朱き空のORDINARY WAR(21/32)
第21話「名も無き夜に」
訪れた宵闇は、サーチライトの中に巨艦を浮かび上がらせる。
今、特務艦ヴァルハラは首輪で繋がれた猟犬にも等しい。そして、周囲には野蛮な狩猟時代に忌避の感情を叫ぶ市民たちがいる。彼らのために害獣を狩り、平和な食卓に肉を並べるのが猟犬の仕事……その真実を知る者など、いない。
闇夜で尚も声を張り上げる市民団体たちに、ユアンは甲板上から溜息を零した。
「我々メルドリン市民はー、断固抗議するー!」
「平和になった世界に、軍隊はいらない! 即刻出てゆけー