澄ました顔のトプ画が欲しい
「紹介に使うので、自己紹介に使える自分の写真をください!」
そんな連絡が来た。
そんなものはない。なぜか。オタクかつ出歩かない人間は、自分だけが写っていて、さらにベストショットといえるほどの写真を撮らないし、撮られないし、そもそも撮ってくれと頼める人数で出かけることがないからだ。
昔、何人かで男が選ぶ最高の男を出会い系アプリで探す遊びをしていた。
出会い系アプリでモテるくらいの男なら、自分たちはそれの傾向を掴んで真似ることでそれっぽいことが出来るのではないか!?みたいなくだらなくてしょうもないキッカケだった気がする。
とりあえず全員がTinderをインストールして、諸々の登録を済まそうとすると、全員が同じところで二の足を踏んだ。
そう。使える自分だけが写っている写真が、なかった。
自分だけが写っているものも、ないことはない。
昨日も必死に探した。2年前くらいまでカメラロールを遡る。出てくるのは顔を真っ赤にして酒瓶を掲げる実質ツーショットしかなかった。
大急ぎで自撮りでもしようかと思って最新の写真にカメラロールを戻す最中、この前の祇園祭に行ったときに着ていた浴衣のピンショットが見つかった。
耐えた。耐えたけど、浴衣の自分の写真がインターン先の紹介で使われるのはそれはそれでどうなのか。
まぁ、友達が送ってくれた自分の写真は絶景を背にジョジョ立ちやコブラ立ちをしているものや、切り分けた生ハムを詰めたタッパーを両手で持ちながら生産者ツラをしているものしかない。
だからネタは今求めちゃいないって言ってるやん??そんなことを言いつつ、目線の入った自分のネタにもなるか微妙な写真はお蔵入りとなった。
SNSのトプ画は、Twitterは生牡蠣、LINEは画像、Facebookは何年前かの自分の後ろ姿。インスタのトプ画なんて何年写真を変えていないのかも分からない。
そう。自分がメインで写っていて、さらにイケてるものをトプ画に使うことがこれまでになかった。
そして、そもそも自分の写真を投稿するような生活を送っていなかった。
頻繁に自分だけのピンショットを撮ってくれと言ってくる友達がいる。
インスタにでもあげるんかねぇと思いながら「はいよ〜」とぱしゃぱしゃ撮っていたけれど、昨日初めてその理由がわかった。
あいつはトプ画が欲しかったんだ。それも最新のトプ画が欲しかった。やっと意味がわかった。
写真がそこまで好きじゃなかった。写真映えするような見た目をしていないと思っていたし、そもそも写真を撮るような文化ではなかった。
これからはそこそこ頻繁に自分の写真を撮ってもらうことにしよう。そう決めた。強く。
とにかく今は、別に悪くはないけど浴衣で半目で笑っている自分の写真が恥ずかしい。
次に誰かに写真を撮ってもらうのはいつになるのだろうか。
直近だとこれまた友達と飲みに行って、そこからサウナに入りに行く日しかそんなイベントがない。
また酒瓶を掲げてツーショットをかます自分が撮られる未来しか見えない。困った。
よくピシッと決まっている写真をトプ画に設定している人は、どこでそんな写真を撮っているのだろうか。教えてもらいたい。
とりあえず早急に自分のそれっぽい写真を撮ってもらうことにしよう。そう決めた。