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Venture Deals (18)ゾンビVCって何だ?

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「How Time Impacts VC Funds」のセッションを和訳し、かつ題名は直訳ではなく、「ゾンビVCとは?」としてみました(和訳についてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております。この写真がBrad Feld氏です)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。なお、Venture Dealsはベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になるシリコンバレーVCのバイブルなので、是非ご一読ください。

なお、本記事のトップ画像は米国で人気のMonster Truckのうちのひとつ、Zombieです。

(以下、講義和訳)

時間は我々に大きな影響を及ぼします。我々の時間はやがて尽きますが、それはベンチャーキャピタルにおいても同じです。それが今回のテーマです。

1. ゾンビVCとは

(クリント)いきなりだけど、ゾンビVCって何ですか

(ブラッド)ほとんどのVCは、3〜5年ごとに新しい資金を調達し、新たなファンドを立ち上げます。しかし、もし7年、8年、または9年もの間、新たなファンドを立ち上げていない場合、そのファンドはゾンビVCである可能性が高いです。それはまるでウォーキング・デッドのようで、完全に死に追いやることもできずに存続しているんです。

 VCのファンドというのは10年もしくはそれ以上の期間、存続するということを覚えておいてください。アーリーステージ企業への投資特化するファンドの場合、ファンド運用開始から4年目と5年目ぐらいに投資を行った場合、12年目または13年目を迎える時期にもまだ投資先企業がExitせずに存在している可能性があります。

VCファンドですでに投資用資金が尽きて新しい投資を行うことができない場合でも、既存投資先の管理のため、そのファンドは存続しています。これがゾンビファンドです。ファンド解散もできず、投資先のExitも完了しておらず、なおかつ新規投資をする資金もないまま、存続し続けるのです

実例を挙げましょう。1997年から2001年にかけて多くの新しいファンド運用会社が設立されましたが、これらの多くは2003年・2004年頃につまづき始め、 2005年に入ると明らかに苦戦するVCがいくつか出始めました。おそらく彼らが2000年、2001年(のドットコム・バブル崩壊時期)に組成したファンドが足を引っ張っていたのでしょう。
その後、2006年、2007年、2008年には、一部のVCは実態的にはビジネスを停止し、かつ新たなファンド組成にトライすることもやめてしまいました。彼らは既存投資先管理だけは行うものの、事実上の廃業に追い込まれたのです。こういうファンドをゾンビファンドと呼びます。

(クリント)もし私が起業家で、(VCファンドの)紹介を得るために一生懸命にネットワークを構築していたとしましょう。おそらく、ゾンビファンドはそのネットワーク構築対象先にもならない。そういうことですね?

(ブラッド)ゾンビファンドは資金がないためあなたの会社には投資することができません。もし新しい投資家を探すためのネットワーク構築であれば、その対象はゾンビファンドではありません。しかし、もしこのゾンビファンドがあなたの会社の既存投資家である場合、追加投資をすることが可能だ、ということもあります。既存投資先企業へのフォローオン投資という位置付けで、リザーブしておいた資金を投資できるかも知れません。

私自身の経験を話しましょう。私がパートナーと一緒にいたVCは、Mobius Venture Capitalという名前でした。 1997年、1999年、2000年にそれぞれ1つずつ、合計3つのファンドを組成しました。その後、2006年に至るまで、Mobiusのパートナーは会別のファンドを組成しないことを決めたため、Mobiusはゾンビ企業になりました。しかし、3つのファンドは依然として非常に活発であり、パートナーも残っていました。ジェイソンセスライアンも含まれ、Mobiusのファンドを積極的に管理・運用していました。

VCファンド運用はその後も継続し、2013年の始めにはコロラド州のボルダーにある投資先企業、Rally Softwareが上場を果たしました(Mobiusは2004年に当社に投資。なお、その後Rally Softwareは2015年にCA Technologiesにより$480Mで買収される)。したがってゾンビファンドと言えども、既存のポートフォリオ会社に積極的に関与し続けることで、バリューアップを実現することができます。まあ、新たな企業への投資はできませんが。

奇妙なことに、ゾンビファンドは多くの場合、すでに6年か7年も新規資金調達をしていないのにも関わらず、次のファンド組成に向けた調達をしているふりをずっとし続けるのです。彼らはまだまだ新規投資先に新規投資ができる立場にあるような振る舞いをし続けるので、起業家とのミーティングを行い、実際に、彼らはまだ新しい投資を行うことができる立場にあるふりをしているので、起業家とのミーティングを取り、実際にはどうやって自分たちのファンドから投資資金を捻り出すかについて語り出します。そんな資金はおそらく残っていないのに。。

こうした投資家に起業家の皆さんが出会うケースは滅多にないかも知れませんが、こうしたゾンビファンドが市場から退出せずとどまっているという事実は認識しておいた方がよいと思われます。

2. あなたの話しているVCがゾンビかそうではないかを見分けるには

(クリント)起業家がVCと話している場合、ゾンビファンドだと見抜くにはどうすればよいですか?彼らが本当に新規投資を行っているVCなのかどうか、それともゾンビなのか、どうやったらわかるのでしょう?

