ガラスケースの日本人形
呪物の話を動画で観ていて、思い出したことがある。
わたしが、小学校低学年のときだったと思うんだけど、おばあちゃんのうちに、ガラスケースに入った日本人形があって、わたしは、その人形が、すごく好きだった。
その好きは、普通の、人形に対する好きではなくて、もっと強い好きだったというのが、子どもの自分の心を思うとき、不思議な、少し異様なぐらいな、好き、として、思い出される。
おばあちゃんの家に行くたびに、わたしは、その人形がある部屋に入って、ずっと眺めていた。
ある日、弟が、その人形を盗ろうとした。
盗ると言っても、ガラスケースに入っていたから、ただ触ろうと手を伸ばしただけかもしれない、それに、そもそも、その人形はわたしのものではなかったのだから、盗るも盗らないもなかったんだけど、わたしは、人形を盗ろうとする弟が、そのとき、すごく憎くなって、自分でも、なんでそんなに怒っているのか、わからないくらいに怒って、それで、弟ともみ合いみたいになったのだと思う、ガラスケースが落ちて割れて、弟は、唇を切って、血が出た。
その、割れたガラスケースと、弟の血を見て、たぶん、われに返ったのだと思う。強烈だった、人形を好きな気持ちが、なくなった、それか、おばさんが人形をガラスケースが割れてしまったからどこか違う部屋に置いて、単純に見られなくなったから忘れてしまったのかもしれない。
その、日本人形を好きという気持ちが、子どもだった自分からしても、なんで、わたしはこんなにこの人形が好きなんだろう、と、不思議だったので、もしかしたら、人形のほうが、好きになるように仕向けていたのかな? と、思ったりした。