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医師が知っておきたい介護サービス~入所系サービス~

介護サービスって知ってますか?
多くの医師は、介護サービスは苦手ですよね。
在宅医療の経験がなければ、分かりませんよね。
どの医療機関でも、ケアマネジャー、社会福祉士、訪問看護師ら多職種と話をするとき、知っておいた方がよい介護サービスがあります。
今回、基本的なところをまとめました。

厚生労働省が作成しているHPも一緒に参照ください。

1.介護老人福祉施設(=特養)

<特徴>
通称、「特養」。(特養=特別養護老人ホーム
常時介護を必要とする人が生活する場所。
食事・排泄・入浴など日常生活上の介護、機能訓練やレクリエーション、健康管理、療養上の世話などの生活支援を提供する施設。
「リハビリなし、住まう場所」というイメージ

<対象者>
原則、要介護3以上
要介護1または2の方で下記の例の場合も対象になる
例)認知症や知的障害、精神障害で日常生活に支障をきたす
  家族等から深刻な虐待が疑われ、安全の確保が困難
  単身や同居家族が介護困難などの理由で十分な支援が受けられない

<利用負担>
施設サービス費+居住費・食費+日常生活費など

<その他>
・4人部屋の多床室が中心の「従来型」と個室で構成される「ユニット型」がある。
・入居者の待機が多い。入所するまで他の施設を利用していることが多い。
夜間は医師や看護師の配置義務がないので、夜間帯に医療管理が必要な人は入所困難。また、夜間帯に医学的介入が必要になった場合(発熱時、血圧低下時、酸素化低下時など)は、救急外来へ搬送される。
・胃瘻などの経管栄養は看護師配置人数の兼ね合いから●人までと決められていることが多い。

「また、あの施設(特養)から救急搬送されてきたよ」と意味深な言葉が漏れる医療者がいます。介護老人福祉施設(特養)には医療者の配置義務はありませんので、医学的に問題が発生した場合、医療機関に搬送されるのは当然です。

2.介護老人保健施設(=老健)

<特徴>
通称、「老健」。
食事・排泄・入浴など日常生活上の介護を入所・通所などの人に行いながら自立を支援し、理学療法士や作業療法士らによるリハビリテーションを行う。在宅復帰を支援する施設である。
「リハビリして自宅を目指すため施設」というイメージ。

特養と老健の最大の違いがココ。
リハビリをして自宅を目指す場所が老健になります。病院でなくてもいいけど、家で過ごすにはもう少しリハビリが必要、という場合に老健が選択肢に挙がります。

<対象者>
入所は要介護1以上

<利用負担>
施設サービス費+居住費・食費+日常生活費など

<その他>
・医師、看護師は常勤である。ほとんどの老健では夜勤看護師が1人配置している。
・施設に配置されている医師が健康管理を行うため、原則、入所中は病院受診できない。受診する際は、施設に配置している医師の紹介状が必要。
・利用形態は、通常の入所のほか、通所(=デイケア)短期入所(=ショートステイ)がある。
・自宅に帰るまでの一次利用が本来の機能であるため、3か月程度が入所期間の目安として設定される。ケアプランの評価に沿って退所準備を進める。ほとんどの場合、長期入所は困難である。

3.介護医療院

<特徴>
長期療養が必要な要介護者の生活支援を目的とした施設。医療依存度が高くても利用可能。

<対象>
要介護1以上

<利用負担>
施設サービス費+居住費・食費+日常生活費など

<その他>
・介護医療院への転院は、在宅復帰率にカウントされる。(介護医療院は自宅と同等の居住系介護施設への退院としてカウントされる)

4.認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

<特徴>
認知症の人が少人数で職員と共に共同生活をする施設。

<対象>
認知症の診断を受けている要支援2以上の方
原則、施設のある市区町村の市民のみ利用が可能

<利用負担>
施設サービス費+居住費・食費+日常生活費など

<その他>
利用者とスタッフが共同で食事の準備、掃除、洗濯などを行いながら日常生活を営む。
・医師や看護師の配置は必須ではない。医療行為を必要とする人は各施設の確認が必要。
介護度が上がると退所になることもある。

5.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

<特徴>
高齢者単身・夫婦が安心して居住できる賃貸型の住宅。

<対象>
60歳以上かつ要介護1以上

<その他>
・高齢者の居住の安全確保に関する法律による、国土交通省・厚生労働省の共管施設。
・安否確認、生活相談は必須のサービス。食事提供や入浴などの介護、調理などの家事などのサービスの提供は任意。施設ごとに内容が異なる。
・介護サービスが必要な場合は、自宅と同じで介護保険サービスを利用する。
・自身で生活ができない、つまり、介護度が高くなれば、退所する必要がある。

6.有料老人ホーム

<特徴>
食事・排泄・入浴などの介護、健康管理やその他の日常生活上のサービスを提供する施設。介護型、住宅型、健康型の3種類に分類。

⑴介護型:一般型と外部サービス利用型
一般型:特定施設入居者生活介護の指定を受けて、施設職員から介護を受けながら生活。通称、介護付き有料老人ホームのこと。
外部サービス利用型:介護が必要となった場合、各ホームが委託する外部のサービス事業所と入居者自身が契約して、介護保険サービスの提供を受ける。
⑵住宅型
食事、生活支援などのサービスがついている。
介護が必要となった場合、入居者の希望に応じて、地域の訪問介護などの介護サービスを利用しながらホームでの生活を継続することが可能。
⑶健康型
食事などのサービスがついている。
介護が必要となった場合は、退去が必要。

<対象>
60歳以上

<その他>
・費用は、割と高い。各施設で料金設定が異なる。
・施設数は多いので、各施設の違いを把握することが難しい。

最後に

最低でも特養と老健の違いは記憶しておいた方が、多職種との会話がかみ合って意味のある話し合いになります。上記の内容の他にも、養護老人ホーム、軽費老人ホームがありますが、その都度、医療社会福祉士に相談しましょう。

参考図書

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医師のための介護・福祉のイロハ〜主治医意見書のポイント、制度・サービスの基本から意外と知らない多職種連携のあれこれまで

医療現場で働く医師にとって手元にほしいガイドブックです。この本は、介護・福祉に関する基本的な知識から、介護サービスの内容も含め記載されています。

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