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デザインと行動心理学 2

情報設計やコミュニケーションに役立ちそうな、人の無意識な行動心理のまとめ、その2です。

可読性尺度

Readability

可読性尺度とは、文章の読みやすさを数値化すること。英語だとワードの構成オプションに機能があったり、日本語でもサイト上で測定できるツールも公開されていたりします。単語数が少なく、難しい言葉や専門的な用語を用いない方が読みやすい文章となります。文章だけでなく、可読性に関わるデザインの要素は、フォント選びから、大小、太さ、まとまり、余白、など読む人に思いやりを込めてレイアウトすることも大事ですね。一方で、興味を持たれているという前提ではありますが、すんなりと入ってきた情報はすんなりと抜けやすく、場合によっては少し読みづらい方が、記憶には残りやすいといった実験もあるようです。

返報性の原理

Norm of reciprocity

返報性の原理とは、相手から受けた好意や敵意などのアクションに対して、「お返しをしたい」と感じる人間にとってごく自然な心理のことです。代表的なものはスーパーの試食などです。それ以外にも様々なシーンにこの作用が働きます。「好意⇆好意」「敵意⇆敵意」「譲歩⇆譲歩」「自己開示⇆自己開示」など、ビジネスやコミュニケーションにうまく活用できると良いですね。Slackやメールなどでも、レスが遅い人にはこちらも遅くなりがちで、レスが早い人には無意識的に早く返してしまっているような気がします。

ピグマリオン効果

Pygmalion effect

ピグマリオン効果とは、教育心理学における心理的行動の1つで、他者から期待されると成績が向上する現象のことです。 ちなみにピグマリオンとは、ギリシャ神話の登場人物の名前です。彫刻家のピグマリオンは理想の女性の彫刻するうちにその彫刻に惚れ込んでしまい、本当の女性のように接します。 そして、妻にしたいと期待しているうちに、女神アフロディーテが彫刻に命を与えて、その願いが叶ったという物語です。「信じ続けること」と「それを伝えること」が大切ということですね。

ゴーレム効果

Golem effect

ゴーレム効果とは、ピグマリオン効果の逆で、人が他者から期待されていないと感じることによってパフォーマンスが低下する現象のことです。ちなみにゴーレムとは、ユダヤ教の伝承に登場する動く泥人形が由来です。

リフレーミング

Cognitive reframing

リフレーミングとは、対象の枠組みを変えて別の感じ方を持たせることです。 不満や不足といったマイナスな場面でも、満足や喜びといったプラスの事象に変えられることです。自分の経験でいうと、仕事で何かトラブルなどが発生してしまった時は、その対応が迅速で適切なものであれば、逆に信頼を得るチャンスと捉えて行動するように心がけています。

ツァイガルニック効果

Zeigarnik effect

ツァイガルニク効果とは、人は完成・完結した物事より、不完全、未完成の物事の方が興味を引く、記憶に残る心理現象のことです。人は目標に向けて行動するとき緊張感が生まれ持続するが、目標が達成されることでその緊張感が解消されてしまうからだそうです。個人的には、いくつか並走して案件や作業をしているときの方が生産性が上がるのは、この効果によるもののような気がします。

ヴェブレン効果

Veblen effect

ヴェブレン効果とは、見せびらかしたい心理を利用した自己顕示欲を満たすための消費行動のことです。ハイブランド商品や、高額で売買されるNFTなどもこの効果によるものです。誰もが欲しがるような人気があり、高価格で希少性の高い、容易には手に入らない特別なものが当てはまります。

ディドロ効果

Diderot effect

ディドロ効果とは、新しいものを取り入れたときに、統一させたいと感じる行動心理です。人は一貫性・統一感を求め、良いものを知ってしまうと質を下げて一貫性を損なうことを嫌う傾向があるそうです。同じブランドや、品質で揃えたくなったりすることはよくありますね。ゲームでいうと、アイテムなどのアンロック表示などは、このディドロ効果(揃えたくなる効果)と、ツァイガルニック効果(未完成のものに興味が湧いてしまう)を上手く利用したものかなと思います。

エピソード記憶

Episodic memory

エピソード記憶とは、経験した出来事の内容に加えて、さまざまな付随情報(時間や場所、身体的・心理的状態など)と共に記憶されることです 。脳には、今を体験する短期記憶と、知識として想起することができる長期記憶が存在し、エピソード記憶は、長期記憶されます。ストーリーテリングはこの効果を利用したものです。人に何かを印象付けたい時はストーリーに乗せて話したりプレゼンテーションしたりすると記憶に残りやすいということですね。単に事実を伝えるよりもストーリーで伝えた方が22倍記憶に残りやすくなるという研究結果もあるそうです。僕がメルカリ在籍時は、山田 進太郎さんがメルカリのことを対外的に説明するときに、いつもご自身の体験からサービスが生まれた話をされていたのが強く印象に残っています。

心理学はあくまでも一般論なので、全てに当てはまるものではないですが、意識しておくと、デザインやコミュニケーションなどにも役に立つこともあると思います。

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