日本の米不足と価格高騰について、経験から考える
実は、米不足は今に始まったことではありません。
2023年、全国的に米不足が問題となり、私たちが普段食べるお米の価格がぐんぐん上がっています。特に北海道産の「ななつぼし」や秋田県産の「あきたこまち」など、人気銘柄のお米は値上がりが顕著です。食費が増えてちょっと痛いな、と思う方も多いでしょうが、ここで一歩引いて考えてみたいと思います。私が10年ほど農家で働いていた経験も交えながら、この米不足の背景と、今後どう向き合っていくべきかを一緒に考えてみましょう。
米不足の原因は何?
2023年の日本の米の生産量は661万トン。それに対して、需要は702万トンと、明らかに生産量が追いついていません。米が足りないという現実を、まずはしっかり理解する必要があります。
私も以前、農家で働いていたときに感じたのですが、米作りって本当に手間がかかります。長ネギやハウス栽培の作物をメインでやっていた私も、毎年、種まきや苗の植え付けの時期には米農家を手伝っていましたが、どれだけ大変な作業かは痛感しています。特に年を追うごとに、燃料や肥料の価格がどんどん上がり、米農家の負担も大きくなっています。
また、2018年に減反政策が廃止されてから、米の作付面積が自由になったのですが、ここに新たな問題が発生しました。米農家の高齢化が進み、後継者が見つからないことから、田んぼを辞めてしまう人が増えているのです。現に私が手伝っていた農家でも、「後継ぎがいなくて、もう少しで田んぼもやめようか」といった話をよく耳にしました。こうした状況が続く中で、米不足が深刻化するのも無理はありません。
農協の役割と直接取引の影響
もうひとつ、米不足や価格上昇に影響を与えているのが、農協と一部の業者の間で起きた価格競争です。農協は、米を農家から買い取り、私たち消費者に届けるための大きな役割を担っています。しかし、最近では農協を通さず、直接農家から米を買い付ける業者が増えてきました。これにより、農協は価格を引き上げざるを得なくなり、2024年産米の概算金は前年よりも2〜4割増しとなっています。
私が農業をしていたとき、農協の仕組みに関して、正直なところ「なんだかなぁ…」と感じることが多々ありました。たとえば、農協の倉庫が老朽化して修繕が必要になったとき、「段ボールの単価を1円上げれば倉庫の改築費用が賄える」なんて話を聞いたことがあります。1円って大した額じゃないと思うかもしれませんが、その「1円」が農家全体にどれほどの影響を与えるか、そういう現実を垣間見た経験でした。
農協の存在は重要ですが、今のようなシステムのままで本当に米農家が適正な収入を得られるのか? そこは大きな疑問です。農協に頼らざるを得ない部分も多いものの、農家が自分たちで直接販売することで、もう少し公正な取引が実現できるのではないかと感じます。
米農家の未来を支えるために
現在の米不足や価格上昇の問題を通して、長期的な視点で考えると、日本の米農業はもっと根本的な改革が必要だと思います。私が農業に関わってきた経験から見ても、米農家の多くが「年を重ねるたびにやることが増え、収入は増えない」という状況に直面しています。これは、ただの一時的な価格上昇ではなく、農業全体の構造的な問題だと感じます。
長期的には、外国産米の需要が増える可能性も高いです。特に、米の価格がこれ以上高くなると、コストを抑えるために外国産米を選ぶ家庭が増えてくるかもしれません。日本米にこだわる私たちにとっては、ちょっと寂しい未来に思えるかもしれませんが、現実的には避けられないかもしれません。
しかし、それでも私は、日本の米農家をもっと支えていくべきだと思います。米は私たちの主食であり、文化の一部です。だからこそ、米農家がしっかりと稼げる仕組みを作ることが必要です。たとえば、政府の支援や補助金だけに頼らず、消費者がもっと農家と直接つながれるようなプラットフォームができればいいな、と考えています。これまでにも、地元の農家さんと直に取引する機会がありましたが、やり取りを通じて感じたのは、直接つながることで農家さんの苦労が少しでも軽減されるということです。
これからの米作りを考える
米不足や価格高騰が続いていますが、これまでのお米が安すぎたのではないかと感じています。農家さんたちは、私たちが普段何気なく食べているお米を作るために、実に多くの時間と労力をかけています。彼らが適正に稼げるような仕組みが整えば、農業の未来も明るくなり、若い世代も米作りに興味を持つかもしれません。
一方で、消費者としては、少し我慢が必要な時期かもしれませんが、この価格高騰が、農業全体の健全な成長や競争につながるのなら、未来は決して暗くないと思います。農業を続けるのは簡単なことではないですが、応援していくことで、日本の豊かな食文化を守ることができるはずです。
これからも、おいしいお米を食べ続けるために、私たちもできる範囲で米農家さんを応援していきましょう!