見出し画像

医療者のためのシステム思考

医療現場でも、様々な問題が複雑に絡み連鎖的に起こる戦場のような場所です。患者の治療やケアを行う際には、一つの問題が解決されたと思ったら、次の問題が発生するという連続した状況に直面することも少なくありません。そんな中で役立つのが「システム思考」です。


1.システム思考

目の前にある事象だけを見て対処するのではなく、問題が起きている大きな因果の構造をとらえ、効果的な介入点を見つけ変革するためのアプローチです。これは、複雑に因果の絡み合った問題を解決するときに威力を発揮します。
原則は、目の前の問題を「いきなり取り組まない」ことです。レバレッジポイントは問題から離れた場所にあると考えられています。レバレッジポイントとは、小さな力で大きな成果を生む介入点です。

2.システム思考:ループ図

システム思考の時は、「ループ図」を書くことで全体像を視覚化できます。ループ図には大きく分けて2つあります。1つは自己強化型ループです。好循環もしくは悪循環をして強化していくことになります。もう1つはバランス型ループです。プラスの効果とマイナスの効果が互いに打ち消し合って安定を保ちます。

ループ図の例

書き方
・変数同士の因果関係を、「原因」→「結果」となるように矢印で結ぶ
・原因と結果の変数が同じ動きであれば「同」、異なる動きであれば「逆」と記載する。
 同を「+」、逆を「―」と記載することもある。
・自己強化型ループは「逆」が0個または偶数個ある。
・バランス型ループは「逆」が奇数個ある。

ループ図:看護師は大変なんです!

3.システム思考で得られること

問題解決をするときに、「人」に注目が集まることがあります。問題を起こした「人」を排除すれば問題が解決するわけではありません。別の誰かが問題を起こす可能性があります。システム思考を用いることで「犯人捜し」をしなくて済みます。システムに注目するので、解決策がどこに作用しているのか、解決策の効果が得られているのか、別の解決策を立てられないか、という全体像を俯瞰することが可能になります。

4.参考図書

なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方

読みやすいです。気楽に読めます。そして、システム思考がするっと理解できます。もちろん問題解決のプロフェッショナルを目指す人にもgoodな一冊です。日常の小さな力を使って大きな成果を上げるためのシステム思考のテクニックを、具体的な事例とともに解説しており、読み進めるうちに、なぜあの人の解決策が常に成功するのか、理解できます。

学習する組織――システム思考で未来を創造する

全ての人に向けて、システム思考を取り入れた組織の運営方法をわかりやすく解説しています。組織が継続的に学び、変革を起こす力を持つための具体的な手法や考え方が紹介されており、日々の業務やチームの管理に即応用可能です。実際の事例を交えた豊富な内容は、理論だけでなく実践的な知識も得られます。

「世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方」

この本は、現代の医療現場で直面する複雑な問題をシステムとして捉え、その本質を理解するためのアプローチを分かりやすく記載しています。医療現場の日々の業務で効率的かつ効果的な問題解決能力を身につけることが可能になります。さらに、システム思考を実践することで、患者のケアの質を向上させ、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能になります。

システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」

この本では、システム思考とデザイン思考を融合させたアプローチで、革新的なアイデアを生み出し、実現する方法を詳細に解説しています。慶應システムデザイン・マネジメント研究科の実績に基づく内容は、単なる理論ではなく、実践的なテクニックや成功事例が豊富に含まれています。16の具体的な技法や実際の活用事例を通じてイノベーションの創出を詳しく説明しています。


いいなと思ったら応援しよう!