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急に歌い出す

 子どもの頃に、親戚や地域の集まりがあると、急に歌い出すおばあさんやおじいさんがいた、という記憶がある。
 たくさん大人がいて、お酒を飲んでいて、会も終盤になると、おばあさんかおじいさんが立ち上がり、歌い出す。
 カラオケの機械はないので、アカペラで、おばあさんやおじいさんが歌い始めると、みんな手拍子をして、ときどき合いの手も入れて、歌っていたのは、あれはなんの歌だったのだろう、演歌のような感じだった気もするけど、違う気もする。
 今、親戚や地域の集まりがあっても、急に歌う人はいない。みんなでご飯を食べて、喋って、解散する。
 子どもの頃の、あれはなんだったのだろう、と疑問に思っていたことは、大人になると解消するときもあるけど、わからないままのこともある。あれはなんだったのだろう、と思い出すことも、年を重ねるごとに減っている。
 昨日、日曜美術館で、日本画家の福田平八郎のことをやっていて、芸術作品は見る人の記憶に触れるかどうかがとっても大切、と解説していた人が言っていて、それと同じような言葉を、他の人からも聞いたことがある気がするんだけど、誰だったか思い出せない。

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