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イカの白いふわー

 イカの産卵シーンを何日か前にテレビで観た。
 イカは産卵するとすぐに死んで、ふわー、と海面に向かう。
 そういう、卵を産んですぐに死んでしまう生き物がいろいろいるのは知っていたし、前にも何度か映像で観たような気もするけど、その日のイカがふわー、と浮かんでいく様子に、なんだかすごく不思議な気持ちがした。
 たった今まで、卵を産み切るまでには生きていた命が、産み終えたらすぐ、白くふわふわと、もう自分から動くことはなく、上へ上へと、流れるままに浮かんでいく。
 そして、さっきまで生きていた、今はふわふわと白く浮かんでいく体の、そこから出てきた生きている卵は、ふわふわ浮かぶ体が持っていた同じ命そのまま、そこに卵はある。
 海の中、岩、白くふわー、卵、海面からの光、そういう全部が、いっこの画面に一斉に映るのを観て、不思議というか、これってどういうことだろうと思った。
 それで、イカの産卵について調べてみたんだけど、調べてしまうと、そこに並んだ言葉では、イカの白いふわー、の感じの不思議さが遠のいていって、読むのをやめた。
 海面に浮かんだ、命がないイカの体はどうなるのかな。溶けるのか、鳥が食べたり。
 


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