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ちちちちぼ

 昔、とても古いアパートに住んでいたことがある。
 ガスをつける機械が、玄関入ってすぐのところにあって、四角いタンクのようなのに窓がついていて、下にあるレバーを押しながら捻ると、窓の中で青い火が、ちちちちぼっ、とつく。
 ついたあと、すぐにレバーから手を離すと火が消えてしまうので、押したまま5秒ぐらい、じっとしている。じっとしている間は、青い炎を見る。
 その頃働いていたレストランの厨房にも、同じようなガスの機械があった。パンを焼く係のときは、誰よりも早く厨房に入り、奥にあるガスの機械のレバーを回すと、窓の中でちちちちぼ、と青い火がつく。レバーからすぐに手を離すと火が消えてしまうので、押さえながら、じっと青い火を見る。
 アパートは、急に水が出なくなった。隣に住んでいた大家さんに言ったら、水を汲み上げる機械が壊れたようだった。
 厨房は、オーブンが急につかなくなった。業者に来てもらったら、ネズミが線を齧ったのが原因のようだった。
 アパートで、寝ていたら、ムカデに肩を咬まれた。痛かった。次の日起きて、台所を見たら、もう1匹ムカデがいた。

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