曲メモ:羊文学「ドラマ」「光るとき」
羊文学の曲を初めて聞いたのは2018年の秋だった。たまたまApple musicをいじりながら聞いた曲が「ドラマ」。初のフルアルバム、「若者たちへ」に収録された作品だ。
歌詞自体は意外に短く、そして難解だ。しかし時折青春から脱皮するような、危うくほろ苦いフレーズも出没する。そもそも、「青春時代が終われば生きている意味がない」という時点で危うい。けれども、その危うさは誰の青春にもあったものではなかろうか?この危うさと大人へと変わる瞬間をストレートに歌詞にする力に、正直ビックリさせられたのは確かだ。
2020年に彼らはメジャーデビューを果たした。翌年の「マヨイガ」、そして今年の「光るとき」はそれぞれアニメーションの主題歌に起用されている。後者はTVアニメ「平家物語」の主題歌だ。配信で最終回を観たが、圧巻の展開だった。
その「光るとき」は、長引くコロナ禍、ウクライナ情勢など、世の中の不安がより一層澱んでいる今だからこそ響くものがある。「平家物語」はそれ自体が激動の時代を生き抜いたか生き抜けなかったかの者たちの生き様の物語だった。そして、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」は今も同じなのだった。
「それ」とは何か。生きること、であるのは明白だ。混沌の時代を生き抜くことを諦めないでと言うメッセージを、安易な言葉に頼らずに描き切った。やはり、大したものである。
彼らはこれからも現代を生き抜く力について沢山語ってくれるだろう。それは時として痛みも伴いながら。しかし、その痛みはある意味で美しい。
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