負けない品質と、想像だけど取り引きの信用、作法などもあったのだと思う。確実な仕入ルートと売り先の獲得。そのための外交の一部が戦争の脅威。国民の命はあまり重視されてい。国益のため命を差し出すのが国民の当たり前の周知の了解の役割なのだ。
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 私は歴史に疎く、年代が覚えられなくて苦労をした資質を持っている。この読了でもどこまで残っているか疑問である。で近年の戦争を見ていると、戦争の意義、始め方、終わり方、回避する方法を知りたいと思う。たまたま目について図書館で借りてみた。
 日清日露戦争第1次大戦までは、政治の駆け引きが色々と書いてあって外交の成果が伺える。この時代は西欧のあちこちで紛争や革命があった頃。また植民地のあり方が転換し問題になりかけた時代。ソ連(ロシア)やドイツ(ワイマール)の内紛に付け込んで、日本は中国、アジアの資源や解放された植民地を狙う。でも戦争は困るので、どこそこの治安を守るため派兵するけどこの町で止まるから、イギリスさん、アメリカさん参戦しないでね、とか中国のどこどこの利権を分けっこしようとか。国家間でうまくやっているのが伺える。第一次大戦では日ソ不可侵条約をこの時代に結んでいるのだけれど、破棄してソ連を攻めようか、などと内閣で相談している資料もあって、また利権を分けましょう、そのためにお金を貸してくださいとあちこちの国へ二股かけて約束を交わしたり、曖昧な条文で条約を交わし、国内への説明と国外への説明が違ったり、条約締結後に条文解釈のあれこれで揉めたりと、丁々発止の外交戦がうかがえて、国家間の要なのだなあと感じる。
 さて最後の章は第二次世界大戦だけども、これはやはり酷い。外交よりも陸軍海軍省の力が上回ったようで、ある意味めちゃくちゃな政策だと改めて。戦争中の暗号は、おおよそほとんどの国で傍受解読されていたようで、日本は中国、アメリカ、イギリスの通信を、他国は日本の暗号通信を解いていた。それらは文書記録として相互に残っていて、近年次々と新たなもの公開されている。国内でも天皇の回顧録などが新しく現れてきている。
 真珠湾奇襲のことは、日本の奇襲は知っていたけれど地理的や技術的な問題で失敗すると思っていたらしい。これはアメリカの誤算。日本の計画はいい加減でご存じのように派兵はしたけど補給計画がずさんで見込みが甘く、そもそも長期戦の想定がなかったと。アメリカの経済力も生産力も見込み違い。ドイツもイタリアも援護してくれない。官僚の多くがそれを承知していても軍部に抵抗できなかった国内情勢の悲劇。そして敗戦が確定的な終戦前1年で戦死者の90%を出すというカタストロフィー。戦況報告を嘘で固めて何を繕おうとしたのだろうか。特攻や戦艦大和の最後などは無駄死に増して虚しい。宮内庁というやや独立的な機関があって終戦が迎えられた。
 外交って大切だなあと。開戦は同時に敗戦と同じかもしれない。たとえ戦争に勝っても国民は喜べるのだろうか。相手が憎めないとしたら現代では疑問だ。
 武器購入よりも円借款だなあと思うのです。

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