「タイタニック 25周年3Dリマスター」の記
「タイタニック」は割に新しい名作である、と考えるのが、1995年生まれの私にはしっくり来る。公開当時、私は2歳。まさかこの3時間超の映画を映画館で2歳の子供に見せるという酷なことを親がするはずもなく、仮に見せたとしても(!?)覚えているはずなどない。という訳で、物心ついた時には既に名作の誉れ高い映画になっていた。
私がこの映画に初めてお目にかかったのは2003年、金曜ロードショーで2夜連続の放送が行われた時だった。いや、2001年のゴールデン洋画劇場版もどこか記憶に残っているような…‥。それはともかく、金曜ロードショーにしては珍しい“2夜連続”(これがこの番組で非常に珍しいケースであることは、2021年の放送時には“2週連続”だったことからも言える)の放送に、どことなく胸をワクワクさせていた……が、それだけのことである。大体、この時点で8歳の私に、「タイタニック」の何が理解できたのだろう。当然、この映画の全容を知るには至らない。
その後、親がジャスコでベストプライス版のDVDを買ったり、ということはあったが、やはり全部見通すのは難しかった。
以後、映画館で見ることが出来たはずの機会は、今回を除き2度あった。まず、2012年の「3D」だが、この頃はまだ映画館に通い詰める前のことで、しかも高校生だったためになんやかんやで見る余裕がなかった。もう一つが、2018年の「午前十時の映画祭」での上映。こちらは、上映していた期間がちょうど仕事が多忙な時期であったことと、新潟県内では新潟市内の一箇所での上映という状況も相まって、断念せざるを得なかったという苦い思い出である。
そして今回、2月10日から2週間限定で上映された「ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター」。おやおや、また3Dでやるのかい、などと思いつつも上映館に目をやると、地元長岡の、Tジョイ長岡の文字が目に付いた。やったー!!さすがに今度は観に行くぞー!!との思いで、公開を待った……のだが、ここからが驚きだった。
Tジョイのネット予約は、空席状況が4通りで示される。席に充分余裕がある場合が◎、そこそこ余裕がある場合(ただし埋まり出している)が○、席に余裕がなくなってきている場合が△、満席が×。昨今でいう「鬼滅の刃」とか「すずめの戸締まり」、「スラムダンク」などといった大ヒット作を除くと、○になるのは珍しい。
私は、長岡造形大学の卒業展に出掛けるついでに映画館に寄るか寄らないか……と言った感覚で今回の上映を迎えようとしていた。タイタニック、しかも3Dとは言え、旧作だからそんなに席が埋まることはないだろうと思っていた。ところがどっこい。
11日上映分の鑑賞予約が始まった9日の午後11時時点で、既に◎から○に変化していたのである。なんだって!?と、少々困惑した果てに、何を吹っ切れたのだか席の予約を取ってしまった。いや、観たいからこそ予約したのであって、決して「取ってしまった」などとは言えないのだが。
この時点では、恐らく、1997・8年当時に鑑賞していたか、惜しくも見逃していた世代が多く観に来るのではないか、と思っていた。これもやはり予想を覆された。いざ映画館に入って見ると、なんと若い観客が圧倒的に多かった。旧作の、しかも比較的大規模な再上映にしては想像もつかないことが次から次に起きているのをいよいよ実感し始めたのである。
この、本編とは別のところにおけるあまりの衝撃から、以後もTジョイ長岡での空席状況を日々見ていた。上映2週間の間で◎のままになっている日が、結果ほとんど無かったと言っても良い状況だった。最終日に至っては、Tジョイ長岡では一番大きいスクリーン「TーLEX」での上映で△クラスの席の埋まり具合になるという、まさにビックリすることが起きていたのだった。
なんで、「タイタニック」の、今回の「ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター」は大ヒットしたのだろう、とずっと考えてみた。けれど、「午前十時の映画祭」で昔の名作に親しむことが多い私には、なんでだろうかよく分からない。
あり得るとすれば、SNSの口コミの力が凄まじかったことだろうか。思えば、最初に3D化された2012年よりもSNSは普及し、そのことでヒットした傑作も既に数知れずある時代である。
または、コスパなのか。「タイタニック」のように、既に名作の評価を受けているならば、多少料金が高くついても損することはない。しかも3Dで見られるとあらば、一層のこと。
など考えても、それらはあくまで一部分に過ぎないのだろうか。
奇しくも今日、「午前十時の映画祭13」のラインナップが発表された。「アラビアのロレンス」や「マイ・フェア・レディ」など、アカデミー賞作品賞やノミネート作の先輩達も数多く入っている。今回の「タイタニック」を機に、旧作の上映にももっと関心が向けられると良いのだが。
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