Baasモデルの先駆け、Cross Riverによる大型調達
※本記事の続編はこちらです。https://note.com/nagaoma13/n/n3f2ddeba7412
久しぶりにa16zのサイトを見て、少し前にCross Riverがa16zから追加出資を行ったことを知った。今回のラウンド(シリーズD)は総額$620MMの大型ラウンドで、他にはTロウ・プライスといった大手機関投資家も参加していたとのこと。
2016年から2017年頃、マネーフォワードの瀧さんのブログ「カンザスの小さな銀行の話」のCBWとMovenの事例を読んで初めてBaas(Banking as a Service)というビジネスモデルを知り、その事業の拡張性から「日本の銀行、特に地方にしか実店舗を持っていない地銀はこのビジネスモデルで他県に進出し、オンラインバンキングサービスを通じて事業を拡張できるんじゃないか」と夢中になり、同じようなビジネスモデル米銀を調査していたところ、a16zから出資を受けているニュージャージ州の地銀、Cross Riverのことを知った。
当時はBaasに加え、金融サービスのBundling/Unbundling/Rebundlig(※)の進化がしきりに説かれており、Cross Riverなどはまさにこのストーリーの最後のRebundlingの場所に位置する「未来の銀行」の位置付けだった(以下図は当時のVCカンファレンスなどの講演をもとに過去作成したものです)。
※大手金融機関によって束ねられている一つ一つの金融サービスは、より優れたサービスを提供するフィンテックプレイヤーの登場によって顧客が奪われる(Unbundling)。その後、一つ一つサービス毎に分散してしまった個々のフィンテックサービスは、一つのバンキングアプリの元で再び束ねられる(Rebundling)。

今振り返ってみれば、既存大手のBofAやJP Morgan Chase、Wells Fargoなどを脅かすほどの新興フィンテック勢におけるRebundlingはここ数年では起きなかった。だが、日本とは違い米国リテール金融市場は巨大だし、顧客が抱えるペインポイントも多い。金融サービス毎に洗練されたフィンテックプレイヤーと組み顧客に高品質サービスを提供するCross Riverの成長を長い目で見守ってみたい。
<Cross River概要>

・2008年創業。連邦預金保険公社から金融業のライセンスを取得する地銀。
・本社所在地:Teaneck, New Jersey
・創業者:Gilles Gade 。Barclays Capital, Bear Sterns、その他投資銀行でキャリアを積んだ人物。
・複数の有力フィンテック企業に勘定系システム等のバックエンドイン
フラを提供するスタートアップ。フィンテック(主なパートナー企業:Affirm、Upstart、Wise、Stripe、Mastercard)に対してAPIを通じて勘定系システムを開放。これらのフィンテック企業のサービスをCross River Bankの顧客に提供している。
・スタートアップに対し決済システムなどのバンキングシステムを提供するいわゆる土管業に特化。バックエンドの金融サービスは当社が提供してくれるため、スタートアップは顧客獲得に注力ができる。
・マネタイズ方法:ローン、決済等の取引額のうち、0.2%から0.5%のフィーをフィンテックプレイヤーから収受(※)。
※2018年のWSJ記事に基づく情報なので、現在は異なっている可能性あり
・主な投資家:Andreessen Horowitz, Battery Ventures, Ribbit Capitalなどシコンバレー著名VC。