伝統ある薬学部で実践的な薬のプロを目指す
コロナ禍におけるワクチン創薬への関心の高まり、抗原検査の実施などから医療とともに薬の専門家にも注目が集まっています。ここでは長崎大学薬学部の魅力を薬学部長の西田孝洋先生と一緒にご紹介します。
幕末まで遡る歴史。その源流は“分析窮理所”
Q. 薬学部の年表は江戸時代からスタートしていることに驚きました
長崎大学薬学部の源流は、1865年に設立された分析窮理所(ぶんせききゅうりしょ)に遡ります。当時の言葉で「分析」は化学、「窮理」は物理を指し、日本で初めて基礎薬学教育が行われた理化学校なのです。鎖国していた江戸時代でも世界に開かれていた長崎には、西洋医学、薬学がもたらされていました。
Q. 150年以上もの歴史を持つ、とても古い薬学部ですね
全国でも古い歴史がある薬学部です。その歴史の中で下村脩博士をはじめとする優れた研究者を輩出してきました。併設するお薬の歴史資料館や下村脩名誉博士顕彰記念館で詳細をご覧いただけます。先輩方のご活躍は現在の薬学部生にも多いに励みになっていますよ。例えば、脈々と受け継がれている研究技術や実績が現在の研究でも基礎となります。また先輩の中には製薬企業でスペシャリストとして活躍中の方がおられます。研究現場を見学する機会も多々あるんですよ。歴史と伝統の賜物です。
離島実習で学ぶ医療の仕組みと臨床薬剤師の役割
Q. 長崎大学の医療系学部は一緒に学ぶ場があることも魅力ですね
医学部、歯学部、薬学部で合同の共修科目があります。特に薬学科の6年次に受講する医歯薬保健共修離島実習はユニークです。離島エリア(新上五島町、五島市)でチーム医療による在宅ケアの取り組みにも参加します。
Q. 離島でチーム医療による在宅ケア……。具体的に何を学べるのでしょうか?
離島は高齢化が深刻な上、医療体制が限られています。そんな環境下で全島民の健康増進を図るためにはチーム医療による在宅ケアが有効的です。具体的には、医師、歯科医師、看護師、薬剤師などの医療関係者がそれぞれの専門性をもとに情報を共有して、患者の治療やケアを行います。薬学科生は医学科、保健学科、歯学部と共にチーム医療の現場を見学することで、臨床薬剤師が果たすべき役割を理解するでしょう。また、在宅ケアの現場では限られた人員で応急処置を任されることも少なくありません。連携の上で、医療者は誰もが臨機応変な対応を求められていることも実感するはずです。
Q. 離島は多くの問題を抱えているんですね
確かに離島は問題が顕著ですが、都市部でも他人事ではありません。離島より緩やかですが高齢化は進んでいますし、医療従事者の人材不足は社会問題になっており、遅かれ早かれ対面する壁でしょう。離島というある意味、社会の縮図とも言える環境で、専門が異なる医療関係者と連携して課題に向き合う経験は、都市部での臨床業務においても必ず役に立ちます。
感染症対策の研究室を強化
Q. 新型コロナウィルス感染症の流行は薬学部にどんな変化をもたらしましたか?
薬剤師は公衆衛生や感染制御の一役を担っています。また創薬においてもワクチン創薬や感染症治療薬の開発は世界中が注目しています。新型コロナウイルス感染症の流行で、改めて薬学部が育てるべき人材の重要性がハッキリとしました。
そこで、長崎大学薬学部は研究協力分野として6分野の研究分野を加えました。ウイルス感染症学、フロンティア口腔科学、神経回路生物学、先端創薬学、分子標的医学、薬品構造解析学です。従来の研究室と合わせて23研究室で、社会のニーズに応じた人材育成をしていきます。
Q. 学生も目的を持って勉学や研究に励むことができますね
実際、コロナ禍で学生たちの意識が高くなっているのは感じます。そのため、我々教員は学生のやる気を鼓舞して相互作用を起こし、全体のレベルを上げるように働きかけています。例えば、3年進級時や卒業時に成績優秀者を表彰しています。来年度からは、3年進級時成績優秀者は、3年前期から研究室に早期配属します。一方、成績良好で研究への意識が高い学生には実験研究スペシャリストに認定するシステム(科学実験マイスター)を設ける予定です。
歴史と伝統を継承しつつ、未来に挑む臨床薬剤師や創薬研究者を育成している長崎大学薬学部の志が伝わってきました。西田先生、ありがとうございます。
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