セコイア・キャピタルのファンドパフォーマンスについて
1972年に設立され、これまでApple、Cisco Systems、PayPayl、YouTube等のシリコンバレーの企業の黎明期に投資を行いその成長を支えてきた超名門ベンチャーキャピタルの一つ、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)。
そのファンドパフォーマンスについて詳細が明かされることは少ないが、この度その一端が明かされた記事を発見した。それが冒頭のBusiness Insiderの記事である。
本記事によれば、セコイア・キャピタルは過去5年で累計420億米ドル(約5兆8000億円)の資金をLP投資家に分配し、そのうち100億米ドル(約1兆4000億円)については2023年の1年間だけで分配を行なった、とのこと。
セコイア・キャピタルといえば、ここ数年は2022年11月に破綻したFTXへの投資の減損処理等、苦戦している印象をうけるニュースが多かったが、投資家に返すべき資金についてはきちんと返還を進めてきた模様だ。
尤も、きちんと投資家に資金を返還をしていることと、そのファンドに対する投資のリターンが上がっているかは全くの別問題である。
例えばとあるスタートアップに400億米ドルの出資をしていたがそのスタートアップが潰れてしまい、残余財産の分配金として100億米ドルしか回収できなかった場合、回収した分配金は100億米ドルだが、ファンドパフォーマンスは0.25倍(100億米ドル÷400億米ドル)である。この場合、潰れてしまっているのでDPI、TVPIともに0.25倍という失敗投資案件になる。
今回のセコイアの5年間の累計分配金額420億米ドル・2023年単年の分配金100億米ドルのもともとの出資金額がどのくらいだったのかは不明であり、ファンドパフォーマンスは計測可能だ。また、この420億米ドルや100億米ドルという数字も、セコイア・キャピタルが組成する複数のファンドの合計額である可能性もあり、果たしてどのファンドが好調・不調なのかの判断は難しい。
だが、冒頭の記事によれば、少なくともセコイア・キャピタルの2020 US Growth Fundに限定して言えば、そのファンドパフォーマンスは苦戦をしている模様だ。
この2020 US Growth FundにLP出資を行うテキサス州の機関投資家、Utimcoから入手したデータによれば、2023年8月時点での同ファンドの運用成績は以下の通りだ。
・出資済の金額:1億米ドル(約140億円)
・評価額:82百万米ドル(約115億円)
・回収済の金額:12百万米ドル(20億円)
・IRR:マイナス7.07%
上記の数字を前提とすれば、今の所DPIは0.12倍、TVPIは0.96倍ということになる。この運用成績がほぼそのまま2020 US Growth Fundの運用成績に等しいとすれば、セコイアは運用を開始して4年程度経った今でもファンドリターンをプラスにできず苦戦していることになる。
もちろんファンドによる運用は長期戦であり、通常は10年経過しないと最終的な勝ち負けは判断がつかないが、今回の記事ではあのセコイア・キャピタルでさえも2022年以降の市況の悪化でファンドパフォーマンスを上げることに苦戦していることが浮き彫りとなった。
市場に勝てないのはプロ投資家・アマ投資家共に共通の事実と言えそうである。
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