【木曽】私道かぴさん 木曽めぐるナンチャラホーイ 〜木曽ペインティングスで上演。短編演劇「木曽、わたしたちのまつり」本番編2〜
NAGANO ORGANIC AIR木曽では、劇作家・演出家の私道かぴさんが3回のリサーチと滞在を経て、短編演劇「木曽、わたしたちのまつり」の制作を行いました。
上演は、10月22日に王滝村・八幡堂で行われた「秋の後夜祭」と、23日に木曽町(旧日義村)・義仲館で行われた木曽ペインティングスのオープニングの2回ありました。
今回は10月23日の公演の様子をお伝えします。
芝生の上の舞台、木曽の祭りの物語
義仲館の外にある縁側には数十人の観客が集まっていました。芝生の真ん中に立つ俳優の沢栁さんを囲むように座る観客たち。昼と夜、舞台の外と内が混じり合った不思議な空間でした。
薄浅葱色の軽やかな衣装を身につけ、歌舞伎のようなメイクをした沢栁さんが、「どうも、みなさんこんにちは。今日は、ここ、木曽のお祭りをテーマにしたお芝居をします」と挨拶。昼間も着ていた黒いジャンパーを羽織ったままで劇の説明を始める沢栁さん。「やっぱりここは日常の延長なんだ」と思えるような始まり方に、観客の皆さんの心がふっとゆるんだように感じました。
挨拶が終わり、「それでは、始めます」と、後ろを向いてジャンパーを脱ぐ沢栁さん。白く透ける布を被って振り向くと、そこには舞台があり、それを演じる何者かがいました。
木祖村の藪原神社の獅子舞
3つの祭りは、それぞれ1章ずつにまとめられ、各章で異なるお芝居を見ることができました。
1つ目の藪原神社の獅子舞では、語り部が3人変わっていきました。登場人物は5、6歳ぐらいの子ども、壮年、老年の3人。親子の物語がつながっていくさまと、初めて舞う舞い手の緊張感が、時を経ることでベテランの風格へと変化するさまとが、折り重なって伝わってきました。
王滝村の御嶽神社例大祭の舞
2つ目の御嶽神社例大祭の舞は、ひとり語りが続きました。演じているのはひとりなのですが、本来ならば3人で舞うものであるからか、いつしか複数の人物の舞を観ているような気持ちになっていました。この舞は、剣を持って何度もジャンプをするような激しい動きが続くとのことで、踊り手の疲労感が高揚感へと変わっていく感覚を味わうように観ることができました。
木曽踊り、歌って、踊って、拍手して
最後の木曽踊りは落語でした。木曽地域の皆さんにとっては、何年も踊っていなくても身体が覚えているような馴染みの深い踊り。落語形式の劇では沢栁さんの語りによって、木曽踊りへのこだわりや情熱が人それぞれ違うこと、また、地域の人それぞれの考え方に加えて、他の地域の人が木曽踊りをどう捉えるか、といった話も語られ、何年も何年も踊り継がれてきた木曽踊りの世界に引き込まれていきました。
最後には5名の方が沢栁さんと一緒に木曽踊りを歌って、踊って。その他のみなさんも歌声や拍手で応えて踊りを盛り上げました。
「集まるという行為は演劇と通じている…」
木曽谷の風景は舞台の書割にあたる部分。夕日に照らされていた谷は夜の帳が下りるように薄暗くなって、「木曽、わたしたちのまつり」は終わりを迎えました。
上演後の沢栁さんと立ち話をした際、「最後は集まったみんなが同じ踊りを楽しむ、普段はあまりやらないタイプの演劇です(笑)。集まるという行為は演劇と通じるところがあると思うし、テーマを祭りにしたのは、かぴさんもそういうところ(演劇と通じるところ)を感じているからだと思う」と話してくださいました。
このあと、私道さんのNOA木曽を振り返る会が行われました。「木曽、わたしたちのまつり」の制作過程と、この先に向けて考えていることを、私道さん、沢栁さん、ホストの方々からお聞きしました。
(振り返り編1へ続く)
(写真:やまぐちなおと 文:水橋絵美)