アートもビジネスも抱きしめて。私がマジで好きなメルヴィン・ヴァン・ピーブルズとその息子の話
今年の9月ごろ、映画監督のメルヴィン・ヴァン・ピーブルズが亡くなった。
私は彼が1971年に撮った「スウィート・スウィート・バック」という映画が好きで、10代の頃にカルト映画っぽいのにハマっていた時にレンタルビデオでよく観た。
彼はアメリカの黒人の映画監督で、いわゆる「ブラックスプロイテーション(黒人による黒人のための映画)」というジャンルの火付け役になった偉人である。
メルヴィン・ヴァン・ピーブルズに関する話で、とても好きなエピソードがある。
メルヴィンにはマリオという息子がいる。
マリオは高校生を卒業したらアートスクールに進学したいと、父メルヴィンに相談した。すると、メルヴィンは息子にこう言ったという。
「お前はビジネスや経済を学ぶべきだ。アートはもう持ってるだろ。」
やべぇ、カッコいい。カッコよすぎである。
そして、マリオはコロンビア大学の経済学部で学ぶことになる。
マリオ・ヴァン・ピーブルズ。ご存じの方も少しはいらっしゃるだろうか。彼はその後、1993年にキャストがほとんど黒人の西部劇という異色の名作映画「黒豹のバラード」を監督し主演も務めることになる。
アートはもうお前の中にあるだろ。
このメッセージはとても素敵である。
「アートなんて言ってないで、ビジネスを勉強しろ」
というようなニュアンスでたしなめられたことなら、私も何度もある。よくある話だ。
私がこのメルヴィン&マリオ親子のエピソードで感動するのは、メルヴィンは「アート」と「ビジネス」を相対するものとしてとらえておらず、両方とも大事なものであり、両方持ってるとさらに強ええんだぞ、という認識だったという事。そしてその考えをそのまま息子に伝え、息子がそれに応えた結果、親父と同じような場所にたどり着いたという、なんかもうすごい美しい話。
この話とは逆に、例えばビジネスセンスがある子に対して「お前はアートを学べよ」というふうに導ける人もきっと世の中にはいるかもしれないですね。いてほしいね。
ビジネスもアートも両方大事な「コミュニケーション」。