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2023年、米国スタートアップで評価額が下がったセクター、上がったセクター

Pitchbookの記事で、2022年対比で調達額・調達件数・バリュエーション中央値がセクター毎にどの程度変化したか、を示すデータがあったので以下の通りまとめておきたい(対象国:米国)。

調査対象となっているセクター全てにおいて、調達額・調達件数は前年対比で下がっている一方、バリュエーション中央値が上昇したセクターが2つある。それはアグリテックとAI・機械学習のセクターである。

アグリテックは足元の地政学上の不安の高まりも受けた食糧安全保障上の関心の高まりを受け、AI・機械学習はChatGPTを始めとする生成AIブームの後押しを受け、バリュエーションが僅かながら上昇したものと考えられる。

その他、注目したいセクターとしてはPalantir等に代表される防衛テックだろう。ロシア・ウクライナ情勢やガザ情勢、さらには台湾情勢を巡り、ここ数年で国家安全保障は非常に重要なテーマとなった。この課題解決に資するスタートアップには来年も注目である。

以下、主なセクターについて概要を記載していきたい。

<Eコマース>
2023年は資金調達額、件数、評価額のいずれも低調な結果となった。スタートアップたちは大手Eコマースの代表格・アマゾンの低価格競争に直面し、グーグル、フェイスブック、インスタグラム上でのマーケティングコストが上昇する中、苦戦するスタートアップが多かった。

<暗号資産・ブロックチェーン>
2022年後半のFTXが破綻してから、低調なセクターとなっている。しかし、最近のビットコインの上昇を受け、2024年に復調の兆しを見せる可能性がある。

<教育テック>
資金調達額、件数が減少したのみならず、評価額(の中央値)の減少幅は全セクターで最大である。コロナ禍中にブームとなったオンライン教育だが、その頃の熱狂がまた訪れると期待する投資家はほぼ皆無である。

<アグリテック>
VCから特に人気のある業種ではなかったものの、評価額の中央値は前年比で10%上昇した。

「人々は、我々が日々口にする食糧をグローバル・サプライチェーンに依存していることの重要性と問題に突如気づいたのだ(そしてそれが、アグリテックが2023年になって脚光を浴びた理由だ)」とTechstarsのCEOであるMaelle Gavet氏は語る。Gavet氏は、西側諸国が潜在的な食糧不足を懸念するようになったのは、第二次世界大戦以来のことかもしれない、とも付け加えている。

一方、「そもそもアグリテック開示されるディールが少なく、多くのダウンラウンドやフラットラウンドが省かれている可能性がある」との意見もあり、今回の数値の信憑性を鵜呑みにはできないだろう

<AI・機械学習>
Anthropic等の大型調達はあったものの、本セクターの調達額・件数は減少している。なぜか。ベンチャーキャピタリストを始めとする投資家は、リピーターの創業者やOpenAIやアルファベットのDeepMindの研究科学者が立ち上げた生成AIスタートアップに食指を伸ばしたものの、それは一部の企業に限られていたかだ。

<防衛テック>
長年、防衛テックを敬遠してきた投資家が、急にこのセクターの企業に集まり始めた。中国との技術競争、ウクライナやイスラエルでの戦争の中で、国家安全保障の重要性が改めて認識されるようになったからだ。AndrilやPalantirのような企業の成功は、国防総省の予算の大半を、ロッキード・マーチンやレイセオンのような従来の防衛企業大手ではなく、スタートアップでも獲得できる可能性があることを示した。

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