見出し画像

短期滞在研修プログラム2022「生きることとアートの呼吸」滞在後半レポート

10月23日、滞在3日目は木曽郡を訪れました。

まずは王滝村のゲストハウス常八を経営をされている倉橋さん、杉野さんから、ゲストハウス常八ができるまでのことや、村とのかかわり方についてお話を伺いました。

ゲストハウス常八

ゲストハウスの壁には王滝村在住のアーティスト・近藤太郎さんの村の歴史を記録した絵が一面に描かれており、過去を起点として将来を考えることができるような空間になっていました。

その後は木曽町の義仲館前の広場に移動し、木曽ペインティングス参加アーティストによるオープニングパフォーマンスを見学しました。にぎやかな雰囲気で、作品からは想像することができなかった生身のアーティストに遭遇し、作品と作者を思わず比較して考えてしまいました。

オープニングパフォーマンスの様子

木曽ペインティングスの見学では、地域の生活の中にアートが存在していることの不思議さや心地よさを感じました。

木曽の締めは私道かぴさんの滞在制作作品の鑑賞でした。木曽の伝統文化が主題になっており、その中でもとりわけ木曽踊りを踊るシーンでは、踊りに少しずつ人が加わり、輪ができていくさまに、私も参加したい!と思うほどの高揚感を覚えました。初めて木曽踊りというコンテンツに触れ、だれもが習得できそうなコミュニケーションツールがあることに感激しました。

鑑賞中の様子

暮らしとアートについて考えた3日目でした。

滞在4日目は上田の「犀の角」から始まりました。犀の角には劇場・カフェバー・レンタルスペースの他にゲストハウスもあり、研修メンバーも実際に宿泊することができました。

劇場やゲストハウスとしての役割だけでなく、みんなでごはんをつくって食べる「のきしたおふるまい」や“雨風をしのぐ宿”「やどかりハウス」といった取り組みも行っていて、そちらの活動から、いままで劇場に来なかった層を取り込むこともできているといいます。

犀の角にて荒井洋文さんにお話を伺いました

移動し、今度は「ブルーベリーガーデン黒岩」へ。黒岩力也さんと司白身さんから、主宰するわかち座の説明や、自作の劇場のお話、ブルーベリーのお話、ブルーベリーの直売所という農家としての生活の場で表現をすることに葛藤があったことなどを聞かせていただきました。

「犀の角」「ブルーベリーガーデン黒岩」と形式の異なる二つの劇場をみて、お話を聞いて、劇場は、舞台表現の制作、発表の場というだけでなく、つながりを創造する場でもあるのだと思いました。時に思いも寄らぬ形の出会いもあり、演劇好きの人以外の人への広がりも感じました。

ステージ
外から見た様子

変化し続けているという自作の劇場もとても魅力的でした。(季節にあわせたり、演出にあわせたり、出演者や演出家にとっては劇場が変化するというのは大変なことかもしれませんが、半野外劇場ならではの面白さだと思います。)

4日目の最終地は小海町高原美術館でした。
安藤忠雄氏設計の美術館で、霧の中、県木の白樺と共に建つ様は圧巻です。

ぶれぶれですが、霧と白樺と美術館

館長の名取さん、学芸員の中嶋さんの話を聞かせていただき、地域の人々と美術館とのかかわり方について考えました。展示を開催したら必ず来てくれる人もいれば、一度も来ない人もいるといいます。館内での活動にとどまらず、アーティストインレジデンスを行うことで住民とアーティストとの交流が生まれることもあり、町とアートの交流点になっていると感じました。

展覧会「浮田要三と『きりん』の世界」も鑑賞することができました。

キャプションのついていない展示空間では、作品の情報だけではなく作品そのものをじっくり見て向き合う時間を持つことができました。より一層「みる」ことを意識していました。

密度の濃い二日間、インプット続きの日々でした。多くのものごとや多様な活動をしている人々と出会い、後半二日間は特に「生活と芸術」について考えていました。生きることのすぐそばにアートが存在してくれると良いな、と思います。
今後活動していく際に、今回の体験のことを何度も思い出すことでしょう。滞在中出会った全ての人、もの、ことに感謝します。

(文 信州大学人文学部生・大司百花)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?