なぜ、食習慣を改善することは難しいのか
wellness社会起業家の長井佳代です。
先日、某薬局様にて管理栄養士向けの研修会にて登壇させていただきました。
栄養指導に従事するみなさまへ、栄養指導法をレクチャーする研修です。
栄養指導に関する私の10年の経験と体系化された手法、考え方がまとまったこちらもぜひご覧ください。
あなたは、食習慣を改善してみようと思いますか?
今回受講されるみなさんは、店舗でお客様へ栄養相談を実施されていたり、特定保健指導に従事されている方々です。
栄養指導を何度か経験していく中でぶつかるいくつかの悩み。
・30分の時間の中でどのように話を広げていけばいいかわからない
→表面的な”食事のこと”だけでは話が尽きてしまって会話に困ってしまう
・やる気のない人への対応方法がわからない
→特定保健指導のようにいわば強制的に栄養指導を受けさせられている人の中には、”いやいや”受けている人もいて話を聞いてくれない
今回もみなさんそのような悩み・課題をお持ちのようでした。
研修の冒頭で、みなさんに共有しておきたい数字をお見せしました。
男性の40%、女性の35%
なんの数字か?
これは、「食習慣を改善するつもりがない」と答えている人の割合です。
35~40% の人は、今の食習慣を改善するつもりがないと答えています。
さらに、わたしが注目したのはグラフの一番右端、紺色の部分です。
男性、女性ともに2割の方に該当するこちらの項目。
「食習慣に問題はないため、改善する必要がない」と答えています。
つまりここに該当する人も食習慣を改善する気持ちがありません。
食習慣に問題がないって本当?
わたし自身の食生活を振り返ってみても「食習慣に問題はない」とは言い切れません。
きっとここに回答をした人の中には、もしかしたら最近、医師に言われて改善をした後だったのかもしれません。
テレビなどで情報を収集してご自身なりに改善をしたのかもしれません。
また意識の高い人はパーソナルジムなどで栄養指導を受けてダイエットを実施して継続中なのかもしれません。
そうであったとしても、「改善する必要がない」と捉えて、今改善しようとは思わない。ということです。
つまり、合わせて男性60%、女性55%の人は、「食習慣を改善しない」という選択をしているということです。
特定保健指導で「やる気がない」(と感じる)人の指導にあたることは、そう少なくない確率であるということも理解したうえで、わたしが持っている信念は
だれも、不健康になりたいと思っている人はいない
ということです。
食習慣の改善はしない、と思っている。でも健康ではいたい、健康状態は維持していきたい。と思っているんだということ。
そういう人たちにわたしたちは関わっているということです。
人は自分で決めたい生きもの
健康ではいたいけど、食事は変えない。
そこには、食事を変えたくない。という気持ちがあるのではないかな、と考えています。
特に、健康になるためにということを起点にすると、今食べているものをがまんしなければならないという予測がたつのだと思います。
好きなお酒、好きなお菓子、脂っこいもの、ジャンキーなもの。
どこかで「これをやめなけれいけないんだろうな」と思っているからこそ「そんなことを他人にとやかく言われたくない!」といういわば抵抗のような気持ちが回答に表れているのではないか?と感じるのです。
では、改善するつもりがない人たちには、改善しないでいいよと見過ごすのか。ということです。
行動変容ステージモデルを言い訳にしないで。と拙著『栄養指導に自信が持てるようになる本』でも語っているのですが、
人が行動しようとするにはステージを示したもので、管理栄養士の国家試験を受けた方ならみなさんご存じのモデルです。
この中で準備期は「今すぐ行動したい」というステージなので、「指導しやすい」と捉えられることも多いかと思います。
「何をしたらいいですか!」と前のめりで聞いてくれるような人たちです。
反対に無関心期は無関心だから、情報提供をしようとか、環境改善で出来ることはないか?と無関心だからと本人が行動しないだろうと決めつけているきらいがあります。(あくまで主観です)
ただし、このモデルはもともと喫煙者に対する禁煙するまでの行動変容をモデルにしたものです。
タバコを吸っている人が、タバコを止めるまでのプロセス。
つまり、ゴールは一つです。
たばこを止めたらそれで成功。なんです。
ですが、わたしたちが指導しているのは食習慣です。
食事の問題点は一つでしょうか?
おそらく、多くの場合、複数が重なっているのではないでしょうか?
つまり、なにかひとつの食習慣を改善したとして、維持期まで向かうとやがて「改善するつもりがない」という無関心期になります。
さらには、図に示したようにきれいな一重の円ではなく、複雑にいくつもが同時に絡みあったりしていることも多いです。
改善するつもりがない人たちにできる私たちのかかわり方
統計でみても約半数が改善しないと考えている。
そして食事はいくつもの要因が重なり合って行動変容ステージがぐるぐる回っていると考えると、「無関心期の人は後回し」とするよりも、
きっと今よりも健康でいたい、さらに健康を維持したいと考えているはずだ。と確信を持ったうえで、「今この人が関心があることはなにかな?」
と目の前のクライアントに興味を持つことから始めましょう。
「改善するつもりがない」と答えている奥には、もしかしたら「これはきっとだめなんだろうな」とご自身が一番感じていることがあるのかもしれません。
大きく何かを変えなきゃいけないのではなく、その人のスモールステップとなることを一緒に見つけて「これならできそう!」と思ってもらい、その小さな意識を重ねた先に体調が良くなったり、体が軽くなったり体感してもらえたら、「次は何をしたらもっと良くなるかな?」と意識の変化が起きてくることを期待しています。
大きな行動変容の前には小さな意識変化
そんなことをお伝えした研修会でございました。
研修後のアンケートはまた詳細を別記事で公開させていただきます。
次回のリクエストもたくさんいただきましたので、また次の機会があることを願って!
引き続き、栄養指導に従事されるみなさんが、不安や苦手感を少しでも払しょくし、一人一人と向き合っていける指導者になれるよう、わたしも日々実践で精進してまいります。
正解がない、正解はいくつもある。という現代の中で、これをしなさいという指導は無意味です。
なぜなら、わたしたちはすべてのクライアントに対して、毎日毎食管理された食事を提供するということは不可能です。
であるならば、ご本人が食習慣が体をつくっているということをしっかりと自覚し、自分で決めて自分で行動していけるようにサポートするのが渡地たちの仕事です。
ほんの少し意識を変えていくことが、10年後の自分の体をより健康に導いてくれるということを、わたしたち自身も自分の食習慣で実験し、指導の現場でも実践していきましょう。
※本日、こちらに添付しました4枚のスライドのパワーポイント資料をダウンロードできるようにいたしました。
パワーポイント資料ですので、そのままお使いいただくもよし、少し修正していただいてお使いいただくもよし。
セミナー等でご活用いただければ幸いです。
(グラフ上の「えいよう未来」の透かし文字は消してあります)
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