はるばる来たで~博多
京都のとある山の上で、急に沖縄に行こうと思ったら、どうやって行こうか。
20数年前の昔話。
北海道から青春18きっぷをフル活用で旅した話。昨日までの記事はこちら。
京都のよくわからない山の上で旅仲間と語らいながら、急に沖縄へ行くことを思い立った。
普通なら飛行機しかありえないと思うのだけど、僕らには青春18きっぷの最後の1回が残されていた。
そして、もう一つ。
前日の夜は横浜までの近距離切符を買い、深夜0時過ぎに小田原から青春18きっぷを切ったことになっている。
つまり、この時点で、まだ有効であるのだ。
那覇行きのフェリーを調べると、いくつか候補があった。
大阪と神戸だったかな。毎日運航ではなく出航の曜日が決まっている。
かすかな記憶では、大阪は日程的に絶望的で、神戸に関しては、不可能ではないけど、2,3日待つ必要があった。
そこで柔軟に検索範囲を広げたが、名古屋、ましてや東京など、今から東に戻るというのは考えたくもない。徹夜で夜行に乗って来たばかりなのに。
そして浮上したのが、九州から船という案。
鹿児島まで移動するのは時間的に厳しかった。
「博多~那覇」の文字が飛び込んできた。
次の出航は?
明日の18:00。
ちょうど丸一日ある。なんとか移動できるんじゃない?って話。
青春18きっぷは、基本的に普通列車または快速までしかのれない。特急には乗れるけど、特急料金を別途支払う必要がある。
山陽をとにかく西へ。
分厚い時刻表をあれほど使い倒したのは、たぶん人生であの日が最後だろうな。
とにかく明日の夕方までに福岡へ行ける列車を時刻表で追ってみた。
数回の乗り換えで、時間的になんとかつながったんだ。
一同歓喜。
高校生クイズで難問を正解した3人組が、肩をたたきあって喜んでいる様子を想像してもらうとわかりやすい。
というわけで、博多発のフェリーに電話をして予約した。
そもそも、フェリーが満席だったら、話にならないからね。
予約はあっさり取れた。
京都の友人と別れて早速出発することにした。
* * *
ここで時系列をもう一度整理しておこう。
たしか、東京を出たのはちょうどクリスマスイブの12月24日の深夜だったはずだ。25日の早朝に滋賀県大垣。始発を待って午前中に京都。
25日の午後に沖縄行きを思いたち夕方作戦会議。
で、出発ね。
またしても、夜間行軍。
終電で行けるところまでいくと、姫路だったことを思い出した。
姫路の夜というのが、恐ろしいほど、記憶が飛んでいる。
たぶん、極度の疲労で、本当に記憶喪失なんだと思う。
かすかに覚えているのが、駅のロビーで始発まで仮眠しようともくろんでいたのに、都会の駅は終電が行ってしばらくすると締め出されるってこと。
駅の外側の階段や高架下には、それぞれいい場所にホームレスが陣取っていた。
なるほど、冬でもこういう装備と寝方をすれば、生き延びれるのかと、妙に感心していた。
そのあと、適当な場所で夜を明かそうと思ったけど、年末の夜のことである。限界まで体が冷えて、あとはあまり覚えていない。
なんとか一夜を明かしたのか、安宿でも探したんだったか・・・
同行した友人に会う機会があれば、そのうち聞いてみたい。彼は覚えているかも。
考えてみたら、この日の夜、から翌日の昼までの間に食べたものだって、何も覚えていない。
記憶が戻るのは、とにかく翌日、つまり12月26日の午前中は、山陽の普通列車をひたすらのりついで、西に向かっていたことである。
電車の座席はほとんどがら空きで、僕と友人は、移動の時間をほとんど寝て過ごした。
綿密に練った乗り換え計画なので、一つでも居眠りで予定駅を乗り過ごすと、フェリーに間に合わなくなる。
ふつう、二人で乗っていて、二人とも一緒に寝過ごすなんてありえるか?ってことだけど、もう体力が限界だったことだけがうろ覚え。
時々目を覚ましては、慌てて現在位置を確認しては、またウトウトするということの繰り返し。
乗り換え駅のアナウンスで目が覚めると、焦って飛びることが何度もあった。
そうして、16時くらいだったんじゃないかな。僕らは博多駅までたどり着いた。
18時のフェリーに間に合う時間だ。
徹夜で鈍行を乗りついただけなんだけど、かなり壮大なミッションをクリアしたような達成感だった。
京都と福岡の間のことについては、一夜を明かしたはずの姫路も含めて、まったく記憶がない。体力的に限界だと思っていたけど、福岡についてからは、急にはっきり覚えている。
若さだな。
テンションがあがると、体力を瞬間チャージできる。
せっかく、博多に来たんだよ。観光する時間はないけど、ラーメンくらい食べたいよね?というのは、残された時間的にも妥当な希望である。
博多ラーメンといっても、予備情報はなにもない。
僕らがのぼりを見てふらっと立ち寄ったのが、「一蘭」だった。
ほう、これが博多ラーメン!
替え玉というシステムが、新鮮だった。
初体験である。
厨房には暖簾がかかり、カウンターでは、隣の席との間に仕切りがある。
味がどうとか、ねぎがどうとか、なかなか面倒なお店に入ってしまった・・・と当時は思っていたが、そんなことがあったから、あとから、あの時に入った店は「一蘭」だったということが、後からわかったんだけど。
味は最高で、北海道では見たことのない麺、食べたことないスープ。
替え玉をお願いするとすぐに出てくるなんて驚愕である。
ずいぶん大人になってから、仕事で福岡にいく機会があったけど、その時に地元の人に案内してもらったのは、長浜ラーメンだったな。
どちらもおいしいかったと思うけど、一蘭は、いま、札幌にもあるんだよね。
うれしいような、残念なような・・まあ、札幌といってもススキノなので、飲みに出る習慣がない僕は、行く機会もないのだけど。
福岡出身の有名人ってたくさんいるよね!
僕らはそんな話をしていた。
TBS系ドラマ、『ラブとエロス』はこの年の夏。
* * *
5時半頃だっただろうか。
那覇行きのフェリー、琉球海運から電話があった。
まだチェックインしていないけど、大丈夫か?という確認の電話だ。
フェリーターミナルのすぐ近くにいるから、間もなく到着するという旨を伝えた。なかなか、(おせっかい・・もとい)親切である。
琉球海運「わかなつ」
チェックインして乗船すると、乗船客はなんと10名ほど。
どおりで直前でも簡単に予約が取れたわけだ。
ここから丸1日、このメンバーで過ごすわけだけど、乗船客のほとんどをよく覚えている。その後、いろいろお付き合いのある人もいる。
今考えても不思議な船だ。
変な人ばかり乗っていた。
北海道から電車を乗り継いできて、思い付きで沖縄だって?
そうだ。冷静に考えて、僕らが一番変な人だった。
本当は、この船で出会った人の話を書きたくて、ここまで引っ張ったの。笑
4日間にわたる、前置き。
明日の記事は、いよいよ本編ということになるのかな。
じゃ、また。
続きはこちら。