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223:「それでも」という接続詞

・「それでも」という言葉は、この世で最も勇敢だが同時に厳酷な接続詞である。

・人生というものは残念ながら地続きなもので、なにか悲しいことがあってもそれが起きたという事実は一生なくならないし、一念発起して新しい何かを始めたとしてもそれまでの怠惰な自分が完全にいなくなるわけではない。

・それでも、世界は進んでいる。

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・今までの記事にもちょこちょこ出てきている九州男児で新聞記者な地元の友人とはよく電話をする仲だが、彼は自身の近況を顧みて「それでも前を向くしかないんだよなぁ」とよく言っている。

・僕らは福岡の片田舎で育ったマイルドヤンキーなのでいわゆる「田舎から上京してきた俺」みたいな感覚が強くて、これまでの人生を思い出しながらいろいろなことがあったよな、という振り返りをよくする。
・週一くらいで電話をしているとどうしても同じ内容の話題ばかりになるので(同じトークテーマで飽きずに話のできる友人がいることは素晴らしいことだ)、会話の中ではその時動かされた心の機微のようなものによく焦点が当たる。

・その中で彼とは生活・仕事・恋愛の話をするので、互いの失敗譚を話すことも多いのだ。
・それでも、時間は進んでいるし、時代は進んでいるので、いろいろな感情を背負いながらも前を向いて進むことしか自分たちには許されていない。

・また共通の友人も多いので、「あいつはなにをしているのか」「転職するらしい」「結婚するらしい」みたいな話題も多く、「他人の人生も進んでいる」ことをよく実感する。
・普段は自分の人生に精一杯なので意識することは中々難しいが、世界の全員は自分の人生に精一杯なので、他人は自分と同じように前に進んでいるのだ。

・そういうことを考えていると、「それでも前を向くしかないんだよなぁ」という感情には、彼と同じように僕もなっている。

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・人生というのは自分の足で歩いていくものだと錯覚しがちだが、実際は空港とかにあるような動く歩道に乗っていて、自分の感覚では止まっていても実は前に進んでいるし、振り返ることはできても戻ることはできないのだ。
・しかもその動く歩道には僕だけではなく、世界の全員が乗っている。

・だから、「それでも」前に進むしかないのだ。

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