アンドリーセン・ホロウィッツのAmerican Dynamism Fundが技キャピタリスト育成講座を創設
かつて、というか10年前まで、ベンチャーキャピタル及びテクノロジー系のスタートアップは権力を持つ為政者に対する挑戦者であった。
明確な法律やルールが出来ていない領域で事業を展開し、民意(顧客のニーズ)を味方につけ、その後の法律やルール作りを主導していた。
創業当時のUberは未だライドシェアに関するルール、ドライバーを個人事業主とみなすべきか社員と明確なルールがない中で事業を開始し、その後国によるルール作りの段階で影響力を行使していった。
自動運転のWaymoも同様に、自動運転が公道を走る際の明確なルールや法規制が定められていない段階から行動で走らせ、その後の国による法規制の誠意に影響力を及ぼしていた。
こうしたスタートアップに資金を供給するベンチャーキャピタリストも、社会で明確なルール定められていない事業領域にビジネスの商機を見出し、支援を行う立場であった。
ベンチャーキャピタルやテクノロジー系スタートアップにとって、為政者とは従順に従うような存在ではなく、むしろ積極的に影響力を行使していく存在であった。
それから10年。
当時(2016年頃)はまだ新興VCであったアンドリーセン・ホロウィッツも今となっては十分成熟したビッグプレイヤーとなり、国家権力との向き合い方も変わった。
自分達やテクノロジー企業にとって有益になるよう国家権力に対して働きかけを行うのではなく、逆に国家権力(米国)の国益に資するスタートアップを発掘し投資する”American Dynamism Fund”を2023年に立ち上げたのである。
ここ最近、かつてないほど国や政治が民間企業の活動に影響力を及ぼし始めている気がする。米国と中国のデカップリングに伴う半導体関連尾サプライチェーンの再編、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したエネルギー危機とその後に続く石油・LNG輸出先の変更。
こうした時代の流れにアンドリーセン・ホロウィッツも乗った上で上述のファンドを立ち上げたのだろう。時代は変わった。
(以下、冒頭の記事の参考和訳)
アンドリーセン・ホロウィッツ(以下、a16z)のアメリカン・ダイナミズム・ファンドは、優秀なエンジニアや技術者にベンチャー投資を紹介することを目的としたフェローシップ・プログラムを新設した。
アメリカン・ダイナミズム・ファンドは、製造業、ロボット工学、宇宙、防衛などのハード・テクノロジー分野で、国の関心を集める企業を支援することを目的として2023年に設立された。ファンドの規模は約6億ドルである。
12ヶ月のアメリカン・ダイナミズム・エンジニアリング・フェロー・プログラムは、3人程度の技術者をベンチャーキャピタリスト育成講座に参加させるもので、フェローは1年間、ベンチャー投資について学び、投資の可能性を評価し、ファンドのポートフォリオ企業で働く。プログラム終了後、フェローは投資先企業に就職したり、あるいは自分で会社を興すこともできる。
アンドリーセン・ホロウィッツのパートナーであるデイビッド・ユーレビッチ氏は、最近のインタビューで次のように語っている。
「アンドリーセン・ホロウィッツには常に多くの技術者が在籍していますが、ここ数年、アンドリーセン・ホロウィッツに就職しようと積極的に動いているのは、どちらかというと金融や銀行関係の人たちです。しかし、私たちは、強力な技術者、製品について考え、将来について考える人々を本当に必要としています」。
しかし、このようなタイプの人は、「自分には投資やスタートアップの創業者は向いていない」と最初は思いが。ウレビッチによれば、このプログラムは理系人材がキャリア転換を模索するための体系的な方法として設立された。
「どうすれば理系人材を惹きつけられるかという問題は、私が長い間考えてきたことです。」と彼は言う。また、「キャピタリストの世界においては、最も目立たないような候補者が最も良い候補者であることがある」と彼は付け加えた。
本プログラムに選ばれたフェローは、ハードウェアとソフトウェアが交差する専門知識を持ち、アメリカン・ダイナミズムのミッションをより広範囲に拡大していく人材に育てる予定だ。
アメリカン・ダイナミズム・チームは、サンフランシスコかニューヨークのいずれかを拠点に、このフェローシップを年1回実施することを目指している。