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文理融合教育で総合知を養い、環境分野で世界を救う人材に

長崎大学環境科学部は創立から25年間、文理融合の環境教育を行ってきました。「予測困難な現代、世界規模の環境問題を解決できる人材になるためには幅広い視野が必要。分野にとらわれない文理融合の知識が求められています」と環境科学部長の岡田二郎先生は語ります。詳しく話を聞きました。

岡田二郎先生。動物行動生理学研究室の研究室にて

文理融合の学びが世界を救う!

Q.文理融合の知識はどうして必要なのですか?
近年、パンデミックやウクライナ情勢など世界規模の出来事が頻発しています。波紋は多方面に広がり、エネルギー問題、気候変動への弊害、物価高騰などの問題を深刻にしました。それらが発端になりさらに次の連鎖を引き起こします。世界の変化は高速かつ広範囲に伝播して原因が絡み合った複雑な問題を生むのです。

昨今、各業界の専門家の間では「複雑な問題を解決するのは”複数の専門分野を掛け合わせたイノベーション”」だと言われています。一つの専門分野だけでは太刀打ちできないんですね。求められているのは総合知(自然科学、人文・社会科学、経済や行政などあらゆる分野に精通した幅広い知見)を持つ人材です。長崎大学環境科学部が行う文理融合の教育は、まさにこの総合知を養う教育なのです。

複数の原因が絡まって起った複雑な問題には複数の専門分野を掛け合わせたイノベーションが必要

Q.具体的にどんな文理融合の学びがあるのですか?
環境科学部の教員には自然科学(理系)と人文・社会学(文系)における環境分野のエキスパートがそろっています。気候変動、リサイクル、森林資源、農村の過疎化問題や全国でニュースになっている害獣問題についてなど、社会のニーズを押さえつつ、学生の興味関心にも十分に応えられる先生方です。さらに、その先生方が共同研究も行なっています。複数の専門分野からの視線で一つのテーマに対峙する、総合知による研究が実践されていますよ。

環境科学部で行われている教育研究活動の詳細はこちらから

Q.学生は理系も文系も学ぶことができるのですか?

もちろんです。1年次では全員が共通科目を学びます。2年次からはそれぞれの希望に沿って環境政策コース(文系)、環境保全設計コース(理系)に分かれ、専門を深めます。もちろん、他コースの科目の選択履修は可能ですから、引き続き多角的視点を磨くことが可能です。3年次からは研究に向けた学びや準備をスタートさせて、4年次で卒業研究に専念します。所属する研究室の専門性に関わる研究が多いですが、文系とも理系とも言える学際的な研究テーマに挑戦することも可能です。

環境科学部4年間の流れ

環境問題は“現場”で起こっている

Q.フィールドワークが多い点も環境科学部の特徴ですね

水処理施設見学の様子

環境問題は現場で起きていますから、現場で学んだり調査したりするフィールドワークは環境科学にとって非常に大事です。1・2年生で受講する「環境フィールド演習Ⅰ・Ⅱ」は、環境科学部の教員がオムニバス形式で担当しており、毎回テーマが変わります。自然エネルギー施設やリサイクル会社の見学、街づくりグループとの意見交換や野生生物調査といったバラエティ豊かな内容です。身近な地域に潜む環境の課題を肌で感じて、観察力や行動力を養うことができます。また、環境フィールド演習以外にも「環境フィールドスクール(選択科目)」など、地域課題における創成リーダー育成を目的にしたプログラムを実施しています。

Q.長崎県にはどんな研究テーマがありますか?

長崎県は海あり、山ありで、離島が多く、全国的に見てもユニークなところです。環境資源に恵まれているので自然科学の研究ターゲットは豊富です。また、人文・社会学的に見ても、水産業などの産業が発達していること、古くから貿易港が設けられている地政学的に重要な地域であることなど研究テーマに事欠きません。それに加えて、現代ならではの課題にも専門家の視線が向けられています。

例えば、長崎県は県別人口減少率で上位にランクインしており、高齢化が全国基準よりも早く進んでいます。その原因の一つとして、離島が多いこと、とりわけ長崎市においては斜面地が多く、移転者が多いことが挙げられます。地域の人口流失に歯止めをかけ、持続可能な方向へと導くことも環境科学の研究テーマです。

環境フィールド演習Ⅰ・Ⅱでは長崎市の斜面地を見学する授業があります

海外の学生と地球規模の問題を共有

Q.国際交流プログラムは学生からの人気が高いですね

国際交流・留学は環境科学部が力を注いでいるプログラムの一つです。8カ国12大学と国際交流協定を結んでおり、双方向から学生の流れを作っています。具体的には、留学生を受け入れる「環境サマースクール」と、環境科学部生を協定校に派遣する「短期派遣プログラム」の2つです。地球の環境問題を海外の学生と共有して一緒に解決策を探ること、語学習得の機会として、充実のプログラムを準備しています。英語に自信がない方もチャレンジできるようにフォローも万全ですよ。

Q.環境サマースクールではどんな国際交流があるのですか?

2022年度のサマースクールにて。グループワーク後の記念撮影

イギリス、スウェーデン、アメリカ、タイ、インドネシアなど世界各国の協定校から留学生を受け入れます。学生は英語を使って長崎市観光地を案内することから交流をスタートさせ、環境に関するPBL(課題解決型学習)を受けたり、研究室でのインターンシップで補助活動をしたりします。実際に体験した学生からは「環境への考え方の違いがたくさんあり、より広い規模で環境問題を捉えられるようになりました」「議論したい内容がたくさん出てきて、語学習得への意欲が湧きました」などの感想が寄せられています。

Q.短期派遣プログラムではどんな体験ができますか?

タイのマングローブ林の様子

希望する大学(12の国際交流協定締結大学)へ短期留学できます。派遣国や大学によって、抱えている地域問題や研究内容が異なるので経験内容も行く先々で様々です。例えば、タイのマヒドン大学へ留学した学生は、経済発展の裏側で整備が後回し状態になっているごみ処理施設の現状を見学したり、マングローブ林の保全活動などに参加しています。また、スウェーデンのルンド大学に行った学生は、地下水の解析調査を行ったと報告を受けました。環境問題は地球規模で取り組まなければならない問題ばかりですので、世界の状況を見ることは非常に大事です。

環境科学部が国際交流協定を結んでいる12校はこちらから

就職率95%! 社会は環境のプロを求めている

Q.環境科学部からどんな就職先を目指せますか?

環境保全がビジネスになる時代です。大企業のほとんどが環境に関わる部署を設けており、個々人の情熱次第でどんな業界業種へも道は開けています。毎年95%以上の高い就職率を記録しており、卒業生は環境専門の企業だけではなく、多方面で活躍しています。公務員の割合が高いのも特徴です。

令和3年度の就職状況

Q.学部生への就職支援はありますか?

環境科学部棟1階にあるキャリアプラザ

環境科学部棟の1階にキャリアプラザを設置して学生の就職活動を支援しています。就職関連書籍の閲覧や、環境関連企業の情報を得られるほか、第一線で活躍しているOB、OGからの活動支援を受けられる機会もあります。また、専門職員が常駐しており、面接の練習や、エントリーシートの添削などの支援も受けられます。学内には全学部生を対象にした長崎大学キャリアセンターがありますので、併用することで将来の展望がさらに広がりますよ。

文理融合の教育で総合知を養っていること。国際性を身につける場を設けてあること。世界の環境問題に立ち向かう人材を育てる環境科学部の熱意を感じました。岡田先生、ありがとうございました。

長崎大学環境科学部のWebサイトはこちらから






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