スタートアップが失敗する割合はどのくらいか/Union Square VenturesのFred Wilsonのブログより
CoinbaseやTwillio等の企業に対して創業間もない段階に投資を行った実績のある伝説のベンチャーキャピタリストFred Wilsonが、自身のブログの中で、彼が所属するUnion Square Venturesにおけるスタートアップ投資の実績を綴っていた。
彼の記憶によれば、これまで彼が40年間のスタートアップ投資を行ってきた上でのリターンの分布は、おおよそ以下のようなものであったらしい。
3分の1の投資先は良い成績(リターンをもたらしてくれた投資)
3分の1の投資先は、投資しなければよかったと思う程度の成績(失敗とは言い切れないが、特にリターンをもたらさなかった投資)
3分の1投資先は価値がゼロになったもの
同じく、彼のブログの中ではアンドリーセン・ホロウィッツにおける成績も記載されており、説明ぶりは違うが、おおよそ上記と同じようなリターンの分布だったようだ。アンドリーセン・ホロウィッツの成績は以下の通りである。
投資先のうち10%は投資倍率が10倍以上の案件(非常に良い成績。いわゆるホームラン案件)
15%は投資倍率が3倍から10倍の案件(良い成績。二塁打、三塁打案件)
25%は投資倍率が1倍から3倍の案件(悪くはない成績。一塁打案件)
25%は投資倍率がゼロから1倍の案件(損失が出た失敗案件)
残り25%は投資倍率がゼロの案件(大失敗案件)
スタートアップ投資のうち、半分程度は失敗(投資倍率が1未満)に終わり、その損失を少数のホームラン案件や二塁打・三塁打案件で稼ぐ、という構図は過去40年間、スタートアップ投資で変わらない構図のようだ。
よく、ベンチャーキャピタルファンドにLP出資を行う投資家で、投資先の大半が減損に陥った際に「大変だ!」と騒いでファンドの年次総会などでファンドマネージャーに「今後どうするんだ」と詰問し出すLPがいるが(大抵は生保・損保。ちなみに銀行は同じことを思っているが皆の前では言わず個別に別のタイミングでファンドマネージャーに詰問する)、トップVCであるUnion Square Venturesやアンドリーセン・ホロウィッツでも50%程度は失敗に終わる案件だと思っておけば、冷静に対処できるのではないだろうか(注)。
注:ただし、Union Square Venturesもアンドリーセン・ホロウィッツも、どちらもアーリーステージでの投資(=スタートアップ致死率が高い段階での投資)を主とした上での、この成績だということは留意が必要である。つまり、もしミドル・レイターステージでの投資(=スタートアップ致死率はある程度低くなっている)が主であるファンドの場合、ここで挙げられた成績とは異なる分布になると思われる。