イスラエルのここ最近のスタートアップ投資事情について
イスラエル経済においてテクノロジー産業は重要な役割を果たしており、雇用の12%、輸出の半分以上、所得税の25%、GDPの20%近くを占めている。そして、そのテクノロジー産業を支えているのが絶えず輩出されるスタートアップ企業である。
かかるイスラエルのテクノロジー企業に対する民間投資が足元減少している。同分野に対する投資額が2022年の約190億米ドルから2023年は100億ドル米ドルに減少した、と予測されているとのこと。
イスラエルのテクノロジー企業に再び活力を与え、また同国が世界のテクノロジーハブとしての地位を確立するため、イスラエル政府が景気刺激策をこの度発表した。
景気刺激策には、①スタートアップに対するものと②ベンチャーキャピタルに対するものの2つが含まれている。
①スタートアップに対しては、民間の投資家と協業の上、資本へのアクセスが限られているアーリーステージの新興企業に年間5億シェケル(約132百万米ドル)以上を提供する。この構想は、テクノロジー分野に資金を投下することで新しいアイデアのおよびイノベーションの創出を企図している。対象となるスタートアップは、シード/プレ・シード/シリーズAラウンドの企業。
②ベンチャーキャピタルに対しては、イスラエルの企業や金融機関が地場のベンチャーキャピタルファンドに投資するインセンティブを与えることを目的としており、今後5年間で40億シェケル(1,056百万米ドル)以上が予算として配布される。
世界的な経済減速懸念(日米の株価は好調だが)、イスラエルの司法改革案やイスラエル・ハマス紛争に対する懸念により、海外からの投資は減少している。にもかかわらず、多国籍企業の88%が2024年にイスラエルでの事業を維持または拡大するとしている。
一方で投資家心理は依然として二分されており、多くの投資家が2024年はイスラエルのテクノロジー産業に対する投資は減少すると予測している。今回の施策がこうした投資家の悲観論を打破する起爆剤になるか注目である。