(ブラッド)ゾンビファンドは簡単に特定できます。特に今日では、Crunchbaseまたはその他のデータベースを使い、該当するVCを検索し最後に誰がいつ投資を行ったのかを調べてみましょう。もし過去6か月から12か月以内にそのVCの誰かが投資を行った場合、そのファンドはおそらくアクティブに新規投資を行っています。もし最後に行った投資から既に3年経過している場合、彼らはおそらく新規投資活動をしていません。ゾンビです。

次に、あなたの知人のつてを辿って、そのVCと一緒に働いた人々を見つけるてみてください。そしてそのVCに今、何が起こっているのか確認してみてください。躊躇せず、「最近行った投資にはどのようなものがありますか?」などいろいろ質問してみてください。 「2009年にこんな大きなディールに投資しましたよ」などといった回答が返ってくるようでしたらそれは間違いなくレッドフラグです。残念ながらそのキャピタリストはあなたの会社に投資するために動き出す見込みは少ないでしょう。

(クリント)投資を受けた当時は良さそうなVCがあったとしましょう。ところがその後、そのVCはゾンビファンドになりました。すでに投資を受けている起業家としては、このファンドが起業家の会社をサポートする能力について、心配する必要はあるのでしょうか?

(ブラッド)まず、そのVCと直接話し合い、彼らの投資先に対する支援姿勢を明確に理解しておく必要があります。彼らがあなたの会社に対してできること・できないことを直接話し合ってみましょう。ゾンビファンドとなってしまった今、今後彼らはどう行動していこうとしているのか、彼らに確認することは非常に重要です。ゾンビファンドのキャピタリストが取締役会に席を持っている場合、その人物はこれからも取締役会のメンバーに就任し続けるのか、またはその人物は既に転職活動をしていて取締役会メンバーから離れる予定なのか、理解しておきましょう。

また、そのファンドが将来、あなたの会社の追加資金調達ニーズに利用できるリザーブをまだ持っているのかどうか、確認しましょう。

多くの場合、VCがゾンビファンドになると、廃業するまでのプロセスはスローダウンします。しかし、だいたいゾンビファンドになったあたりから、パートナーたちは次の人生に向け、ファンドを辞めていきます。

(クリント)聴講者から何か質問はありますか?

(学生)資金余力がないにも関わらず、起業家との面談をしたがるゾンビファンドがいるとのことですが、彼らのモチベーションは何なのでしょう?単なるエゴなのか、それとも何かしら悪意をもって起業家に接触してきているのか、それとも将来に向けて新規投資の話は継続しておきたいだけなのか、、、

(ブラッド)悪意はないと思います。ただ、自分たちには新規投資能力がないにもかかわらず、その現実を直視せず、今までやってきた活動を続けているだけというケースがほとんどかと思います。起業家と合い、新しい情報を仕入れ、投資機会を発掘するというフローの中に留まりたいだけなのだと思います。その手段として、起業家とのミーティングを設定してくるのです。

ただ、ゾンビVCが実際にできることは2つしかありません。1つは既存ポートフォリオ企業のバリューアップに注力すること、もう1つは新規投資が継続できるよう、次のファンド組成に向け注力することです。

そうだ、ゾンビVCになっても起業家とのミーティングを継続しているケースはありました。新しい会社の下でファンドを新たに立ち上げようとしていて、既存ファンドでは投資をやめてしまった場合です。私の個人的な経験ですが、 2006年から2007年の間に、Mobius Venturesは新たな投資を行わないと決定した後、即座に2007年にFoundry Groupの設立を決めました。Foundry Groupが資金調達する前に、私は起業家たちと会い、自分の手金で30社程度にエンジェル投資を行いました。私のパートナーも同様、Mobiusでの新規投資を凍結して以降、Foundry Groupが立ち上がるまでの間はエンジェル投資を行いました。新旧ファンドの終了・開始のタイムラグがあったとは言え、起業家との接点を、エンジェル投資を通じて保ち続けていたのです。

3. おまけ:そもそもなぜVCの標準的な運用期間は10年なのか?

(学生)なぜ10年がVCファンドの標準的な運用期間なのですか?
(ブラッド)10年というのは神がモーセに伝えられた11番目の戒めで定められた、標準的な時間軸だからです。すいません、冗談です。それは銀行持株会社法によるものです。同法ではファンド存続期間を10年に制限しています(注:Bank Holding Company Actを実際に見ているとファンドのDuration ha最大15年と記載されているので、この講義後、法改正がなされたものと思われます。この発言の真偽については原典ご確認よろしくお願いします)。

しかし興味深いことに、この法律を回避する方法がいくつかあったため、それを回避する方法がいくつかあったので、10年の期限到来後であっても多くのファンドが毎年解散期限を自動的に延長していきました。中にはファンド運用期間17年目、18年目、19年目なんていうファンドも実際に存在します。

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