サイドカーに
今日は太宰治の誕生日。
太宰治の小説は「トカトントン」が好き、芥川龍之介の小説は「あばばばば」が好きだ。ちょっと前に「地獄変」を読んだら怖かった。
梶井基次郎の「愛撫」という小説、猫が出てくるんだけど、全体的に猫のことで、耳を切符切りでぱちんとやりたい、とか、猫の手で白粉を塗る女とか、猫の体の部分を、読みながら目の前で触れているように思い出される描写がたくさん書かれている、猫の身体中を点検するような小説だなーと思う。
小説は、話の筋とか全体よりも、一部分だけを覚えていることが多く、その一部分がとても好きだから覚えている。
この間、実家に帰り、父が運転する車に乗っていたら、父か母が、
サイドカーにおばあさんが乗っている
と言った。
わたしは辺りを見まわしたけど、サイドカーに乗っているおばあさんを見つけることができなかった。
サイドカーと聞いたとき、自然と長嶋有の「サイドカーに犬」が浮かび、わたしの頭の中で、薄茶色で長いたれ耳の犬が、涼しい顔でサイドカーに座っている。